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刺客十番勝負〜後始末、其の弐。
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伝三郎を死末するように根岸ノ三左衛門に依頼したのが老中沼田伊勢守正孝が嫡男正親である事と、その訳を知った吉宗公は烈火の如くに怒っていた。
沼田伊勢守正孝が連れてこられるまでに、正親と根岸ノ三左衛門との間に交わされた覚え書きを読んだ吉宗公の怒りようは尋常ではなかった。
「あの、戯け者めが。何としてくれようか」
切歯し、唸る姿は生きる鬼その物。
暫くして沼田伊勢守正孝が連れてこられ、ご機嫌伺いをしようとしたが、
「沼田伊勢守正孝、お召しによ「こんの糞戯けがっ」っ、も、申し訳ございません」
上様に怒鳴られ、正孝は反射的に謝罪した。
「伊勢、貴様は己れの嫡男に如何なる教育をしておるのじゃっ」
「は。と申されますと、何ぞ失態がございましたか」
「失態。失態のぅ」
上様は白扇で脇差の柄をトントンと叩いている。正孝は何をそんなに怒っているのか分からないでいるが、己れの嫡男正親が何かとんでもない失態をしでかしたのだろうと冷や汗をかいている。
「伊勢。これを見よ」
上様は、一枚の書状を放り投げた。
それを受け取って中に目を通した正孝は音を立てて固まった。
まあ、無理もない。
何しろその書状は嫡男正親と根岸ノ三左衛門との間に交わされた依頼書なのだから。
「伊勢。この不始末を何とするぞ」
正孝はブルブル震えるだけで声が出ない。
それを見た上様は更に激昂した。
「伊勢。其の方、老中職を罷免の上に隠居、正親は切腹、此度の事に加担致せし者共は打首獄門、家督は正治に相続させる。これは其の方が今日まで余の忠臣であった事に対する慈悲である。異論があるか」
「ご、ございませぬ。上様の御慈悲を賜りましたる事、誠に忝う存じ上げ奉りまする」
普通なら、盛山藩は改易、家名断絶、嫡男正親と一緒に自身も切腹の沙汰が下ってもおかしくない所を免れた事に心底安堵していた。
「伊勢。今日までの奉公、大儀であった」
そう言うと、後は見たくもないとばかりの顔付きで手を振った。
後日、切腹の沙汰が下った正親がこれを拒み、逐電しようとしたので正孝の手によって打首にされたとの報せを御奉行から聞かされた伝三郎は、
「武士の情けが通じなかったか」
と溜め息をついた。
盛山藩の跡を継いだ正治は、実兄の不始末と醜態を目の当たりにし、藩士の行状を仔細に調べ上げ、失態のあった者、不届きなる者らの家禄を減俸、罪状重き者は打首、切腹、領外追放と厳しく断罪して藩の膿を徹底的に絞り切り、藩政の改革と健全なる藩運営に精を出した。
後に、
「盛山藩の中興の祖」
として高い評価を得た。
何にせよ、これで一連の騒動にやっと終止符が打たれたのであった。
沼田伊勢守正孝が連れてこられるまでに、正親と根岸ノ三左衛門との間に交わされた覚え書きを読んだ吉宗公の怒りようは尋常ではなかった。
「あの、戯け者めが。何としてくれようか」
切歯し、唸る姿は生きる鬼その物。
暫くして沼田伊勢守正孝が連れてこられ、ご機嫌伺いをしようとしたが、
「沼田伊勢守正孝、お召しによ「こんの糞戯けがっ」っ、も、申し訳ございません」
上様に怒鳴られ、正孝は反射的に謝罪した。
「伊勢、貴様は己れの嫡男に如何なる教育をしておるのじゃっ」
「は。と申されますと、何ぞ失態がございましたか」
「失態。失態のぅ」
上様は白扇で脇差の柄をトントンと叩いている。正孝は何をそんなに怒っているのか分からないでいるが、己れの嫡男正親が何かとんでもない失態をしでかしたのだろうと冷や汗をかいている。
「伊勢。これを見よ」
上様は、一枚の書状を放り投げた。
それを受け取って中に目を通した正孝は音を立てて固まった。
まあ、無理もない。
何しろその書状は嫡男正親と根岸ノ三左衛門との間に交わされた依頼書なのだから。
「伊勢。この不始末を何とするぞ」
正孝はブルブル震えるだけで声が出ない。
それを見た上様は更に激昂した。
「伊勢。其の方、老中職を罷免の上に隠居、正親は切腹、此度の事に加担致せし者共は打首獄門、家督は正治に相続させる。これは其の方が今日まで余の忠臣であった事に対する慈悲である。異論があるか」
「ご、ございませぬ。上様の御慈悲を賜りましたる事、誠に忝う存じ上げ奉りまする」
普通なら、盛山藩は改易、家名断絶、嫡男正親と一緒に自身も切腹の沙汰が下ってもおかしくない所を免れた事に心底安堵していた。
「伊勢。今日までの奉公、大儀であった」
そう言うと、後は見たくもないとばかりの顔付きで手を振った。
後日、切腹の沙汰が下った正親がこれを拒み、逐電しようとしたので正孝の手によって打首にされたとの報せを御奉行から聞かされた伝三郎は、
「武士の情けが通じなかったか」
と溜め息をついた。
盛山藩の跡を継いだ正治は、実兄の不始末と醜態を目の当たりにし、藩士の行状を仔細に調べ上げ、失態のあった者、不届きなる者らの家禄を減俸、罪状重き者は打首、切腹、領外追放と厳しく断罪して藩の膿を徹底的に絞り切り、藩政の改革と健全なる藩運営に精を出した。
後に、
「盛山藩の中興の祖」
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何にせよ、これで一連の騒動にやっと終止符が打たれたのであった。
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