転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第159話 思いがけないところから毒

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「中に毒があるってことじゃないか?割ってみても良い?」

兄上が黒くなった木の実を覗き込んで見て、薬師のおばあちゃんに尋ねた。薬師のおばあちゃんが頷く。

「構わないよ。ここに置いたものは試すのに使っても良いものだ。だが、素手では触るんじゃないよ」
「わかってる」

兄上はピンセットで黒くなった木の実を取り出して板の上に乗せた。すっと薬師のおばあちゃんが小さいナイフを作業台に置く。

「それを使いな」
「はい」

兄上は自分の手持ちのナイフを使おうとしていたみたいだ。取り出しかけていた手持ちのナイフを腰のホルダーに戻した。
ピンセットでつまみながらナイフを木の実に当てる。
ググっと力を入れたのか、ピンセットを持つ手が揺れた。

「……けっこう硬い……」
「そうなのさ。割れなくはないが、思ったより硬いだろう。手を怪我しないように気をつけな」
「はい」

兄上は少し姿勢を正して、キリッとした目を木の実に向けた。集中モード!

コン!コロコロ!

ナイフが作業板に当たる音と、木の実が転がる音がした。途端に嫌な気配を木の実から感じた。

《パープルヴァレートレントの実》
《呪いの毒(微毒)》

「呪いの毒!?兄上、危ない!離れて!」

ギョッとして大声をあげた。兄上は後ろに飛び退き、薬師のおばあちゃんは作業板の上に金属製の蓋のようなものを被せた。

「ルド、光水を」
「あ、はいはい!」

部屋の隅で見ていたルドおじさんに薬師のおばあちゃんが声をかけると、ルドおじさんはすぐ傍の棚の上の木箱から小瓶を2、3本掴み取った。
素早く一つの小瓶の蓋を開けて薬師のおばあちゃんに近づく。薬師のおばあちゃんが蓋を持ち上げたタイミングで小瓶の中身を木の実にぶちまけた。

薬師のおばあちゃんは木の実を一瞬じっと見てから、ルドおじさんに指示して蓋やナイフにも光水を振りかけさせた。

《パープルヴァレートレントの実》
《解毒済み》

「解毒済みって出たよ!」
「ああ。もう心配ないだろう」

薬師のおばあちゃんの毒鑑定でも同じ結果が出たらしい。ルドおじさんが用意した壺に手早く解毒した木の実を入れて蓋をした。


「どういうことですかね。 昨日割ったときは特に何もなかったですよね」

ルドおじさんは、首を傾げながら紫色の木の実の入った容器に目を向けた。はっとした様子で薬師のおばあちゃんの方に振り向く。

「こ、これも、密封した方がよいんじゃ……」
「慌てなくてよい。この状態では『微毒』としかでておらん。昨日割ったときもなんでもなかっただろう」
「食べてみなくてヨカッタァ!」

ルドおじさんは昨日、紫色の木の実をナイフで割ったのだそうだ。でもその時は「呪いの毒」とは鑑定でもでなかったらしい。ルドおじさんが「はーっ」と大きく息を吐いた。

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