58 / 166
出会い
罠
しおりを挟む
私たちは準備が終わってから時を待った。
暫くして、外で騒ぎが起こる。
「出てきやがれ治癒師!舎弟の仇だ!」
「引きずり出せ!」
「何だ貴様ら!止めろ!」
どうやら奴等が来たようなので、それぞれ行動を開始した。
(ていうか‘仇’って……死んだ設定に変えたのかな?)
ランカたちと、メイソンとブレイクが一度外に出ると、少しして男が3人入って来た。
「小娘、一緒に来てもらおうか」
「何者ですか!」
「知る必要は無い。貴様が来なければ死人が出るぞ」
「……分かりました」
私は大人しく男たちに着いていく。
連れてこられたのは、ギルドから4ブロック先の無人の建物だった。
「私をどうするつもりですか?」
「お前には死んでもらう。我等の雇い主はお前が気にくわないそうだ」
「雇い主とは誰ですか?何も知らず殺されるのは嫌です」
「フンッ、いいだろう。雇い主は……私だ」
「え!?……貴方が?」
(うわぁ……自分で来たの?予想外!)
「私が誰か知ってるな?」
(自意識過剰のナルシスト?)
「治療所の治癒師の方ですよね」
「そうだ、せっかく治癒費を高くして儲けていたのに、貴様が無料で治療するから冒険者の患者が減ったではないか!私は金が払えなくてすがり付き、絶望する顔が見たかったのに、楽しみを邪魔しよって!」
(ベラベラとよくしゃべる……下衆が!)
「よって貴様を殺す事にした!さぁ私に絶望の顔を見せてくれ!」
治癒師の合図で2人の男が動こうとして、崩れ落ちた。
「おい!?どうした、何故倒れる?」
「クスクス……心配しないでください。ただ眠っているだけですから」
「貴様、何をした!?ただの治癒師がこんな事、できるわけがない!」
「それなんですけど、私は治癒師と名乗った覚えは無いんですよね」
「な、何?」
「貴方は、絶望した顔が好きなんですよね?だったらきっと、自分の絶望した顔も好きでしょうから、たっぷり見てください。『悪夢』」
治癒師は怯えたまま眠りに落ちた。
私が冷めた目で治癒師を見ていると、後ろから声がかかった。
「何をしたんだ?サヨ」
「『悪夢』……彼が最も恐れるものの夢を見せています。私が解除するまで目覚めることはありません」
「フンッ、いい薬じゃ」
声をかけたのは、メイソンとブレイクだった。
連れ出された私の後ろを、しっかり着いて来ていたのだ。
「さて、この人たちはどうしましょうか?」
「さっき、ルイスに通信したらこちらに向かうそうだ」
「ならギルドの方に戻りましょう。騒ぎが気になりますから」
「男らはワシらが運ぼう」
メイソンとブレイクが男たちを抱えながらギルドに移動すると、ルフィーナの声が聞こえてきた。
「貴様ら、ここが何処だか分かっているのか!これ以上騒げば、容赦はせんぞ!」
口調が違って驚いた。
「ルフィーナさん?」
「驚いたか?ルフィーナは普段は穏やかじゃが、戦闘の時はああなるんじゃ」
「ギルドマスターは優しいだけでは勤まらない。信頼、強さも必要だ」
「しかし、奴等も簡単には引かんじゃろう」
「雇い主が捕まったことを知らせましょう」
私が笑いながら言うと、メイソンとブレイクが顔を引きつらせた。
「お、おいサヨ」
「何をするつもりじゃ?」
「まぁ見ててください。あれがいいかな……『稲妻』」
――ズガァーン
一筋の稲妻が、ルフィーナたち冒険者と騒ぎを起こした男たちの間に落ちて、辺りを静寂が支配する。
「すいませ~ん。主犯を捕まえたので大人しく投降してくださ~い!」
目の前に落ちた稲妻に、固まっていた者たちが一斉に私を見て叫んだ。
「「「「「今のはお前か!?危ないだろう!!」」」」」
「え?ちゃんと狙ったから大丈夫ですよ!」
「「はっはっはっ」」
私は首を傾け、メイソンとブレイクはから笑いをしていた。
そこに、馬車が止まり男が降りてきて呆れたように言った。
「いったい何をしているんですかサヨ、メイソン、ブレイク」
「「「ルイス(さん)」」」
「まぁいいです。奴等を捕らえなさい!」
ルイスの号令で兵士が暴れた者たちを縛り上げ馬車に詰めていく。
ルイスは冒険者たちの方を向き、労いの言葉をかけた。
