妹にすべてを奪われましたが、最愛の人を見つけました

桜月雪兎

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22(グレンタス王国)sideルージュ伯爵

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おかしい。
こんなのおかしい!
なぜ、ワシたちがこんな目にあわなければならない!

ワシらは現在、貴族用の牢に入れられている。
あれにいったいどんな意味があると言うんだ?
あれの事は昔から気に入らなかった。

あれは、リーシェンはワシたちの長女ということになっているが、リーシェンは我が父である先代ルージュ伯爵が連れてきた赤子だった。

突如、連れてきた赤子を父はワシらの子として育てるように命じてきた。
何の説明もなかった。

だから、ワシはその赤子を父の子だと思った。
母を失って幾年月、隠居して別荘で若い相手を見つけて、それに生ませたものだと思っていた。
父の子として貴族名鑑に載せるわけにいかないからワシらの子としたのだと思っていたのだ。
親子ほど離れた相手の分からない異母妹など可愛くもないし、認めたくもなかった。

しかし、あの国王様と王妃様の反応を見ればそれが間違いだった事は分かった。

分かってしまった。
リーシェンはワシとは血の繋がらない子だと。

赤の他人の子を何故ワシらの子としたのか?
何故あんなに王家に迎え入れようとしたのか?

分からないことばかりだ。
もしかしたら、何か重大な秘密があったのかもしれない。

「お父様!」
「サーシャ」
「何故、ルド様は助けに来てくださらないのですか?!」
「アーノルド様も自室謹慎を言い渡されている。いまだに解けていないのであろう」
「あなた、いつになったらここを出れるのですか?!」
「それを決めるのは国王様と王妃様だ」
「お父様!お父様は何故その様に落ち着いているのですか?!」

落ち着いている?
落ち着いているものか!

私だって分からないのだ!
この状況になった意味も、リーシェンの存在も、これからのワシらの命運も、何も分からないのだ。

ただ、サーシャや妻と同様に騒いでいても何の解決にもならんし、体力を削がれるだけだ。

「あいつよ!あの女が悪いのよ!!」
「ええ、ええ、あれのせいで私たちはこの様なところに入れられたのです!」
「役立たずの癖に!」
「いなくなっても腹立たしい!目障りな!!」
「………………」

うるさい。
リーシェンのせい?
リーシェンは何の反発もせずにオリフィア皇国に向かった。

今までだってサーシャや妻の所業を甘受していた。
反抗も反発もせずに。
どっちが悪いかと言われればワシらだ。

そんなのワシだって分かっていた。
ただ……ただ……リーシェンを受け入れられなかったのだ。

早くワシの側から遠ざけたかった。
その代償が現状……か。

リーシェン、すまなかった。
ワシは取り返しのつかないことをしたのだな。
こうして見つめ直さなければ分からないほど、ワシは愚かだったのだ。

お前の異母兄ではないだろうが、そう思っていた頃にちゃんとお前と向き合うべきだった。

ワシはどんな沙汰も甘受しよう。
お前がそうしてきたように。
お前自身に償うことは出来ないだろう、すまなかった。
お前をオリフィア皇国の所有物などにしてしまって。

本当にすまなかった。


=========================

R3.2.24

いつの間にか、非公開になっていたので再度上げ直しました。
内容は変わっていません。



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