小虎|僕を愛して身代わりになってくれた彼が、霊能者になるなんて!!

宇美

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第22章 真冬の夜

真冬の夜(4)

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校門を出る。

小虎は、
突風のような速さで駆けていく。

私は彼に手を引かれてついていく。

不思議と息が苦しくない。

見慣れた街であり、
確かに足にアスファルトの感触があるが、
空を飛んでいるような心地だった。

小虎が歩みを止めた所は、
私の家の門の前だった。

小虎がオジャマシマス、
とつぶやきながら、
雪の積もった門を押して中に入った。

ポストの蓋をカパリと開けた。

中にぼんやりとした白いものが見えた。

私はひったくるようにそれを取り出した。

白いはがき大の紙には、
受験票、
田中スグル、
○○大学入学試験、
試験日2月×日と書かれており、
受験校の割り印の押された、
緊張した面持ちの私の顔写真が張られていた。

私は冷え切った受験票を握り締めた。

小虎は大きな目で私を見つめた。

安心したような笑顔だった。

もしかして小虎も自分の透視が正確かどうか気になっていて、
いま目的のものが目の前にあるのを見てほっとしたのかもしれない。

小虎はにこにこと私の肩を抱いた。

暖かい体温が伝わってきた所でやっと心が落ち着いた。

小虎にありがとうありがとうと何度も感謝した。

東京でお土産買ってくるからね、
と言って、
家で夕食を食べてから帰るように誘った。

家に戻ると父が帰ってきていて二郎叔父がまだいた。

父と二郎叔父は酷く怒っていて、
母はおろおろしていた。

叔母さん、
直人さんもいた。

私が帰ってこないので、
心配して今から警察に電話する所だったという。

私は小虎に合格祈願の呪いをしてもらいたくて、
会いに行ったんだ、
と苦しい言い訳をした。

皆が納得できないといった顔をする。

とにかく私が見つかってよかった
ということで直人さんと叔母さんは帰っていった。

母が私と小虎にとんかつをだした。

小虎は礼も言わずに獣のようにそれにむしゃぶりついた。

それを哀れがった母は、
デザートのアップルパイも出すとみな自分の分はすぐに平らげてしまい、
私のをマグロの切り身を前にした猫のようにじっと見ている。

私は笑ってもちろんこれぐらい小虎兄ちゃんにあげるよ、
と皿を差し出した。

母は私に小虎に服をあげるように言う。

私はたんすを開けてなるべく新しいものを選び紙袋に入れて、
小虎にやった。

母が「御礼」と熨斗袋に書いて、
三万円を包み小虎に渡した。

タクシーを呼び、
小虎を鬼塚の家まで送り届けるように頼んだ。

タクシーが行ってしまってから父が鬼塚に電話をした。

二郎叔父はその日は家に泊まった。

翌朝、
身支度をして襟巻きを手に家を出ようとすると、
母が幼い時のように襟巻きをしめてくれた。

では気をつけて、
くれぐれも風邪をひかないように、
と言われ、
私はうんうんと適当にうなづいた。

このほうが冷えないからと叔父にもらった、
中に獣毛の張られたショートブーツを履く。

門の前にでる。

門の前にいたのは酒屋の美登利だった。

長く伸びた髪を三つ編みにして、
紺のコートを着て赤いマフラーをしていた。

緑のタータンチェックのプリーツスカートから伸びた足と
ルーズソックスの間の素足が寒々しかった。

怒ったような目つきでこちらを睨んでいる。

おはようの挨拶もせずに美登利はこう聞いた。

「あんた東京に受験しに行くの?」

美登利は私を恐喝するような目で睨んでいる。

「う……うん」

「何処の大学?」

「上智と立教とICUだよ」

私は不思議に思った。

私と美登利は長年まともに口を利いていないのである。

近所だから帰省した時にたまに顔を合わせることはあったが
挨拶ぐらいだった。

それもこちらから社交辞令で美登利ちゃん久しぶり、
元気にしていた?
と聞いても相手には、
ふん!
煩いわね!
とそっぽをむかれるという始末だった。

「何処の学部で学科?」

「法学部××科と外国語学部○○科……
でもなんで急に?」

何でそんなことを急に聞くのかと私がたじたじと尋ねると、
美登利は

「あんたには関係ないでしょ!」
とクルリと向こうを向いて去って行った。

私は家を眺めた、
青々とした生垣の上には雪が積もっていた。

私はなぜか感慨深くなった。

受験が終われば合格にせよ、
不合格にせよ家に戻ってくるはずなのに、
もう永遠に家をでたきり戻らないような気がした。

二郎叔父の車に乗り込む。

駅までの道を走りながら窓の外を眺めていると、
子供の頃からの思い出が走馬灯のようによみがえった。

二郎叔父が言った。

「君は本当にいい子に育ったと思うよ」

昨晩小虎が家に来て、
夕食を食べていったことを二郎叔父は持ち出した。

あのような知恵遅れの幼馴染に親切にしてやる、
私の優しさに感動したとのことだった。

胸がサツマイモのてんぷらを食べ過ぎたときみたいに苦しくなった。

タクシーを降り、
列車が出る。

列車は上り方面へと走り出した。
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