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白浪ノ権蔵一味の探索〜其の壱。
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白浪ノ権蔵一味が御府内に入ったとの報せがあってから一ヵ月。江戸市中にはそれらしき動きは無かった。
南北両町奉行所の与力や同心、岡っ引き、臨時職の『討伐隊』も昼夜を問わず探索しているのだが、何の手掛かりも掴めないでいた。
吉原や岡場所、出会い茶屋、旅籠、廃寺なども隈なく探索するも同じだった。
「松平殿。これは少々訝しい。白浪一味は真に御府内に入ったのでござろうか」
「さあて。しかし、八州廻りや代官所からの報せにござる故、間違いはないと存ずるが、腑に落ちぬ事も違いなし」
必死の探索を続けるも、何の手掛かりも掴めないでいるので、討伐隊も困惑している。
伝三郎は必死になって頭を働かせている。すると、フッと何かに思い当たった。
「三谷殿。これはもしやすると灯台下暗しやもしれませぬぞ」
「それは如何なる事にござるのか」
「白浪一味が御府内に潜伏しておる事は間違いなきところ。なれど、我々はとある場所を探索してござらん」
「何処にござるのか」
「町屋の商家や長屋でござるよ」
町屋の商家に長屋というその言葉に三谷七右衛門はハッとした。
「確かに町屋の商家や長屋などは探索してござらなんだ。しかし、商家を構えるのも長屋に住むのも寺の人別帳や様々な手続きが必要ではござらぬか」
「如何様左様。なれど、白浪ノ権蔵の手下は百人とも二百人とも言われておりましょう。となればその手下達が御府内に商家を構えたり長屋に住まいしておったとしても何の不思議もござるまい。この儀如何」
三谷は膝を叩いた。
「成る程。白浪一味は諸国を荒らす盗賊なれば、配下の者達に各地の盗人宿や塒を確保させておるのでござるな」
「如何様左様。とれば、町役人達を問いただせば何らかの手掛かりが掴めるやもしれませぬな」
その話しを聞いていた討伐隊の同心達が深川の船宿『川清』から飛び出していった。
その船宿は南町奉行所が密談や情報収集の場として使っているのだ。
「三谷殿。某は御奉行に報告せねばならぬのだが、御貴殿は如何なされる」
「某も御奉行に報告致さねばならぬ故、奉行所に戻らねばなりませぬ」
互いに頷き合って、それぞれの奉行所に戻っていった。
南町奉行所に戻った伝三郎はその事を御奉行に報告すると、御奉行も目から鱗とばかり膝を叩いた。
「伝三郎。良き所に気が付いたの。褒めて遣わすぞ。左様か。商家に長屋とは盲点であったわ。ふむふむ。成る程のぅ」
「今頃は北町奉行所与力三谷七右衛門殿も大久保備中守様に御報告なされておりましょう」
「うむ。されば明日にも備中守殿と協議せねばならぬな。相分かった。伝三郎、其方は白浪一味の探索を厳に致せ。盗人宿を突き止めて根斬りに致すのじゃ」
根斬りにするといのは皆殺しにする事を意味している。つまり、白浪一味を皆殺しにしろと言っているのだ。
まあ、討伐隊が結成された経緯を考えれば当たり前なのだが、改めての下知に平伏した。
その次の日から町屋の商家や長屋に探索の手が入ったのは言うまでもないだろう。
南北両町奉行所の与力や同心、岡っ引き、臨時職の『討伐隊』も昼夜を問わず探索しているのだが、何の手掛かりも掴めないでいた。
吉原や岡場所、出会い茶屋、旅籠、廃寺なども隈なく探索するも同じだった。
「松平殿。これは少々訝しい。白浪一味は真に御府内に入ったのでござろうか」
「さあて。しかし、八州廻りや代官所からの報せにござる故、間違いはないと存ずるが、腑に落ちぬ事も違いなし」
必死の探索を続けるも、何の手掛かりも掴めないでいるので、討伐隊も困惑している。
伝三郎は必死になって頭を働かせている。すると、フッと何かに思い当たった。
「三谷殿。これはもしやすると灯台下暗しやもしれませぬぞ」
「それは如何なる事にござるのか」
「白浪一味が御府内に潜伏しておる事は間違いなきところ。なれど、我々はとある場所を探索してござらん」
「何処にござるのか」
「町屋の商家や長屋でござるよ」
町屋の商家に長屋というその言葉に三谷七右衛門はハッとした。
「確かに町屋の商家や長屋などは探索してござらなんだ。しかし、商家を構えるのも長屋に住むのも寺の人別帳や様々な手続きが必要ではござらぬか」
「如何様左様。なれど、白浪ノ権蔵の手下は百人とも二百人とも言われておりましょう。となればその手下達が御府内に商家を構えたり長屋に住まいしておったとしても何の不思議もござるまい。この儀如何」
三谷は膝を叩いた。
「成る程。白浪一味は諸国を荒らす盗賊なれば、配下の者達に各地の盗人宿や塒を確保させておるのでござるな」
「如何様左様。とれば、町役人達を問いただせば何らかの手掛かりが掴めるやもしれませぬな」
その話しを聞いていた討伐隊の同心達が深川の船宿『川清』から飛び出していった。
その船宿は南町奉行所が密談や情報収集の場として使っているのだ。
「三谷殿。某は御奉行に報告せねばならぬのだが、御貴殿は如何なされる」
「某も御奉行に報告致さねばならぬ故、奉行所に戻らねばなりませぬ」
互いに頷き合って、それぞれの奉行所に戻っていった。
南町奉行所に戻った伝三郎はその事を御奉行に報告すると、御奉行も目から鱗とばかり膝を叩いた。
「伝三郎。良き所に気が付いたの。褒めて遣わすぞ。左様か。商家に長屋とは盲点であったわ。ふむふむ。成る程のぅ」
「今頃は北町奉行所与力三谷七右衛門殿も大久保備中守様に御報告なされておりましょう」
「うむ。されば明日にも備中守殿と協議せねばならぬな。相分かった。伝三郎、其方は白浪一味の探索を厳に致せ。盗人宿を突き止めて根斬りに致すのじゃ」
根斬りにするといのは皆殺しにする事を意味している。つまり、白浪一味を皆殺しにしろと言っているのだ。
まあ、討伐隊が結成された経緯を考えれば当たり前なのだが、改めての下知に平伏した。
その次の日から町屋の商家や長屋に探索の手が入ったのは言うまでもないだろう。
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