転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

第1章

第109話 解毒治癒玉

羽根ペンを「収納」は出来たけど、「取り出し」が出来ない。

「……そうだよねぇ……」

「収納」スキルで物を収納する時に浮かび出てくる魔法陣と取り出す時の魔法陣は微妙に違っていたんだ。
僕が魔石に刻んだのは、物を入れる方の「収納」の魔法陣だけだった。取り出す方の魔法陣は刻んでいない。つまり羽根ペンは取り出せない。
困ったな。一応「それほど需要でないもの」を実験に使ったわけだけど、あの羽根ペンは描き心地が良かったしそれなりに気に入ってたんだ。

「うーむ……、ダメ元で、魔法陣を追加書きしてみるか」

もう一つ雷魔石があったことを思い出して、もう一方の魔石に「収納」から取り出す用の魔法陣を刻んだ。
そして、左手に水魔石を持って右手に雷魔石を持つ。魔石をくっ付けて恐る恐る雷魔力を通した、

パチ！
バチン！！

小さい火花と指先にピリッとした痛み。それから魔石がぶつかった瞬間の大きな音。
水魔石が弾かれて飛んで床にコロコロと転がった。

拾ってじっと見てみると水魔石の変色している部分が増えた。
うっすらと魔法陣ができているのを確認して魔力を通してみた。ポンと羽根ペンが出てきた。救出成功！！

「……と、言うことは出来たのかな。『収納』の魔道具が……。一応だけど……」

ものすごく不格好だし中途半端な出来なのはわかっているけれど、ちょっとニヤけてしまう。

収納魔道具第一号君を何度か試したら、すぐに魔石の魔力が切れてしまった。
しかも、収納できる量がとてもとても少ない。
わざわざ「収納」を使わなくてもポケットを使えば良いじゃないって言うくらいだ。

そもそも、普段使いするような小さい治癒玉に使う程度の水魔石を使って、「収納」の魔道具を作ろうとするの自体が無謀だった。

もっと魔力量が多い魔石を使えば良いとも考えたけれど、
治癒玉の魔石のことを考えた時、治癒玉で「収納」したいものを考えついてしまった。

治癒玉用にとっておいた水魔石にまずは治癒の魔法陣を刻む。
それから、２つの雷魔石で「収納」の２種類の魔法陣を水魔石に写す。雷魔石から移しとった魔法陣はじっくり観察しないと見えないけど、小さい治癒玉の魔石が魔法陣だらけだ。

魔石を指先で摘んで、ゆっくりと慎重に魔力を流しつつ光水を注いだ水差しに突っ込んだ。

水の中で魔法陣がキラキラと輝いたと思ったら、水差しの中の光水が半分無くなった。
水差しの半分くらいの水量が「収納」の限界らしい。

掌に魔法陣を刻んだ水魔石を乗せて、暫くコロコロと転がしながら眺めた。

水魔石の中に光水が入っていったというわけじゃない。光水は「収納」の空間に消えていったんだ。
次は水魔石を水差しの上で持って手で握ったまま魔力を流した。

フワッと二つの魔法陣が同時に浮かび上がった。ボタボタと水差しに水が落ちていく。

魔法陣は「治癒」の魔法陣と「取り出し」の魔法陣だ。「取り出し」の魔法陣を「治癒」も魔法陣とくっつくように作ったのが成功したんじゃないだろうか。「治癒」」をしている最中に「収納」を開始しようと言う動きにはならなかった。

ーーー解毒治癒玉
ーーー治癒・解毒

毒鑑定で見てみたら、僕が思い浮かべた安易な名前で出てきてしまった。でも、治癒と解毒の両方ができるものができたようだ。

魔法陣を刻む位置だとかを何度か作り直して調整をして、解毒治癒玉はなんとか完成した。