2 / 14
第1章 侯爵令嬢マーシア婚約破棄される
2、ここは王宮の奥深く。
しおりを挟む
ここは王宮の奥深く。
涼し気なライラックと、水仙、青いヒヤシンスが咲き乱れる庭園を、ずっと行ったところ。
小川の流れこむ、大きな池があり、そのほとりでは白亜のあずまやが、まぶしい日差しを照り返している。
このあずまやは国王陛下と王妃様がごく親しい人とのみ、屋外でのお茶や、軽食を楽しまれる場所。
マーシアは小さなころからいままで、何度ここにお招きされたかわからない。
「陛下と王妃様はまもなくいらっしゃいますので、お嬢様はしばらくお座りになってお待ちください」
紺色のワンピースに白いフリルのエプロンをつけた、十代後半ぐらいの可愛いメイドさんに勧められて、マーシアはベンチに座った。
真っ白なテーブルクロスのかかった丸いテーブルの上に、おいしそうなマーブルクッキーが置かれている。
メイドさんの白魚のような指が、ティーポットの持ち手を握る。
こぽこぽこぽという音とともに、空色のティーカップに飴色の紅茶がそそがれた。
「どうぞお気になさらずに、先にお召し上がりになっていてください、と陛下から言付かっております」
そういってメイドさんがいなくなってしまったので、気楽さから、マーシアはベンチの上のクッションによりかかる。
ドーム型のまあるい天井は瑠璃色に塗られていて、夏の星座が描かれている。
半年前に来たときは剥げかけていたのに、今はつやつやで、金色の星や星をつなぐ線や、星座の絵がくっきりと鮮やかだ。
「最近塗り直したのかしら?」
とマーシアはつぶやく。
マーシアは大理石の柱のひんやりとした感触にうっとりとする。
ウエストをひねり池を眺めると、噴水の向こうにボートが浮かんでいた。
アイボリー色のスーツに蝶ネクタイをした、幼い貴公子が、ボートに乗っている。
クラーク王子のお兄様の王太子殿下の、12歳になられるご長男だ。
王太子殿下のご長男は、ガアガアと鳴いている、アヒルの群れに向けて大きく腕を伸ばす。
アヒルのくちばしに手がくっつきそうだ。
ボートからだいぶ身を乗り出している。
「あらあぶない」
とマーシアが思わず冷や汗をかいた時だった。
ボートに設置されたテントの陰から、ぬっと50代ぐらいの中年の男性が現れ、彼を抱きとめた。
ちゃんとおつきがいたようだ。
マーシアはほっと胸をなでおろした。
「マーシア、久しぶりね。あら、素敵なワンピースね。とてもお似合いよ」
王妃様の声がして振り向くと、王妃様と国王陛下がマーシアのすぐ後ろに立っていらした。
白い肌に、真っ白な白髪で小柄で優しそうな陛下。
小麦色の肌に、とび色の髪、長身で大柄な迫力美人の王妃様。
王妃様は、もと女優だ。
身長は王妃様の方が高く、年齢も一回り違うのに、なぜかお似合いなのは、やはり国王陛下のもっていらっしゃる威厳と気品のなせるわざだろうか?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マーシアはこの国のファッションリーダーである王妃様に服装を褒められたのを嬉しく思いながらも、
「ごめんなさい。私お池に見とれておりまして、お二人がいらっしゃったのに気が付きませんでした」
と謝ると、
「なにを言っているんだ。マーシアは余にとって、家族も同然だ。家族の間でそんな気兼ねはいらないよ」
とおっしゃってくださる。
お二人と一緒に来た、数人のメイド、ボーイが手際よく、サンドウィッチ、スコーンなどをセッティングし始める。
いつもながらの楽しいお茶会となった。
最初はお天気や、昨今のニュースなどの世間話だったが、次第に話題はマーシアの婚約者であるクラーク王子のことへと移り変わる。
「もうっ、本当に陛下は、あの子を甘やかしすぎですわ」
と王妃様。
「実は余もクラークのように、30歳ぐらいまでは遊んでいたのだ。だからあまり強く言えないのだよ」
と王様。
陽が陰り、空がうっすらとオレンジ色に染まった。
マーシアはそろそろお暇することにした。
お別れする前に、お二人はマーシアにこうおっしゃってくださった。
「マーシア。本当に申し訳ないと思っているよ。
もし一年後にクラークが『料理研究家』として成功する見込みがなさそうならば、必ず連れ戻して、我が国で固い職につかせるから」
