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第2章
第315話 ネロ君の心配
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「追跡魔道具二号君」で取得した「動く写し絵」を壁に映し出したけど、まだ位置情報を取り直していないから
何もない平原が映っている。壁に写すと大きすぎてちょっと寂しい絵だ。
とりあえず「追跡魔道具二号君」を使ってもらって、その間に「追跡魔道具三号君」を作ることにした。
「え、まだ改良するの?」
「だって、自動で写し直すようにした方が良いでしょ?」
「追跡魔道具二号君」は、識別情報から位置を取得して「動く写し絵」を表示するところまでは連動して動くけど、新しい位置を表示し直すには手で操作をし直さないといけない。
それでも、手探りで位置情報を入力していた「追跡魔道具一号君」の操作よりはかなり楽になったと思うんだけど。
できれば、何度も操作をしなくても馬車を追いかけることができた方が良いと思うんだ。
僕が新しい魔石を手にして魔法陣を刻み始めたら、兄上が小さく溜息をついた。
「……ちょっと目を離すと何か作り出しちゃうと思ってたけど、目を離していなくても何か作り出しちゃうんだな。開発スパンが早すぎる」
「何かダメだった?」
「ダメじゃないけど、作っているところ家族以外には見せるなよ」
「うん」
魔石に魔法陣を刻む作業は集中するから、家族以外の人の前では難しいと思う。
会話でちょっと作業が中断するくらいは良いんだけど、邪魔されるんじゃないかとか攻撃されるんじゃないかとか、周囲に意識を向けていると集中できないからね。
作り方を試行錯誤している魔法陣だったら、話しかけられても集中が途切れちゃいそうだけど、今は、書き換え方法が見えている魔法陣だから会話くらいは平気だ。
まずは、位置情報を連続して取得して、自動的に表示位置を切り替える機能。これは簡単。繰り返し実行と実行周期を指定するだけだ。
それから、連続して取得した位置情報から対象が向かっている方角を取得する機能。
正面から映さずに後ろから写すとかができるからね。
……でも、ずっと後ろ姿っていうのも面白くないかな。
ふと壁に表示されている「追跡魔道具二号君」の「動く写し絵」に目を向けた。
表示する距離も角度も適当なので、位置情報を取得し直す度に、大写しになったり遠くになったり。
正面だったり真後ろだったりしている。
正面の「動く写し絵」だと御者をしているネロ君の顔も見える。
暗い表情だ。体調良くないのかな。
正面から写していた馬車が通り過ぎる時、男の人達の笑い声が少し聞こえた。馬車の中の黒ローブ達の声かな。
体調が良くなさそうなネロ君に馬車を操縦させて、自分達は馬車の中で笑ってるのか。何か感じ悪いね。
「……この子、助け出せないかしら。大人に良いように使われていて気の毒だし、将来だって心配だわ」
ネロ君の疲れたような暗い表情が大きく映し出されると、母様が心配そうにボソリと言った。
「この連中を、毒を撒いた実行犯だとして拘束できたら考えよう」
「お願い。この子も彼らの組織の一員かもしれないけど、命令されて仕方なく行動しているように見えるわ。
重い罪になったりしないようにしてあげて」
「善処しようとは思うが……」
母様にお願いをされて父上は何か考えた様子で立ちあがり、部屋を出て行った。部屋を出る直前、「お話」の魔道具を起動したみたいに見えたから、シャル叔父さんに連絡するのかな。
何もない平原が映っている。壁に写すと大きすぎてちょっと寂しい絵だ。
とりあえず「追跡魔道具二号君」を使ってもらって、その間に「追跡魔道具三号君」を作ることにした。
「え、まだ改良するの?」
「だって、自動で写し直すようにした方が良いでしょ?」
「追跡魔道具二号君」は、識別情報から位置を取得して「動く写し絵」を表示するところまでは連動して動くけど、新しい位置を表示し直すには手で操作をし直さないといけない。
それでも、手探りで位置情報を入力していた「追跡魔道具一号君」の操作よりはかなり楽になったと思うんだけど。
できれば、何度も操作をしなくても馬車を追いかけることができた方が良いと思うんだ。
僕が新しい魔石を手にして魔法陣を刻み始めたら、兄上が小さく溜息をついた。
「……ちょっと目を離すと何か作り出しちゃうと思ってたけど、目を離していなくても何か作り出しちゃうんだな。開発スパンが早すぎる」
「何かダメだった?」
「ダメじゃないけど、作っているところ家族以外には見せるなよ」
「うん」
魔石に魔法陣を刻む作業は集中するから、家族以外の人の前では難しいと思う。
会話でちょっと作業が中断するくらいは良いんだけど、邪魔されるんじゃないかとか攻撃されるんじゃないかとか、周囲に意識を向けていると集中できないからね。
作り方を試行錯誤している魔法陣だったら、話しかけられても集中が途切れちゃいそうだけど、今は、書き換え方法が見えている魔法陣だから会話くらいは平気だ。
まずは、位置情報を連続して取得して、自動的に表示位置を切り替える機能。これは簡単。繰り返し実行と実行周期を指定するだけだ。
それから、連続して取得した位置情報から対象が向かっている方角を取得する機能。
正面から映さずに後ろから写すとかができるからね。
……でも、ずっと後ろ姿っていうのも面白くないかな。
ふと壁に表示されている「追跡魔道具二号君」の「動く写し絵」に目を向けた。
表示する距離も角度も適当なので、位置情報を取得し直す度に、大写しになったり遠くになったり。
正面だったり真後ろだったりしている。
正面の「動く写し絵」だと御者をしているネロ君の顔も見える。
暗い表情だ。体調良くないのかな。
正面から写していた馬車が通り過ぎる時、男の人達の笑い声が少し聞こえた。馬車の中の黒ローブ達の声かな。
体調が良くなさそうなネロ君に馬車を操縦させて、自分達は馬車の中で笑ってるのか。何か感じ悪いね。
「……この子、助け出せないかしら。大人に良いように使われていて気の毒だし、将来だって心配だわ」
ネロ君の疲れたような暗い表情が大きく映し出されると、母様が心配そうにボソリと言った。
「この連中を、毒を撒いた実行犯だとして拘束できたら考えよう」
「お願い。この子も彼らの組織の一員かもしれないけど、命令されて仕方なく行動しているように見えるわ。
重い罪になったりしないようにしてあげて」
「善処しようとは思うが……」
母様にお願いをされて父上は何か考えた様子で立ちあがり、部屋を出て行った。部屋を出る直前、「お話」の魔道具を起動したみたいに見えたから、シャル叔父さんに連絡するのかな。
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