小虎|僕を愛して身代わりになってくれた彼が、霊能者になるなんて!!

宇美

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第17章 友との帰省

友との帰省(1)

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少し空けた窓から冷たい風が入ってきた。

ベッド下の格子でしきられた収納棚とスーツケースの間で私は両手を行ったり来たりさせていた。

頭の上にはベッドヘッド側に押し上げたマットレスが傘のようにかぶさっていた。

セーターとズボンとお土産の修道院産のお茶はスーツケースにつめ終わった。

私は文庫本を数冊手に取り考え込んだ。

本は一冊で十分じゃないの?
と後ろからケンイチの声がする。

ベットに横たえて片足の膝を折り曲げている。

龍の絵の表紙のペーパーバックの洋書をめくっている。

僕のうち遠いから五冊はないともたないんだよ、
私が答えると、
行きだけで五冊?
と聞く。

行き帰りの時間をつぶすには五冊は必要と答えると、
じゃあ二,三冊持っていって読み終わったのは実家に置いてきて、
帰りは実家の近くの本屋で買えばいい、
という。

入学してから三年がたっていた。

私はまもなく高等部生になろうとしていた。

ロバートは私が入学した年の一学期が終わると留学期間が終わり、
母国へと帰っていった。

それとともに私はケンイチと同室となった。

それ以来ケンイチが卒業するまでずっと同じ部屋だった。

通常学年ごとにルームメイトが変わるのに五年間彼と同じ部屋でいられたのはありがたかった。

私が電話で父にケンイチと仲がいいことを話すと、
父から教頭先生に話してそれで便宜をはかってくれたらしい。

私はスーツケースに厳選した三冊の文庫本を詰め込むと、
蓋をしめた。

膨れ上がったスーツケースの蓋に腰掛ながらチャックをしめる。

横になっていたスーツケースを縦にした。

持ち手をだしてスーツケースを引きずり、
ドアの前におく。

帰省は夏休み以来半年振りだった。

クワイヤの大会に向けた練習が忙しく、
冬休みは帰らなかった。

代わりに家族が近くの新幹線が止まる駅まで来て、
そこのホテルでお正月を過ごしたのである。

じつは入学してからあまり帰っていない。

私が休みが近づくたび父に電話して何日に帰るか?

新幹線のチケットはどうとるか相談するのだが、
父はたびたびこう答える。

「スグル、帰るの大変だろ!
無理して帰らなくていいぞ!
代わりに母さんとさとみが会いにいくから!」

短い冬休みと春休みはこうして私は家に帰らず、
逆に母と妹が会いに来ることで済ませてしまうことが多かった。

父と二郎叔父は休みに関係なくおのおのの都合に合わせて会いに来る。

その年春休みに帰ることにしたのは、
中学から高校に上がる春休みはいつもより期間が長かったためである。

小虎はどうしているだろう?
と久しぶりに思った。

いつも彼のことを思い出すことなどなかったけど、
昨晩小虎の夢を見たのだ。

どういうわけか小虎もこの学校に転校してきて、
私と同じ部屋に住んでいる。

小虎はまるであのまま事故にあわず正常に成長したような賢そうな青年である。

半分ケンイチが混じったかのような人柄だった。

そこにみいちゃんが遊びに来る。

はじめは三人で和気藹々としていた。

「めでたいな!」と掛け声をあげながら跳ね上がる踊りの練習をしている。

次第に二人は私にはわからない外国語かなまりのきつい方言のような言葉で話し出す。

私は嫉妬にかられ小虎に話しかける。

しかし小虎はみいちゃんとの会話に夢中で私に取り合わない。

たまにゴメンゴメンとあやまるが、
すぐにみいちゃんと仲睦まじげに話し出す。

私はついに腹を立てた。

どうせ僕なんか邪魔だろう!
と私と小虎のベッドの間の間仕切りカーテンを引っ張る。

カーテンを引ききると、
カーテンだったのがいつの間にかしっかりとした壁になっている。

壁には窓まである。

窓の外には一面の初夏の青々とした茶畑が広がっている。

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