「皆さん、協力ありがとうございました。これから教会と話し合い、治療所の件を一刻も早く解決することを陛下に変わり約束します。その間は王宮の治癒師が変わりを勤めますので、場所はサヨが借りていた所です。その間は無料で治療します」
「ルイス様、宜しいのですか?」
「ルフィーナ、これは陛下の判断です。もちろん教会から新しい治癒師が赴任すれば、通常通りの金額を支払う事になります」
「分かりました。皆さんもいいですね」
「「「「「はい」」」」」
ルイスが今度はこちらを向いた。
「サヨはそろそろ戻りなさい。心配していますよ」
「はい、でもその前に『範囲回復』」
魔法を発動すると、冒険者たちの怪我が一気に直って驚かれた。
「ルイス様……サヨはいったい何者なんですか?」
「治癒師じゃないと言うし、さっきの雷魔法の威力も凄かったよ」
「ルフィーナ、ランカ、今は話せません。ですが、貴女たちならいつか話せる日も来るでしょう。衝撃が強いでしょうが、受け止めてくれると信じています」
「ルイス様……そんな言い方はズルいですよ」
「確かに、まぁその衝撃的な話を聞いても、サヨの本質が変わらないなら、あたしはいいさ。そうだろうギルマス」
「そうですね」
「ありがとうございます」
そんなやり取りがあったとは知らず、私は指定された馬車に乗り別れを告げて家に帰った。
夜になり、アルから念話が来たので報告しあった。
アルがチェイスたちを助けたと聞いた時は驚いたが、魔道具を回収できたようで安心した。
メイソンにアイテムリングを見せたときに言われたことを伝えると、神妙に同意したのが不思議だったが、その価値を聞いて冷や汗が出た。
(メイソンさんとブレイクさんは怒らなかったけど、ルイスさんとお父様が……あぁでもお父様は喜びそうかな)
アルと念話を終えると、やはりいろいろあり疲れていたのか、直ぐに眠気が来た。
(ふぁ~……今日は疲れたな……でも何か忘れてるような……ん~眠い……今日は夢、見ないかも……あ!『悪夢』解いてない……明日でいいか……)
私は深い眠りについたが、夜中に聞こえた叫び声で飛び起きた。
「も~何?……お父様の執務室かな?目が覚めちゃったし行ってみよう」
私はクロードの執務室に向うために部屋を出たが、同じタイミングて隣の部屋からオースティンが出てきたので、思わず見つめ合ってしまった。
「フェリーチェ、もしかしてさっき聞こえた声で目が覚めたのか?」
「はい、お父様の執務室からですよね?」
「俺が見てくるから部屋に戻れ。なんならアンジェラと一緒にいるか?」
「でも、知ってる声だったから気になって」
どうしても行きたいとオースティンにくいさがると、諦めたように許してくれた。
「しょうがないな、俺から離れるなよ」
「はい」
オースティンは、片腕に私を抱き上げ執務室に向かい歩き出した。
暫くして、外で騒ぎが起こる。
「出てきやがれ治癒師!舎弟の仇だ!」
「引きずり出せ!」
「何だ貴様ら!止めろ!」
どうやら奴等が来たようなので、それぞれ行動を開始した。
(ていうか‘仇’って……死んだ設定に変えたのかな?)
ランカたちと、メイソンとブレイクが一度外に出ると、少しして男が3人入って来た。
「小娘、一緒に来てもらおうか」
「何者ですか!」
「知る必要は無い。貴様が来なければ死人が出るぞ」
「……分かりました」
私は大人しく男たちに着いていく。
連れてこられたのは、ギルドから4ブロック先の無人の建物だった。
「私をどうするつもりですか?」
「お前には死んでもらう。我等の雇い主はお前が気にくわないそうだ」
「雇い主とは誰ですか?何も知らず殺されるのは嫌です」
「フンッ、いいだろう。雇い主は……私だ」
「え!?……貴方が?」
(うわぁ……自分で来たの?予想外!)
「私が誰か知ってるな?」
(自意識過剰のナルシスト?)
「治療所の治癒師の方ですよね」
「そうだ、せっかく治癒費を高くして儲けていたのに、貴様が無料で治療するから冒険者の患者が減ったではないか!私は金が払えなくてすがり付き、絶望する顔が見たかったのに、楽しみを邪魔しよって!」
(ベラベラとよくしゃべる……下衆が!)