涼し気なライラックと、水仙、青いヒヤシンスが咲き乱れる庭園を、ずっと行ったところ。
小川の流れこむ、大きな池があり、そのほとりでは白亜のあずまやが、まぶしい日差しを照り返している。
このあずまやは国王陛下と王妃様がごく親しい人とのみ、屋外でのお茶や、軽食を楽しまれる場所。
マーシアは小さなころからいままで、何度ここにお招きされたかわからない。
「陛下と王妃様はまもなくいらっしゃいますので、お嬢様はしばらくお座りになってお待ちください」
紺色のワンピースに白いフリルのエプロンをつけた、十代後半ぐらいの可愛いメイドさんに勧められて、マーシアはベンチに座った。
真っ白なテーブルクロスのかかった丸いテーブルの上に、おいしそうなマーブルクッキーが置かれている。
メイドさんの白魚のような指が、ティーポットの持ち手を握る。
こぽこぽこぽという音とともに、空色のティーカップに飴色の紅茶がそそがれた。
「どうぞお気になさらずに、先にお召し上がりになっていてください、と陛下から言付かっております」
そういってメイドさんがいなくなってしまったので、気楽さから、マーシアはベンチの上のクッションによりかかる。
ドーム型のまあるい天井は瑠璃色に塗られていて、夏の星座が描かれている。
半年前に来たときは剥げかけていたのに、今はつやつやで、金色の星や星をつなぐ線や、星座の絵がくっきりと鮮やかだ。
「最近塗り直したのかしら?」
とマーシアはつぶやく。
マーシアは大理石の柱のひんやりとした感触にうっとりとする。
ウエストをひねり池を眺めると、噴水の向こうにボートが浮かんでいた。
アイボリー色のスーツに蝶ネクタイをした、幼い貴公子が、ボートに乗っている。
クラーク王子のお兄様の王太子殿下の、12歳になられるご長男だ。
王太子殿下のご長男は、ガアガアと鳴いている、アヒルの群れに向けて大きく腕を伸ばす。
アヒルのくちばしに手がくっつきそうだ。
ボートからだいぶ身を乗り出している。
「あらあぶない」
とマーシアが思わず冷や汗をかいた時だった。
ボートに設置されたテントの陰から、ぬっと50代ぐらいの中年の男性が現れ、彼を抱きとめた。
ちゃんとおつきがいたようだ。
マーシアはほっと胸をなでおろした。
「マーシア、久しぶりね。あら、素敵なワンピースね。とてもお似合いよ」
王妃様の声がして振り向くと、王妃様と国王陛下がマーシアのすぐ後ろに立っていらした。
白い肌に、真っ白な白髪で小柄で優しそうな陛下。
小麦色の肌に、とび色の髪、長身で大柄な迫力美人の王妃様。
王妃様は、もと女優だ。
身長は王妃様の方が高く、年齢も一回り違うのに、なぜかお似合いなのは、やはり国王陛下のもっていらっしゃる威厳と気品のなせるわざだろうか?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マーシアはこの国のファッションリーダーである王妃様に服装を褒められたのを嬉しく思いながらも、
「ごめんなさい。私お池に見とれておりまして、お二人がいらっしゃったのに気が付きませんでした」
と謝ると、
「なにを言っているんだ。マーシアは余にとって、家族も同然だ。家族の間でそんな気兼ねはいらないよ」
とおっしゃってくださる。
お二人と一緒に来た、数人のメイド、ボーイが手際よく、サンドウィッチ、スコーンなどをセッティングし始める。
いつもながらの楽しいお茶会となった。
最初はお天気や、昨今のニュースなどの世間話だったが、次第に話題はマーシアの婚約者であるクラーク王子のことへと移り変わる。
「もうっ、本当に陛下は、あの子を甘やかしすぎですわ」
と王妃様。
「実は余もクラークのように、30歳ぐらいまでは遊んでいたのだ。だからあまり強く言えないのだよ」
と王様。
陽が陰り、空がうっすらとオレンジ色に染まった。
マーシアはそろそろお暇することにした。
お別れする前に、お二人はマーシアにこうおっしゃってくださった。
「マーシア。本当に申し訳ないと思っているよ。
もし一年後にクラークが『料理研究家』として成功する見込みがなさそうならば、必ず連れ戻して、我が国で固い職につかせるから」
0
あなたにおすすめの小説
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる




