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第三章
(三)私の一番お気に入りのハンカチの上に上手とも下手ともいえない字で、 柳音紅と書付けがされた。
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私の一番お気に入りのハンカチの上に上手とも下手ともいえない字で、
柳音紅と書付けがされた。
「あなた! 私と同い年ぐらいね! お友達になれそうだわ! 私達、
来年もまたこの村に来るわ! 絶対に見に来てね! 約束よ!」
張り付いたような笑顔で、
皆に聞かせるための台詞のように、
よく通る高い声を響かせた。
彼女のしなやかな手が、
私の手を握った。
柔らかな手は吸い付くようであった。
長く伸ばし、
尖らせた爪が私の手に突き刺さった。
私は、
と……とても素敵でした、
とだけ声を絞り出すと、
逃げるように立ち去った。
あの旅役者達は、
あれ以来二度と来なかった。
都会で人気が出たから、
田舎周りなんかやめたらしい。
柳音紅と書付けがされた。
「あなた! 私と同い年ぐらいね! お友達になれそうだわ! 私達、
来年もまたこの村に来るわ! 絶対に見に来てね! 約束よ!」
張り付いたような笑顔で、
皆に聞かせるための台詞のように、
よく通る高い声を響かせた。
彼女のしなやかな手が、
私の手を握った。
柔らかな手は吸い付くようであった。
長く伸ばし、
尖らせた爪が私の手に突き刺さった。
私は、
と……とても素敵でした、
とだけ声を絞り出すと、
逃げるように立ち去った。
あの旅役者達は、
あれ以来二度と来なかった。
都会で人気が出たから、
田舎周りなんかやめたらしい。
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