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第2章
第265話 辺境の地は心配
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兄上は、国境線に面したアンソラ男爵領とナスタチウム辺境伯領の間くらいの場所に丸をつけた。
「前の戦争はこの辺りで争っていたらしい。今は頑強な砦が作られているって話だ」
「砦があって攻められないから、ゲンティアナの方を狙ったのかな?」
「どうだろう。それでも森を抜けてくるかどうか……」
「森を抜ける途中で『呪いの毒』でやられちゃいそうだよね」
「そうなんだよな……」
兄上がチラリと、皮の一部が黒く爛れた毛皮が山積みにされているのを見る。
かなり大きいし凶悪そうな魔獣の遺骸が多い。
頑強な魔獣だから『呪いの毒』にすぐ倒れずに泉まで辿り着いて毒耐性を得たのだろう。
泉の向こう側のことはよく分からないけど、強い魔獣がウヨウヨいるみたいだし、
森を抜けて攻めてくるのは考えにくいというのも分かる気がする。
それでも、もしもゲンティアナに他の国から攻めてこられたらって考えたらゾッとした。
森を抜けたら町まですぐじゃん。ゲンティアナの騎士は皆格好良いけど、そんなに数は多くないと思う。
町にいる騎士の数だったら殿下達の護衛で来ていた騎士の人達の方が多かったんじゃないかな。
「……もし、攻めてこられたらどうしよう……」
僕が呟くと、兄上は肩を竦めた。
「心配しすぎるなよ。国の境は常にそういう可能性がある土地なんだぞ」
「危険ってこと?」
「危険だから、父上が領主をして守ってるんだろ」
「あ、そうか。父上は強いもんね!」
「ああ、それにゲンティアナの騎士達だって強いと思うよ」
「そうだね」
兄上と話していたら大丈夫な気がしてきた。
毒とか用心するに越したことはないけど、敵が攻めてきたらどうしようとかは心配し過ぎないことにした。
何かあった時に、すぐ連絡できるようにするとかに力を入れる方が良いね。
だから、母様はゲンティアナの領内の各地に「手紙」の魔道具を広めたいと言ってたのかもしれないな。
屋敷に戻って、母様に泉で兄上と話していたことを話すと母様は穏やかに微笑んだ。
「まあ、そんな話をしていたのね」
「……ちょっと心配になっちゃった。でも、大丈夫だよね?」
「物事には絶対、ということはないけれどね。隣国の軍が森を抜けてくるのは厳しいと思うわ」
「そうかぁ、よかった……」
ホッと息を吐くと、母様がポンポンと僕の頭を撫でてハグしてくれた。ふわっと甘い香り。安心する匂いだ。
「クリスは心配し過ぎないで。不審な人を見かけたら教えてくれる程度で良いの。
無理に捕まえようとしなくても良いのよ。……この間のは仕方なかったけれど……」
「うん……」
母様は僕や兄上が怪我したりするのが心配してくれている。
黒ローブの仲間みたいな人を見かけたとしても、後をつけたりはダメだって。
「お話」の魔道具があるから、直ぐに知らせることができるのは良かった。
……でも、危険な時だとか急ぐ時とか話さなくても伝えられるような魔道具も作っておいた方が良いかな。
後で考えてみよう。
「前の戦争はこの辺りで争っていたらしい。今は頑強な砦が作られているって話だ」
「砦があって攻められないから、ゲンティアナの方を狙ったのかな?」
「どうだろう。それでも森を抜けてくるかどうか……」
「森を抜ける途中で『呪いの毒』でやられちゃいそうだよね」
「そうなんだよな……」
兄上がチラリと、皮の一部が黒く爛れた毛皮が山積みにされているのを見る。
かなり大きいし凶悪そうな魔獣の遺骸が多い。
頑強な魔獣だから『呪いの毒』にすぐ倒れずに泉まで辿り着いて毒耐性を得たのだろう。
泉の向こう側のことはよく分からないけど、強い魔獣がウヨウヨいるみたいだし、
森を抜けて攻めてくるのは考えにくいというのも分かる気がする。
それでも、もしもゲンティアナに他の国から攻めてこられたらって考えたらゾッとした。
森を抜けたら町まですぐじゃん。ゲンティアナの騎士は皆格好良いけど、そんなに数は多くないと思う。
町にいる騎士の数だったら殿下達の護衛で来ていた騎士の人達の方が多かったんじゃないかな。
「……もし、攻めてこられたらどうしよう……」
僕が呟くと、兄上は肩を竦めた。
「心配しすぎるなよ。国の境は常にそういう可能性がある土地なんだぞ」
「危険ってこと?」
「危険だから、父上が領主をして守ってるんだろ」
「あ、そうか。父上は強いもんね!」
「ああ、それにゲンティアナの騎士達だって強いと思うよ」
「そうだね」
兄上と話していたら大丈夫な気がしてきた。
毒とか用心するに越したことはないけど、敵が攻めてきたらどうしようとかは心配し過ぎないことにした。
何かあった時に、すぐ連絡できるようにするとかに力を入れる方が良いね。
だから、母様はゲンティアナの領内の各地に「手紙」の魔道具を広めたいと言ってたのかもしれないな。
屋敷に戻って、母様に泉で兄上と話していたことを話すと母様は穏やかに微笑んだ。
「まあ、そんな話をしていたのね」
「……ちょっと心配になっちゃった。でも、大丈夫だよね?」
「物事には絶対、ということはないけれどね。隣国の軍が森を抜けてくるのは厳しいと思うわ」
「そうかぁ、よかった……」
ホッと息を吐くと、母様がポンポンと僕の頭を撫でてハグしてくれた。ふわっと甘い香り。安心する匂いだ。
「クリスは心配し過ぎないで。不審な人を見かけたら教えてくれる程度で良いの。
無理に捕まえようとしなくても良いのよ。……この間のは仕方なかったけれど……」
「うん……」
母様は僕や兄上が怪我したりするのが心配してくれている。
黒ローブの仲間みたいな人を見かけたとしても、後をつけたりはダメだって。
「お話」の魔道具があるから、直ぐに知らせることができるのは良かった。
……でも、危険な時だとか急ぐ時とか話さなくても伝えられるような魔道具も作っておいた方が良いかな。
後で考えてみよう。
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