【完結】がり勉地味眼鏡はお呼びじゃない！と好きな人が婚約破棄されたので私が貰いますわね！

第１０話

　季節は巡り、秋になった。

　アドリアンがユージェニー王女殿下に婚約破棄を突き付けられたのは夏のダンスパーティーだったから、時が過ぎるのは早いものである。


　ワーズ学園では秋には学園行事として毎年ガーデンパーティーを行うことになっている。

　秋は気候が良く、夏と違って外でも過ごしやすい為、ガーデンパーティーなのだ。


　このガーデンパーティーは毎年行われているが、テーマがその時の生徒会のメンバーによって変わる。

　去年のテーマは王道に秋の味で、各自秋の味覚を使った料理やスイーツを持ち寄って色々な味覚を楽しむパーティーだったが、今年のテーマはアドリアン達で話し合った結果、仮装になった。

　普段のパーティーで着用しているドレスや礼装での参加ではなく、全員何かしらの仮装をして参加するのである。


　隣の国で行われている収穫祭というお祭りをベースに考えている為、ゴースト系の仮装を想定しているが、絶対にゴースト系の仮装でなければならないという訳ではなく、例えば物語の登場人物やキャラクターの仮装でも良いことにしている。

　とにかく普段の装いではなく、何かの仮装をすれば良い。


　因みに収穫祭とは、秋の収穫を祝い、悪霊を追い払う宗教的なお祭りだ。

　隣の国で収穫祭が行われる時は、子供たちはゴースト系の仮装をするのだが、悪霊に人間だと気づかれない為にゴースト系の仮装をするのである。

　この国と隣の国では宗教が違う為、この国では国を挙げて行う行事ではない。


　今回行事として行うのはこの収穫祭から仮装の要素だけを抽出したパーティーになる。

　皆、仮装内容に合わせたドレスや礼装を用意する。

　婚約者同士でお揃いにしたり、対になる存在の仮装をしたりと……と婚約者と合わせた仮装をすることも認められている。


　パーティーのテーマを仮装と決めて、生徒全員に通達した後、”あちこちでどんな仮装にするか？”という話題で持ちきりだった。

　特に身分の高い生徒がどんな仮装にするのかの情報収集は必ずやらなければならない。

　普段のパーティーでの衣装と同じく、暗黙の了解で、身分が高い者と同じ色やテーマ、似たようなデザインにするのはご法度だ。

　ここできちんとしておかなければ、後々不要なトラブルを招くことになる。

　衣装被りは重大なルール違反だ。


　アドリアンとフローレンスは生徒会室で、パーティーの予算案に目を通しながら、仮装について話し合う。

「アドリアン様、私達の仮装はどうしましょうか？　早く決めないとドレスを注文する都合もありますし……」

「フローレンス嬢はどんな仮装がやりたいですか？　私はそれに合わせようと思います」

「アドリアン様が黒髪ですので、ヴァンパイアなんてどうでしょうか？　イメージにぴったりです。私はその眷属のアンデッドの少女という設定ですわ。ヴァンパイアなら衣装自体はベルベットの素材で出来たそれらしいものを探して、後は小物を少し用意するくらいで済みますわ」

「牙とかアクセサリーなどの小物類は多少用意は必要でしょうが、確かにジャケットとスラックスは持っているものを使えるのでいいですね。クローゼットを探して、イメージに合うものがなければ注文します」

「私は黒いレースやフリルやリボンを使ったゴシックな雰囲気のドレスを着て、化粧で血色を悪く見せます。では、アドリアン様がヴァンパイアで、私がアンデッドということで決定ですわね」


　こうして二人は何の仮装をするか決め、さりげなく自分達の仮装について情報を流しておいた。

　幸い同じ仮装をやる予定の者はまだいなかったから、再度考え直す必要はなかった。

　あとはパーティー本番に向けて各々衣装と小物類を間に合うように用意するだけだ。


　学園全体がパーティーに向けて盛り上がっていた。