「よって貴様を殺す事にした!さぁ私に絶望の顔を見せてくれ!」
治癒師の合図で2人の男が動こうとして、崩れ落ちた。
「おい!?どうした、何故倒れる?」
「クスクス……心配しないでください。ただ眠っているだけですから」
「貴様、何をした!?ただの治癒師がこんな事、できるわけがない!」
「それなんですけど、私は治癒師と名乗った覚えは無いんですよね」
「な、何?」
「貴方は、絶望した顔が好きなんですよね?だったらきっと、自分の絶望した顔も好きでしょうから、たっぷり見てください。『悪夢』」
治癒師は怯えたまま眠りに落ちた。
私が冷めた目で治癒師を見ていると、後ろから声がかかった。
「何をしたんだ?サヨ」
「『悪夢』……彼が最も恐れるものの夢を見せています。私が解除するまで目覚めることはありません」
「フンッ、いい薬じゃ」
声をかけたのは、メイソンとブレイクだった。
連れ出された私の後ろを、しっかり着いて来ていたのだ。
「さて、この人たちはどうしましょうか?」
「さっき、ルイスに通信したらこちらに向かうそうだ」
「ならギルドの方に戻りましょう。騒ぎが気になりますから」
「男らはワシらが運ぼう」
メイソンとブレイクが男たちを抱えながらギルドに移動すると、ルフィーナの声が聞こえてきた。
「貴様ら、ここが何処だか分かっているのか!これ以上騒げば、容赦はせんぞ!」
口調が違って驚いた。
「ルフィーナさん?」
「驚いたか?ルフィーナは普段は穏やかじゃが、戦闘の時はああなるんじゃ」
「ギルドマスターは優しいだけでは勤まらない。信頼、強さも必要だ」
「しかし、奴等も簡単には引かんじゃろう」
「雇い主が捕まったことを知らせましょう」
私が笑いながら言うと、メイソンとブレイクが顔を引きつらせた。
「お、おいサヨ」
「何をするつもりじゃ?」
「まぁ見ててください。あれがいいかな……『稲妻』」
――ズガァーン
一筋の稲妻が、ルフィーナたち冒険者と騒ぎを起こした男たちの間に落ちて、辺りを静寂が支配する。
「すいませ~ん。主犯を捕まえたので大人しく投降してくださ~い!」
目の前に落ちた稲妻に、固まっていた者たちが一斉に私を見て叫んだ。
「「「「「今のはお前か!?危ないだろう!!」」」」」
「え?ちゃんと狙ったから大丈夫ですよ!」
「「はっはっはっ」」
私は首を傾け、メイソンとブレイクはから笑いをしていた。
そこに、馬車が止まり男が降りてきて呆れたように言った。
「いったい何をしているんですかサヨ、メイソン、ブレイク」
「「「ルイス(さん)」」」
「まぁいいです。奴等を捕らえなさい!」
ルイスの号令で兵士が暴れた者たちを縛り上げ馬車に詰めていく。
ルイスは冒険者たちの方を向き、労いの言葉をかけた。
「皆さん、協力ありがとうございました。これから教会と話し合い、治療所の件を一刻も早く解決することを陛下に変わり約束します。その間は王宮の治癒師が変わりを勤めますので、場所はサヨが借りていた所です。その間は無料で治療します」
「ルイス様、宜しいのですか?」
「ルフィーナ、これは陛下の判断です。もちろん教会から新しい治癒師が赴任すれば、通常通りの金額を支払う事になります」
「分かりました。皆さんもいいですね」
「「「「「はい」」」」」
ルイスが今度はこちらを向いた。
「サヨはそろそろ戻りなさい。心配していますよ」
「はい、でもその前に『範囲回復』」
魔法を発動すると、冒険者たちの怪我が一気に直って驚かれた。
「ルイス様……サヨはいったい何者なんですか?」
「治癒師じゃないと言うし、さっきの雷魔法の威力も凄かったよ」
「ルフィーナ、ランカ、今は話せません。ですが、貴女たちならいつか話せる日も来るでしょう。衝撃が強いでしょうが、受け止めてくれると信じています」
「ルイス様……そんな言い方はズルいですよ」
「確かに、まぁその衝撃的な話を聞いても、サヨの本質が変わらないなら、あたしはいいさ。そうだろうギルマス」
「そうですね」
「ありがとうございます」
そんなやり取りがあったとは知らず、私は指定された馬車に乗り別れを告げて家に帰った。
夜になり、アルから念話が来たので報告しあった。
アルがチェイスたちを助けたと聞いた時は驚いたが、魔道具を回収できたようで安心した。
メイソンにアイテムリングを見せたときに言われたことを伝えると、神妙に同意したのが不思議だったが、その価値を聞いて冷や汗が出た。
(メイソンさんとブレイクさんは怒らなかったけど、ルイスさんとお父様が……あぁでもお父様は喜びそうかな)
アルと念話を終えると、やはりいろいろあり疲れていたのか、直ぐに眠気が来た。
(ふぁ~……今日は疲れたな……でも何か忘れてるような……ん~眠い……今日は夢、見ないかも……あ!『悪夢』解いてない……明日でいいか……)
私は深い眠りについたが、夜中に聞こえた叫び声で飛び起きた。
「も~何?……お父様の執務室かな?目が覚めちゃったし行ってみよう」
私はクロードの執務室に向うために部屋を出たが、同じタイミングて隣の部屋からオースティンが出てきたので、思わず見つめ合ってしまった。
「フェリーチェ、もしかしてさっき聞こえた声で目が覚めたのか?」
「はい、お父様の執務室からですよね?」
「俺が見てくるから部屋に戻れ。なんならアンジェラと一緒にいるか?」
「でも、知ってる声だったから気になって」
どうしても行きたいとオースティンにくいさがると、諦めたように許してくれた。
「しょうがないな、俺から離れるなよ」
「はい」
オースティンは、片腕に私を抱き上げ執務室に向かい歩き出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,719
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる