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小手斬り左門次の探索〜其の陸。
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伝三郎は、薩摩藩御番組番士村井作兵衛と琉球人金城周信は薩摩藩下屋敷用人伊那部権兵衛殿が何とか片付けると言ったのを信じてしまっていた自分の浅はかさに呆れていた。
「やはり一筋縄ではいかなかったか」
嘆息する伝三郎の目の前には襷掛けに鉢金を巻き、裁っ着け袴に鎖脛当を着けた覆面武士と琉球の服だろうと思われる男の二人組が刀剣を構えていた。
「薩摩藩御番組番士村井作兵衛、琉球人金城周信だな」
村井作兵衛の肩がビクッと震えた。
「おマえが松たいラか」
琉球人金城周信の日本語は片言だが、聞き取れない事はなかった。
「金城周信。何の恨みがあって俺を狙うんだ。それとも金で雇われただけか」
「おまエヲ殺せバ、ひゃクリャう貰エル」
「百両か。随分と足元を見られたな」
「とうイう意味ダ」
「今、この江戸で俺への刺客を雇うんなら、少なくても五百両は出さないと誰一人として引き受け手がいないからさ」
金城周信はクワっと目を見開いて、村井作兵衛を睨んだ。
「おマエ、騙しタな!」
「だ、黙れ。この下郎が。貴様の望みを叶えてやったのだから、今度は俺の望みを叶える番だぞ!」
言い争う二人をじっと見ていた伝三郎は、村井作兵衛の言葉に不審を抱いた。
金城周信の「望み」とは何なのだろう。
「もう、イイ!俺ハ左門ジ!」
「な、何だと!」
伝三郎は、金城周信の名乗りに驚き狼狽えた。
小手斬り左門次の正体が琉球人金城周信だったとはさすがの伝三郎も意外というか夢想だにできなかった。
小手に襲いくる刃を左に躱し、金城の剣を叩き落とそうとしたが、金城の剣が消えた。が、驚く暇はない。金城が懐から短剣を抜いて突いてきたからだ。
「く!」
伝三郎は刀を捨てて、脇差の柄でその短剣の刃を受け止めた。
すると、金城の拳が顎を襲ってきたので、仰け反るように飛び退いた。
さすがは琉球人と言ったところか。
剣術と体術の組み合わせはかなり厄介だ。
脇差を逆手に構えると、短剣が飛んできた。一本や二本ではない。
それを弾くか躱すかしなければ体の彼方此方に突き刺さるが、脇差で弾くと刃毀れするし最悪折れたりするので、脇差ではなく、鉄扇で弾いた。
「金城周信。貴様の首級頂戴致す」
鉄扇を金城の顔に向けて擲ち、一気に間合いを詰めて刃を振るった。
さすがの金城周信も鉄扇と脇差の二連攻めは予想していなかっただろう。鉄扇を躱しはしたが、脇差が心の臓を深々と刺し貫くのを躱す事は出来なかった。
例え超人、達人であっても、心の臓を刺し貫かれては即死は免れない。
「ミ、ミグトゥ」
死に際に口にした琉球言葉。
おそらく「御見事」とでも言ったのだろうと見当をつけた伝三郎は、金城周信の遺体をそっと横たえ、良き敵の冥福を祈って合掌した。
それにつけても憎いのは村井作兵衛だ。
一騎討ちの邪魔をしなかった事は認めてやらないでもないが、金城周信を使っての辻斬り行為は許すわけには断じていかない。
脇差の切先を向ける。
「村井作兵衛。覚悟は出来てるだろうな」
「貴様、俺が誰だか分かってるのか!天下の薩摩藩士だぞ!」
薩摩藩士にしては訛りがない。
勤番者ではなく、定府者か。
「薩摩隼人がこの様な犬畜生にも劣る下衆下郎の如き真似をするものか。貴様は薩摩藩士を騙る不逞浪人であろう。薩摩藩に成り代わって討ち取ってくれるわ!」
「お、己れ!」
腐っても薬丸示現流の目録伝皆。斬り下ろすその太刀風は空をも斬り裂いていたが、それは文字通り空を斬った。
