イケメンも地位も望んでません!~でもお金は欲しいのでちょうどいい男を求めます~

高瀬ゆみ

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28.イケメンも地位も望んでません!

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そんなことをされても困ると拒絶したエリザベスに、ザイールはそれならと提案内容を変えてきた。

「それなら殺さず寝たきり状態に……」

「却下」

「寝たきりがダメなら廃人程度に……」

「却下っ!」

「だったら最近出回っている薬で薬物中毒にして、エルザのことは考えられないように……」

「却下っっ!!」

次から次へと出てくる恐ろしい言葉にエリザベスの否定の声は大きくなる。

「なにがいけないんだ?」

不満げな顔をするザイールに、エリザベスはきょろきょろと周囲を見回しながら言う。

「なにもかもよ! ……ザイールさん、こんな人の多いところでそんなこと口にしていいんですか!?」

「エルザ……もしかして俺のことを心配してくれてる? 嬉しい……」

キラキラと目を輝かせたストーカーを横目に見ながら、どうしようかとエリザベスが思案したときだった。

「アンタたち……店先で一体何してるんだい?」

酒場の扉が開き、騒ぎを聞きつけた女将が顔を出した。



女将はまだ営業時間前の店内にザイールを入れることに難色を示したものの、困った様子のエリザベスに折れて二人を酒場に入れてくれた。

エリザベスには麦茶を、そしてザイールにはしっかりお金を取って飲み物を差し出す。
エリザベスとザイールを交互に見ると、女将はやれやれと肩をすくめた。

「とうとう見つかっちまったのかい」

「あ、あははは……」

「女将が教えてくれなかったから、時間がかかった」

「エルザに誰にも言うなって口止めされてたんだ。だからアンタにだって言わないよ」

ザイールにすげなく答える女将に、エリザベスはただただ頭が下がる。

知らなくていいことだってあるからとエリザベスはあまり聞いていないけれど、どうもこの町には裏の仕事を請け負う組織があるらしい。
どうもザイールはそこの組織に所属しているらしく、どうもそれなりに有名らしい。

不確かな情報ばかりだけれど、酒場でしつこくエリザベスに絡んでいた男が、業を煮やしてエリザベスを庇ったザイールの顔を見て恐怖の色を浮かべていたから、それなりに信憑性はあるのだろう。
そんなザイールに臆することなく立ち向かえる女将を、エリザベスは尊敬の眼差しで見つめる。

「エルザを見つけられたから、もういい。……それよりエルザ、なにか困っていることはないか?」

「困ってること?」

「貴方はトラブルを引き寄せやすいから心配だ」

その言葉を聞いて、ザイールがエリザベスのファンだと知ったときの出来事を思い出す。

エリザベスがザイールのことを認識したのは、彼氏を取られたと勘違いした女がエリザベスに襲い掛かってきたとき。
その女の腕を掴んで捻り、酒場から追い出したのがザイールだった。

もちろんその前から酒場には頻繁に通っていたようだけれど、何もしゃべらず一人で酒を飲む彼のことをエリザベスは全く気にしていなかった。

「……うーん、特にないわ。気にしてくれてありがとう」

さすがに結婚相手が見つからずに困っているとは言えないだろう。
エリザベスの事情は知っているのかも知れないけれど、黙っているに越したことはない。

「それならよかった。これからは側にいるから、何かあったらすぐに呼んでくれ」

「……。それ、どういうこと?」

エリザベスはザイールを見つめる。

黒髪に藍色の瞳の彼は、目立たないけれど意外と整った顔をしている。
エリザベスが訝しげな目で見つめても、涼しげな顔のまま顔色一つ変えない。

「……まぁ、いいわ」

ザイールの意図は分からないけれど、きっと男爵家に引き取られる前のストーカー状態に戻ったということだろう。
周囲に迷惑をかけないのであれば、男爵家にいるとき以外は仕方ない……好きなだけ見ればいい。

「エルザ……アンタねぇ……」

ザイールを信頼しているのか、なんなのか。
警戒心が強いようでいてどこか危機感の薄いエリザベスに、女将が溜息をついた。




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