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21(グレンタス王国)sideアーノルド
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僕が父上に自室謹慎を言い渡されて数日がたっている。
順当に行けばリーシェンが隣国オリフィア皇国についている頃だろう。
何故、こうなったのだろう?
父上や母上の言い方が気になる。
リーシェンを王家に嫁がせることが出来れば相手は僕でなくてもよかったと言われた。
いったい、リーシェンを王家に迎え入れることにどんな意味があると言うのだ。
確かに僕はルージュ伯爵や夫人の勧めのままにサーシャと過ごしていた。
気の進まない相手と過ごすより過ごしやすかったからだ。
僕と会っても笑みさえ浮かべないリーシェンを僕は好きではなかった。
僕との縁談を望んだのなら愛想を振り撒いても良いだろうに、とも思っていた。
違った。
リーシェンと僕の縁談を望んだのは父上と母上だった。
そして、リーシェンは僕の事など何とも思っていなかった。
話し合いの部屋から出ていく際のリーシェンの一言に僕は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
やっと私が声を絞り出すと父上と母上から呆れたように言われた。
『婚約者ですからね、お出迎えはしますでしょう』
『リーシェン嬢は婚約者として当たり前の事をしただけだ』
『妹と仲を取り持とうとする伯爵たちを窘め、リーシェン嬢と仲を深めるのが当たり前』
『お互いを知り合うことなくして何で慕われると思ったのです』
『お前が王太子であっても人の心と言うものはすぐには手に入らないぞ』
父上と母上に言われた通りだ。
僕は気が進まなかったからといってリーシェンを蔑ろにしてはいけなかった。
リーシェンは王太子の婚約者としてしっかりと務めをして果たしていた。
心地好い言葉ばかりに耳をすましてはいけなかったのだ、楽な方に行ってはいけなかったのだ。
リーシェンが、いや、誰が望んでも簡単に王太子の婚約者はなれるわけがない。
王太子の婚約者として、ひいては未来の国母として高い教養・マナー・資質などを問われ、人間性も問われる。
その全てを兼ね揃えても必ずなれるわけではない。
「僕は……何も……分かって、なかったというわけか」
父上も母上もかなりお怒りだった。
リーシェンにどんな意味があっても僕が婚約者を蔑ろにしていい筈がない。
それが婚約者を持った男の最低限の務めなのだから。
「王太子としての仕事もヴァリアスが引き継いだ。僕は用済みかな」
僕は一人だ。
謹慎を言い渡されてから食事を運ばれる以外誰とも接していない。
事実上の用済みということだろう。
今は一緒になろうと思っていたサーシャの事さえ考える事が出来ない。
ルージュ伯爵や夫人やサーシャに恨みも憎しみもない。
僕が愚かだっただけだ。
知らなかったではすまない。
サーシャと早く一緒になりたいあまりに事を急いてリーシェンの相手を決めなかったことを。
それがまさか『国の所有物』になるとは……慰み者、奴隷とも言えるとは。
僕は本当に愚か者だ。
順当に行けばリーシェンが隣国オリフィア皇国についている頃だろう。
何故、こうなったのだろう?
父上や母上の言い方が気になる。
リーシェンを王家に嫁がせることが出来れば相手は僕でなくてもよかったと言われた。
いったい、リーシェンを王家に迎え入れることにどんな意味があると言うのだ。
確かに僕はルージュ伯爵や夫人の勧めのままにサーシャと過ごしていた。
気の進まない相手と過ごすより過ごしやすかったからだ。
僕と会っても笑みさえ浮かべないリーシェンを僕は好きではなかった。
僕との縁談を望んだのなら愛想を振り撒いても良いだろうに、とも思っていた。
違った。
リーシェンと僕の縁談を望んだのは父上と母上だった。
そして、リーシェンは僕の事など何とも思っていなかった。
話し合いの部屋から出ていく際のリーシェンの一言に僕は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
やっと私が声を絞り出すと父上と母上から呆れたように言われた。
『婚約者ですからね、お出迎えはしますでしょう』
『リーシェン嬢は婚約者として当たり前の事をしただけだ』
『妹と仲を取り持とうとする伯爵たちを窘め、リーシェン嬢と仲を深めるのが当たり前』
『お互いを知り合うことなくして何で慕われると思ったのです』
『お前が王太子であっても人の心と言うものはすぐには手に入らないぞ』
父上と母上に言われた通りだ。
僕は気が進まなかったからといってリーシェンを蔑ろにしてはいけなかった。
リーシェンは王太子の婚約者としてしっかりと務めをして果たしていた。
心地好い言葉ばかりに耳をすましてはいけなかったのだ、楽な方に行ってはいけなかったのだ。
リーシェンが、いや、誰が望んでも簡単に王太子の婚約者はなれるわけがない。
王太子の婚約者として、ひいては未来の国母として高い教養・マナー・資質などを問われ、人間性も問われる。
その全てを兼ね揃えても必ずなれるわけではない。
「僕は……何も……分かって、なかったというわけか」
父上も母上もかなりお怒りだった。
リーシェンにどんな意味があっても僕が婚約者を蔑ろにしていい筈がない。
それが婚約者を持った男の最低限の務めなのだから。
「王太子としての仕事もヴァリアスが引き継いだ。僕は用済みかな」
僕は一人だ。
謹慎を言い渡されてから食事を運ばれる以外誰とも接していない。
事実上の用済みということだろう。
今は一緒になろうと思っていたサーシャの事さえ考える事が出来ない。
ルージュ伯爵や夫人やサーシャに恨みも憎しみもない。
僕が愚かだっただけだ。
知らなかったではすまない。
サーシャと早く一緒になりたいあまりに事を急いてリーシェンの相手を決めなかったことを。
それがまさか『国の所有物』になるとは……慰み者、奴隷とも言えるとは。
僕は本当に愚か者だ。
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