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第1章
第235話 治癒を試す
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僕は慌ててリネリア嬢に駆け寄った。
「今、治癒魔法発動しなかったんじゃ……」
「側に怪我した人がいないと効果がわからないわね」
「そうじゃなくて、発動……」
魔法が発動しなかったから魔道具に不具合があったんじゃないかって言いかけたんだけど、
リネリア嬢が僕の言葉にびっくりしたみたいに目を見開いたので言葉を止めた。
リネリア嬢が小声で言う。
「え?わかっちゃうの?」
「……どういうことですか?」
「ごめんなさい。治癒の魔石を使ったことにして?」
リネリア嬢が言っている意味がよくわからなくて、何て応えて良いかわからなかった。首を傾げてリネリア嬢を見つめていたら
兄上が来て、僕とリネリア嬢を的場の端の方に促した。
「何かありましたか?」
「あの……、怪我している騎士がいるので、治癒魔石を使って見たいと思っていて……」
「ああ……」
リネリア嬢の言葉に、兄上は納得したように頷いた。
オーキッド伯爵家の騎士達が居る方に移動して行って、リネリア嬢が騎士の一人に何かを言った。
ゾロゾロと騎士達が取り囲むように立って、その中心でリネリア嬢が一人の騎士の包帯を巻いている腕にブローチを向けて治癒魔石に魔力を流した。
治癒魔法の魔法陣が浮かび上がり、キラキラした魔力の粒が騎士の右腕に吸い込まれていった。
「おお!」
治癒魔法を受けた騎士が、肘を曲げたり伸ばしたりして目を輝かせた。
「動かしても痛くありません!ありがとうございます。リネリアお嬢様!」
「魔道具の効果よ」
リネリア嬢は少し恥ずかしそうに俯いた。オーキッド伯爵も様子を見に来ていたようだ。二人に近づいていく。
「包帯を取ってみなさい」
「は!」
オーキッド伯爵に言われて、騎士が急いで腕に巻かれた包帯を取り除いた。顕になった腕には傷跡がありその周りが緑色になっていた。
塗り薬の跡かな。
「ふむ。傷跡は残るようだね」
「負傷した時に比べれば、傷跡もないも同然です!」
「痛みは全くないのかな?感覚は?」
「問題ありません!」
「なるほど……」
オーキッド伯爵は顎髭を指で撫でながら、チラリと目線を動かした。視線の先にはシェリル嬢と辺境伯様が見えた。
的の前まで移動したようだ。話は落ち着いたのかな。
「……ナスタチウム辺境伯閣下が気にするわけだね。重傷者はわからないが、この程度の怪我なら治療ができるのだからね」
オーキッド伯爵は呟いた後、兄上と僕を見た。
「後でお父上に入手方法がないか聞いてみよう。希少な品を我が娘リネリアに贈ってくれたこと、感謝する」
オーキッド伯爵がお礼を言ってくれた。オーキッド伯爵は髭面だけど良く見るとほっそりとした優しそうな顔をした人物だ。
「とんでもないです。何かのお役に立てば幸いです」
オーキッド伯爵は兄上の言葉に頷いた後、リネリア嬢に少し鋭い目線を向けた。
「……しかし、魔道具を使った振りなど、礼儀としてどうだろう。リネリア?」
「ご、ごめんなさい!治癒の魔石を怪我人も誰もいないところで使うのは、無駄にしてしまっている気がして!」
「それならそのように告げて、使う振りなどしなくてもよかっただろう」
「治癒の魔石のことで……、揉めていたみたいだったから……。使わないのも目立ってしまうかと思ってしまって……」
リネリア嬢は顔を真っ赤にしながら俯いていた。
なるほど。リネリア嬢は治癒の魔石の魔力を無駄にしたくなかったんだな。言ってくれればよかったのに。でも、辺境伯様達が揉めているのが気になっちゃったのか。
「今、治癒魔法発動しなかったんじゃ……」
「側に怪我した人がいないと効果がわからないわね」
「そうじゃなくて、発動……」
魔法が発動しなかったから魔道具に不具合があったんじゃないかって言いかけたんだけど、
リネリア嬢が僕の言葉にびっくりしたみたいに目を見開いたので言葉を止めた。
リネリア嬢が小声で言う。
「え?わかっちゃうの?」
「……どういうことですか?」
「ごめんなさい。治癒の魔石を使ったことにして?」
リネリア嬢が言っている意味がよくわからなくて、何て応えて良いかわからなかった。首を傾げてリネリア嬢を見つめていたら
兄上が来て、僕とリネリア嬢を的場の端の方に促した。
「何かありましたか?」
「あの……、怪我している騎士がいるので、治癒魔石を使って見たいと思っていて……」
「ああ……」
リネリア嬢の言葉に、兄上は納得したように頷いた。
オーキッド伯爵家の騎士達が居る方に移動して行って、リネリア嬢が騎士の一人に何かを言った。
ゾロゾロと騎士達が取り囲むように立って、その中心でリネリア嬢が一人の騎士の包帯を巻いている腕にブローチを向けて治癒魔石に魔力を流した。
治癒魔法の魔法陣が浮かび上がり、キラキラした魔力の粒が騎士の右腕に吸い込まれていった。
「おお!」
治癒魔法を受けた騎士が、肘を曲げたり伸ばしたりして目を輝かせた。
「動かしても痛くありません!ありがとうございます。リネリアお嬢様!」
「魔道具の効果よ」
リネリア嬢は少し恥ずかしそうに俯いた。オーキッド伯爵も様子を見に来ていたようだ。二人に近づいていく。
「包帯を取ってみなさい」
「は!」
オーキッド伯爵に言われて、騎士が急いで腕に巻かれた包帯を取り除いた。顕になった腕には傷跡がありその周りが緑色になっていた。
塗り薬の跡かな。
「ふむ。傷跡は残るようだね」
「負傷した時に比べれば、傷跡もないも同然です!」
「痛みは全くないのかな?感覚は?」
「問題ありません!」
「なるほど……」
オーキッド伯爵は顎髭を指で撫でながら、チラリと目線を動かした。視線の先にはシェリル嬢と辺境伯様が見えた。
的の前まで移動したようだ。話は落ち着いたのかな。
「……ナスタチウム辺境伯閣下が気にするわけだね。重傷者はわからないが、この程度の怪我なら治療ができるのだからね」
オーキッド伯爵は呟いた後、兄上と僕を見た。
「後でお父上に入手方法がないか聞いてみよう。希少な品を我が娘リネリアに贈ってくれたこと、感謝する」
オーキッド伯爵がお礼を言ってくれた。オーキッド伯爵は髭面だけど良く見るとほっそりとした優しそうな顔をした人物だ。
「とんでもないです。何かのお役に立てば幸いです」
オーキッド伯爵は兄上の言葉に頷いた後、リネリア嬢に少し鋭い目線を向けた。
「……しかし、魔道具を使った振りなど、礼儀としてどうだろう。リネリア?」
「ご、ごめんなさい!治癒の魔石を怪我人も誰もいないところで使うのは、無駄にしてしまっている気がして!」
「それならそのように告げて、使う振りなどしなくてもよかっただろう」
「治癒の魔石のことで……、揉めていたみたいだったから……。使わないのも目立ってしまうかと思ってしまって……」
リネリア嬢は顔を真っ赤にしながら俯いていた。
なるほど。リネリア嬢は治癒の魔石の魔力を無駄にしたくなかったんだな。言ってくれればよかったのに。でも、辺境伯様達が揉めているのが気になっちゃったのか。
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