転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第212話 氷の華

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パーン!
パリーン!

割れるような音が響く。的のところに人が立っている。
長い銀髪。レオノールさんかな。
入り口のところで立ち止まって少し様子を見ていると、レオノールさんの手元から
魔法陣が浮かび上がった。

パーン!
パリーン!

氷の槍みたいなのを的に打ち込んでいるようだ。音からして威力が高そう。

パーン!
パーン!
パーン!

連続。無詠唱らしい。浮かび上がる魔法陣が重なって綺麗だ。
浮かび上がってくる魔法陣の大きさって、込めている魔力によって決まるみたいなんだけど
連続して撃たれた魔法陣の大きさが均等だった。

「凄…」

魔法陣をじっと見つめながら思わず呟くと、レオノールさんが振り向いた。

「あら……」

レオノールさんが纏っていた魔力が急に変化した。変化前は全身から凍て付くような冷気を放出しまくっている
みたいな感じだったのが、穏やかなものに変わった。

兄上がぺこりとお辞儀をしたので僕もそれに倣う。
レオノールさんがいる方に近寄って行く。

「すみません。訓練場を使おうと思ってきたらいらしたので……。
 凄い威力の魔法ですね」
「大したことはないわよ。こんなものは……」

兄上がレオノールさんの魔法を褒めたらレオノールさんはちょっと困ったように眉を下げた。

「魔法を放つだけじゃ、守れないものばかりだし……」
「え?」
「なんでもないわ。
 ……今日は二人にも迷惑をかけてしまったわね。騎士団の情けないところを晒してしまったわ」
「いえ……」

レオノールさんの言葉に兄上が首を横に振った。

「何か、仕組んだ人がいるんでしょう?」
「……そうね……。それ自体も情けないことよ」
「もうその人は捕まったんですか」
「ええ……」

レオノールさんが物憂げな表情で深く息を吐いた。
伏せていた目線を上げて僕達を見つめた。

「訓練に来たのかしら?」
「いえ。……魔道具を試しに来ました」
「魔道具?」
「装身具の魔道具です。以前買ったものらしいんですけど、使えるのか試そうかと思って」

僕が抱えている箱にレオノールさんの目線が動いた。

「見せてもらっても?」
「はい。どうぞ」

沢山作ったから、レオノールさんに一個あげちゃっても良いくらいだ。
まあ、兄上と母上に了承してもらってからだけど。

ブローチが入った箱の蓋を開けて、中が見えるように箱をレオノールさんに向けて傾けると
レオノールさんが目を見開いた。

「綺麗ね。これは……ブローチ?」
「はい」

レオノールさんは箱の中に並んだブローチを見て微笑んだ。
ブローチの見た目は好評ってことで良いかな。

「これが魔道具なの?」
「魔道具らしいんですけど、使えるものなのかを試そうと思って……」

兄上は説明をしながら的のある辺りにチラリと目を向けた。

的は氷漬けになっていて、氷の花が咲いたみたいになっていた。
的の近くには氷の槍だか剣みたいなのがいくつも落ちているけど、氷の花が散った跡みたいにも見える。
いいなあ。色々な氷魔法の魔法陣を見せてもらいたいなぁ。

「あの的が凍っているのは、氷の槍とは別の魔法ですか?」
「そうね。対象を氷漬けにする魔法よ」
「どんな風なのかみたいです」
「あら。魔道具を試すのではなかったの?」

ダメ元で聞いてみたら、レオノールさんが首を傾げた。兄上が「何言ってるんだ?」って言いたげに眉間に皺を寄せている。
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