小説に諸説あり

アルファベータ

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第3話 赤い橋

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◇◆◇

その橋は、思っていたよりもはるかに大きかった。

地方都市の外れ、鬱蒼とした森を割るようにして流れる川。
その上にかかる鉄橋は、全体が禍々しいほど鮮やかな朱色に塗られていた。
 ――“赤い橋”。

蓮は電車を乗り継ぎ、半ば衝動的にここまで来てしまった。
実際に目にすると、背筋がすうっと冷えていく。

橋の袂には、色褪せた花束や空き缶の供え物がいくつも置かれていた。
まるで事故現場を示すかのように。

蓮は思い切って近くにいた年配の男性に声をかけた。

「すみません、この橋って……何かあったんですか?」

男は顔をしかめ、短く答える。
「……あそこは事故が多い。若いのは近づかん方がいい」

それ以上は話す気がないようで、
男はそそくさと去ってしまった。

仕方なく蓮は橋の中央まで歩いていった。
川面を覗き込む。濁った水が重たげに流れているだけ……のはずだった。

だが、視界の端で“何か”が揺れた気がした。
 黒い影。

慌てて目を凝らす。
水面には蓮自身の顔が映っている。
だが、わずかに“口角が上がっている”ことに気づいた。

――笑っている。
自分ではない“もう一人の自分”が。

心臓が跳ね上がる。
後ずさろうとした瞬間、背後で足音が響いた。

振り返る。
誰もいない。

だが確かに、
耳の奥でささやく声が聞こえた。

――「やっと来たんだな」

風かと思った。
けれどその声は、確かに蓮の“耳元”で囁いたのだ。

スマホが震える。通知だ。
画面を開くと、
見知らぬ掲示板にスレッドが立っていた。

「佐久間蓮、赤い橋に到着」

息が止まった。
その書き込みの最後には、やはり例の文字が添えられていた。

――#諸説あり






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