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第1章
第136話 試験に出るらしい
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水筒の時に使うカップは前に使った竹筒みたいに底に皮を張ってはいないけど、耳にカップを当てて、カップの底を爪でトントンと叩いてみたら凄く音が響いて聞こえた。これなら使えそうだ。カップの底に音を集めていくように魔法で調整して言ったら、思った以上に話し声が聞き取れる様になった。
『……そもそも、初討伐の時の話題が学園の面接試験でされるなど、なぜ急に殿下に話したのよ。マホニル小隊長!』
『嘘を言ったわけではない。実際にどのように訓練をしてきたかは、面接試験で訊かれることが多いと聞く』
『初討伐の祝杯をあげて良い思い出になったと話すと面接で印象が良いだなどと言われれば、
殿下がそうなさりたいとおっしゃるのは想像がついたでしょうが』
『討伐を祝いたいとおっしゃることの何が問題なんだ』
『タイミングの問題よ。角兎討伐からの帰還後に言い出すなど……。私が他家の騎士の問題で呼ばれている間に……。
少なくともゲンティアナ家にはあらかじめ伝えておくべきだったわ』
マホニル小隊長と呼ばれた人とレオノールさんが話している声が聞こえる。
言い争いというかレオノールさんが怒っていて、マホニル小隊長って人は悪びれない感じだ。
『ゲンティアナ家も了承したそうじゃないか。多少ごねていたようだが』
『彼らからしたら、了承せざるを得ないじゃない。しかも、ほとんど魔法と剣の練習の的になって痛めつけまくった魔獣を殿下にお出しするなど』
『まあまあ、ライラック小隊長~。痛めつけた角兎なのはネイサン殿下もご承知なのでぇ』
『ドレイク、殿下が魔獣の状態をよくご覧になっていたかわからないじゃないの』
軽い口調の人物が会話に加わってきた。
どうやら急に「初討伐の宴」なんて企画が持ち上がってきたのは、あのマホニル小隊長が原因のようだ。レオノールさんはゲンティアナ家の事を気にしてくれているみたいだね。
植込みの陰にしゃがみ込んで兄上と二人で聞き耳を立てていたんだけど、足音が聞こえてきたのでカップを耳から離した。兄上の手からもカップが消えた。あ、「収納」の魔法陣が浮かび上がってる。
他の騎士が彼らを呼びにやってきたみたいだ。呼びかける声が聞こえてきた。
風魔法を止めて様子を伺っていると、呼びにきた人とレオノールさんが足早に本館の方に向かって行くのが見えた。
残った騎士達は、その場に立ってレオノールさんが去っていく方向を見ていた。それからゆっくりと歩き出した。
兄上と僕は何となくだけど息を潜めて植込みの陰に隠れていた。
彼らの気配が本館の中に消えてから、立ち上がり深く息を吸って、「フゥゥー」と長く息を吐いた。
「ネイサン殿下が急に思いついて我儘言ったってわけじゃないみたいだね」
「……『試験に出る』とか……。訊かれても、討伐したことをそのまま答えれば良いんじゃないのか?
どんな試験か知らないから何とも言えないけどさ。もしも五分間語れって言われたら話題が沢山あった方が良いんだろうけど」
「兄上が学園に入学するときもその面接試験っていうのを受けるんでしょう?初討伐のこと訊かれるのかな。何を倒したか覚えてる?」
「面接試験とか考えてなかったなぁ。……初討伐は角トカゲだったな」
「僕も!初討伐は角トカゲ狩りだったと思う」
「いや、クリスは角トカゲ狩りに行って、その手前で二角モグラが穴から顔を出しているのをぶっ叩いてたから、二角モグラが初討伐だろ。」
「ええ?そうだっけ?」
風魔法が攻撃できるくらいになったって認めてもらえて初めての討伐に出かけて角トカゲの生息地を目指した記憶はあったんだけど、二角モグラがピョコピョコ顔を出してたら、確かに叩いちゃう気がするなぁ。
初討伐の後、お祝いの宴とかは特になかったと思う。ああ、でも魔石だけは渡されたんだった。
オレンジ色の魔石だった。今も文机の引き出しの奥の方にしまってあったはず。
「そうだ。角兎の魔石、綺麗にして渡せる様にしておいた方が良いね!」
角兎から取り出した魔石は解体の時に一度水魔法で洗ったけど、ざっと洗っただけだから、もう一度丁寧に洗っておこう。
「ああ。初討伐の話題の一つにしてもらえるかもな」
「角はどうする?折れたりしているのばっかりだったけど」
「うーん……。『一応、取っておきました』って魔石と一緒に渡しておこう。後から角はどうしたって聞かれるかもしれないし」
