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第1章
第160話 検証を続ける
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「甘いって聞いてたからさ、『微毒』でもちょっと齧ってみようかって思ったんだよねぇ。危ない危ない」
ルドおじさんがポリポリと指先で頰を掻いて苦笑した。本当にこんな怪しい木の実を食べなくてよかったよ。兄上が難しい顔をして首を傾げる。
「『甘い』って情報が出ることは食べてみた人がいるってことだよね。その人、大丈夫だったのかな」
「個体差があるのかもしれない。それか何か変化する条件があるんじゃないかねぇ」
薬師のおばあちゃんが紫色の木の実が入った容器に蓋をした。僕は作業台の向こう側から実を乗り出した。「呪いの毒」に成る条件が気になる。
「条件って、果実炭酸光水に漬けたら、とか?えーと、割って入れるのと丸のままだと違うとか?」
「……少し試してみるかい。使うのはここにある木の実だけだよ」
上目遣いに薬師のおばあちゃんを見つめたら、薬師のおばあちゃんは仕方なさそうに一度閉めた蓋を開けた。実験して良いらしい。
「やった!」
「……どこかで同じ実を入手して、他で実験はするんじゃないよ」
「わかった!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
薬師のおばあちゃんから実験の許可が出たのに、兄上が慌てて止めに入ってきた。
「危険です!『呪いの毒』が発生するかもしれないんですよ。普通の解毒剤では解毒できない毒の……」
「光水では解毒できるだろう」
「でも、その実験にクリスにさせるなんて!」
「クリス一人でやれとは言っていないよ。ここで実験するのを傍で見る程度だね」
「え?そうなの?」
薬師のおばあちゃんの言葉に今度は僕がびっくりしてしまった。実験させてもらえると思ったんだけどな。
薬師のおばあちゃんは僕の考えが聞こえたかのように、チラリとこちらをみて片眉を上げた。
「多少の手伝いはしてもらうよ。でもどんな形で毒が発生するかわからないから、私が主体でやるよ。
冒険者ギルドから依頼を受けたのは私だからね。……クリスは興味を持つと勝手に実験しようとするからここで実験に参加させておいた方がよいだろう」
薬師のおばあちゃんの言葉に兄上は納得したように「ああ……」と呟いた。でもすぐに思い直したようにキリッとした目を薬師のおばあちゃんに向けた。
「クリスが実験したがるのは……、まあ、わかるんですけど。
どの程度実験をするつもりなんですか?危険なものだって分かったのだから、もうギルドにそれを回答して後は国の研究機関とかに任せた方がよいんじゃないですか?」
薬師のおばあちゃんも兄上も、僕のことを「実験したがり」だと思っているようだ。
実験は好きだけど、危険なこととかはしないんだけどな。魔法陣魔石を試すときだって、場所を考えてやっているしさ。
「国の研究機関、ね。その考えは一般的には間違いではないだろうね」
「一般的?」
薬師のおばあちゃんの言葉に兄上は首を傾げた。薬師のおばあちゃんは、紫色の魔石が入っている容器の蓋を、トンと爪で軽く叩いた。
「王都に今の結果を報告して、研究機関が結果を出すまでが順調に行ったとしてもそれなりに日数がかかる。
その後対策が練られたとして、それがゲンティアナまで届くのにどれくらいかかると思う?」
「ゲンティアナまで……、時間がかかるということですか……」
兄上の声のトーンが急に下がった。さまようように目を動かして声を絞り出した。
「……報告元がゲンティアナだとしても、すぐに結果を教えてくれるとは限らないってことですね……」
「それと、田舎で起きていることだからと、緊急に対応しようとしないかもしれないね」
「そんな……。あり得るか……」
「危険物だとギルドに報告すれば、この実験素材は回収される。ギルドへの報告期限はまだあるから調べられるだけ調べた方が、ゲンティアナにとっては良いと思うがね」
