イケメンも地位も望んでません!~でもお金は欲しいのでちょうどいい男を求めます~

高瀬ゆみ

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29.イケメンも地位も望んでません!

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レイフォードから、ワルツの練習をするために彼の家に来ないかと言われ、エリザベスはどうしたものかと頭を悩ませた。

というのも、エリザベスがどこかに出かける際、必ずハートレイ男爵家の馬車を使うことになる。
平民として育ってきたエリザベスにはなかなか慣れない感覚だけれど、貴族令嬢は誘拐などの危険があるため絶対に徒歩では移動しない。
実家のある町で酒場までこっそり歩いて行っているのは、本当はいけないことだった。

学校のない休日にユナイドル侯爵家まで行く場合、御者に行き先を伝えなければならない。
エリザベスが侯爵家の名前を出した途端、すぐにハートレイ男爵に報告がいくことになるだろう。


ハートレイ男爵はエリザベスとレイフォードの取引を知らない。

エリザベスからしたら教師の家でレッスンを受けるくらいの感覚だけれど、それを知らない男爵からしてみればきっとエリザベスがレイフォードと良い仲だと思うだろう。
もしエリザベスの身を案じてくれるような親であれば、男の家に一人で行ってはいけないくらい言うんじゃないだろうか。

でも、男爵はそんなタイプの人間ではない。
むしろ、エリザベスが体を使って侯爵家の人間を落とせるのであれば、なんとしてでも落としてこいと背中を押しそうだ。
婚約者がいないというレイフォードとの仲をチラつかせれば、少なくともレイフォードが一人でいる間は、男爵がよそから勝手に縁談を持ってくるようなことはしないだろう。


――でも、もし……もしレイフォードに婚約が決まったり、恋仲の女性が現れたりしたら……

その途端、男爵は掌を翻して、レイフォードを落とせなかったエリザベスにすぐさま男をあてがうんじゃないだろうか?


エリザベスは、前の席に座るレイフォードを見る。

この、『女に不自由なんてしたことありませーん!』『黙っていても勝手に群がってきて困りますー!』とでも言い出しそうなモテる男が、いつまでも相手がいないはずがない。
そう考えると、レイフォードとの関係を男爵に知られるのはリスクがある。
むやみやたらにレイフォードとの繋がりを伝えるのではなく、何かあったときの切り札として持っておくくらいがちょうどいいんじゃないだろうか。


「……何?」

「えっ?」

レイフォードが目を細めて低い声を出す。
どうしたのかとエリザベスが首を傾げると、レイフォードの目つきはますます厳しくなった。

「キミ、今、すっごく失礼なことを考えてなかった?」

じとっとした目でこちらを見るレイフォードに、エリザベスは驚きのあまり口を開けた。

「よく分かりましたね」

「さすがに怒るよ」

頬をひくつかせるレイフォードに怒鳴られてはたまらないと、エリザベスはさっきまで考えていた懸念を伝える。
するとレイフォードは、「休日ではなく放課後の時間を使って少しずつレッスンをしよう」と言った。
レイフォードの家の馬車で侯爵家に向かい、レッスンが終わったらまた学校まで送ってくれるという。

「でも、馬車まで行く間に他の生徒に見られる可能性があるわね……」

思案するエリザベスに、それも大丈夫だとレイフォードは頷いた。

「大丈夫。僕に考えがある」

ニコリと笑ったレイフォードの顔がなんだかキラキラ輝いていて、エリザベスは胡散臭そうにそれを見つめた。




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