初討伐記念ということで一人魔石を二個ずつとか綺麗な箱に入れてご贈答って感じで渡すことをちょっと考えたけど、解体する時点で魔石を取っていなかったから、要らないって言われる可能性もある。
魔石も角も全部一緒のケースにまとめて入れて、どうするか決めてもらおうってことになった。
『……そもそも、初討伐の時の話題が学園の面接試験でされるなど、なぜ急に殿下に話したのよ。マホニル小隊長!』
『嘘を言ったわけではない。実際にどのように訓練をしてきたかは、面接試験で訊かれることが多いと聞く』
『初討伐の祝杯をあげて良い思い出になったと話すと面接で印象が良いだなどと言われれば、
殿下がそうなさりたいとおっしゃるのは想像がついたでしょうが』
『討伐を祝いたいとおっしゃることの何が問題なんだ』
『タイミングの問題よ。角兎討伐からの帰還後に言い出すなど……。私が他家の騎士の問題で呼ばれている間に……。
少なくともゲンティアナ家にはあらかじめ伝えておくべきだったわ』
マホニル小隊長と呼ばれた人とレオノールさんが話している声が聞こえる。
言い争いというかレオノールさんが怒っていて、マホニル小隊長って人は悪びれない感じだ。
『ゲンティアナ家も了承したそうじゃないか。多少ごねていたようだが』
『彼らからしたら、了承せざるを得ないじゃない。しかも、ほとんど魔法と剣の練習の的になって痛めつけまくった魔獣を殿下にお出しするなど』
『まあまあ、ライラック小隊長~。痛めつけた角兎なのはネイサン殿下もご承知なのでぇ』
『ドレイク、殿下が魔獣の状態をよくご覧になっていたかわからないじゃないの』
軽い口調の人物が会話に加わってきた。
どうやら急に「初討伐の宴」なんて企画が持ち上がってきたのは、あのマホニル小隊長が原因のようだ。レオノールさんはゲンティアナ家の事を気にしてくれているみたいだね。
植込みの陰にしゃがみ込んで兄上と二人で聞き耳を立てていたんだけど、足音が聞こえてきたのでカップを耳から離した。兄上の手からもカップが消えた。あ、「収納」の魔法陣が浮かび上がってる。
他の騎士が彼らを呼びにやってきたみたいだ。呼びかける声が聞こえてきた。
風魔法を止めて様子を伺っていると、呼びにきた人とレオノールさんが足早に本館の方に向かって行くのが見えた。
残った騎士達は、その場に立ってレオノールさんが去っていく方向を見ていた。それからゆっくりと歩き出した。
兄上と僕は何となくだけど息を潜めて植込みの陰に隠れていた。
彼らの気配が本館の中に消えてから、立ち上がり深く息を吸って、「フゥゥー」と長く息を吐いた。
「ネイサン殿下が急に思いついて我儘言ったってわけじゃないみたいだね」
「……『試験に出る』とか……。訊かれても、討伐したことをそのまま答えれば良いんじゃないのか?
どんな試験か知らないから何とも言えないけどさ。もしも五分間語れって言われたら話題が沢山あった方が良いんだろうけど」
「兄上が学園に入学するときもその面接試験っていうのを受けるんでしょう?初討伐のこと訊かれるのかな。何を倒したか覚えてる?」
「面接試験とか考えてなかったなぁ。……初討伐は角トカゲだったな」
「僕も!初討伐は角トカゲ狩りだったと思う」
「いや、クリスは角トカゲ狩りに行って、その手前で二角モグラが穴から顔を出しているのをぶっ叩いてたから、二角モグラが初討伐だろ。」
「ええ?そうだっけ?」
風魔法が攻撃できるくらいになったって認めてもらえて初めての討伐に出かけて角トカゲの生息地を目指した記憶はあったんだけど、二角モグラがピョコピョコ顔を出してたら、確かに叩いちゃう気がするなぁ。
初討伐の後、お祝いの宴とかは特になかったと思う。ああ、でも魔石だけは渡されたんだった。
オレンジ色の魔石だった。今も文机の引き出しの奥の方にしまってあったはず。
「そうだ。角兎の魔石、綺麗にして渡せる様にしておいた方が良いね!」
角兎から取り出した魔石は解体の時に一度水魔法で洗ったけど、ざっと洗っただけだから、もう一度丁寧に洗っておこう。
「ああ。初討伐の話題の一つにしてもらえるかもな」
「角はどうする?折れたりしているのばっかりだったけど」
「うーん……。『一応、取っておきました』って魔石と一緒に渡しておこう。後から角はどうしたって聞かれるかもしれないし」
初討伐記念ということで一人魔石を二個ずつとか綺麗な箱に入れてご贈答って感じで渡すことをちょっと考えたけど、解体する時点で魔石を取っていなかったから、要らないって言われる可能性もある。
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