「そうですね……」
兄上は俯いて少し考えている様子の後、顔を上げた。
ルドおじさんがポリポリと指先で頰を掻いて苦笑した。本当にこんな怪しい木の実を食べなくてよかったよ。兄上が難しい顔をして首を傾げる。
「『甘い』って情報が出ることは食べてみた人がいるってことだよね。その人、大丈夫だったのかな」
「個体差があるのかもしれない。それか何か変化する条件があるんじゃないかねぇ」
薬師のおばあちゃんが紫色の木の実が入った容器に蓋をした。僕は作業台の向こう側から実を乗り出した。「呪いの毒」に成る条件が気になる。
「条件って、果実炭酸光水に漬けたら、とか?えーと、割って入れるのと丸のままだと違うとか?」
「……少し試してみるかい。使うのはここにある木の実だけだよ」
上目遣いに薬師のおばあちゃんを見つめたら、薬師のおばあちゃんは仕方なさそうに一度閉めた蓋を開けた。実験して良いらしい。
「やった!」
「……どこかで同じ実を入手して、他で実験はするんじゃないよ」
「わかった!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
薬師のおばあちゃんから実験の許可が出たのに、兄上が慌てて止めに入ってきた。
「危険です!『呪いの毒』が発生するかもしれないんですよ。普通の解毒剤では解毒できない毒の……」
「光水では解毒できるだろう」
「でも、その実験にクリスにさせるなんて!」
「クリス一人でやれとは言っていないよ。ここで実験するのを傍で見る程度だね」
「え?そうなの?」
薬師のおばあちゃんの言葉に今度は僕がびっくりしてしまった。実験させてもらえると思ったんだけどな。
薬師のおばあちゃんは僕の考えが聞こえたかのように、チラリとこちらをみて片眉を上げた。
「多少の手伝いはしてもらうよ。でもどんな形で毒が発生するかわからないから、私が主体でやるよ。
冒険者ギルドから依頼を受けたのは私だからね。……クリスは興味を持つと勝手に実験しようとするからここで実験に参加させておいた方がよいだろう」
薬師のおばあちゃんの言葉に兄上は納得したように「ああ……」と呟いた。でもすぐに思い直したようにキリッとした目を薬師のおばあちゃんに向けた。
「クリスが実験したがるのは……、まあ、わかるんですけど。
どの程度実験をするつもりなんですか?危険なものだって分かったのだから、もうギルドにそれを回答して後は国の研究機関とかに任せた方がよいんじゃないですか?」
薬師のおばあちゃんも兄上も、僕のことを「実験したがり」だと思っているようだ。
実験は好きだけど、危険なこととかはしないんだけどな。魔法陣魔石を試すときだって、場所を考えてやっているしさ。
「国の研究機関、ね。その考えは一般的には間違いではないだろうね」
「一般的?」
薬師のおばあちゃんの言葉に兄上は首を傾げた。薬師のおばあちゃんは、紫色の魔石が入っている容器の蓋を、トンと爪で軽く叩いた。
「王都に今の結果を報告して、研究機関が結果を出すまでが順調に行ったとしてもそれなりに日数がかかる。
その後対策が練られたとして、それがゲンティアナまで届くのにどれくらいかかると思う?」
「ゲンティアナまで……、時間がかかるということですか……」
兄上の声のトーンが急に下がった。さまようように目を動かして声を絞り出した。
「……報告元がゲンティアナだとしても、すぐに結果を教えてくれるとは限らないってことですね……」
「それと、田舎で起きていることだからと、緊急に対応しようとしないかもしれないね」
「そんな……。あり得るか……」
「危険物だとギルドに報告すれば、この実験素材は回収される。ギルドへの報告期限はまだあるから調べられるだけ調べた方が、ゲンティアナにとっては良いと思うがね」
「そうですね……」
兄上は俯いて少し考えている様子の後、顔を上げた。
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