必殺の一の太刀が躱された事に驚愕する村井作兵衛の首が、驚きの顔をしたまま地に落ちた。
「旦那。脇差で首を刎ねるなんて相変わらずの腕前だねぇ」
お静が部屋の中から短筒を片手に感嘆の声をあげた。
お静は伝三郎と金城周信との一騎討ちを村井作兵衛が邪魔だてした時は短筒で撃ち殺そうとしていたのだが出番は無かった。
「旦那。これからが大変だねぇ。薩摩と戦さになるかもしれないねぇ」
外様大名とは言え、関ヶ原の戦さで権現様をして「手出し無用」とまで言わしめた程で、八代目となった将軍家でさえ扱いには手を焼いているのだ。そんな薩摩藩の者を斬ったとあれば無事ではいられないかもしれない。
「こうなりゃ仕方ねえさ。御奉行と伊那部殿に任せるよ」
伝三郎は完全に開き直った感じで、御奉行に丸投げすると言い切った。
「やはり一筋縄ではいかなかったか」
嘆息する伝三郎の目の前には襷掛けに鉢金を巻き、裁っ着け袴に鎖脛当を着けた覆面武士と琉球の服だろうと思われる男の二人組が刀剣を構えていた。
「薩摩藩御番組番士村井作兵衛、琉球人金城周信だな」
村井作兵衛の肩がビクッと震えた。
「おマえが松たいラか」
琉球人金城周信の日本語は片言だが、聞き取れない事はなかった。
「金城周信。何の恨みがあって俺を狙うんだ。それとも金で雇われただけか」
「おまエヲ殺せバ、ひゃクリャう貰エル」
「百両か。随分と足元を見られたな」
「とうイう意味ダ」
「今、この江戸で俺への刺客を雇うんなら、少なくても五百両は出さないと誰一人として引き受け手がいないからさ」
金城周信はクワっと目を見開いて、村井作兵衛を睨んだ。
「おマエ、騙しタな!」
「だ、黙れ。この下郎が。貴様の望みを叶えてやったのだから、今度は俺の望みを叶える番だぞ!」
言い争う二人をじっと見ていた伝三郎は、村井作兵衛の言葉に不審を抱いた。
金城周信の「望み」とは何なのだろう。
「もう、イイ!俺ハ左門ジ!」
「な、何だと!」
伝三郎は、金城周信の名乗りに驚き狼狽えた。
小手斬り左門次の正体が琉球人金城周信だったとはさすがの伝三郎も意外というか夢想だにできなかった。
小手に襲いくる刃を左に躱し、金城の剣を叩き落とそうとしたが、金城の剣が消えた。が、驚く暇はない。金城が懐から短剣を抜いて突いてきたからだ。
「く!」
伝三郎は刀を捨てて、脇差の柄でその短剣の刃を受け止めた。
すると、金城の拳が顎を襲ってきたので、仰け反るように飛び退いた。
さすがは琉球人と言ったところか。
剣術と体術の組み合わせはかなり厄介だ。
脇差を逆手に構えると、短剣が飛んできた。一本や二本ではない。
それを弾くか躱すかしなければ体の彼方此方に突き刺さるが、脇差で弾くと刃毀れするし最悪折れたりするので、脇差ではなく、鉄扇で弾いた。
「金城周信。貴様の首級頂戴致す」
鉄扇を金城の顔に向けて擲ち、一気に間合いを詰めて刃を振るった。
さすがの金城周信も鉄扇と脇差の二連攻めは予想していなかっただろう。鉄扇を躱しはしたが、脇差が心の臓を深々と刺し貫くのを躱す事は出来なかった。
例え超人、達人であっても、心の臓を刺し貫かれては即死は免れない。
「ミ、ミグトゥ」
死に際に口にした琉球言葉。
おそらく「御見事」とでも言ったのだろうと見当をつけた伝三郎は、金城周信の遺体をそっと横たえ、良き敵の冥福を祈って合掌した。
それにつけても憎いのは村井作兵衛だ。
一騎討ちの邪魔をしなかった事は認めてやらないでもないが、金城周信を使っての辻斬り行為は許すわけには断じていかない。
脇差の切先を向ける。
「村井作兵衛。覚悟は出来てるだろうな」
「貴様、俺が誰だか分かってるのか!天下の薩摩藩士だぞ!」
薩摩藩士にしては訛りがない。
勤番者ではなく、定府者か。
「薩摩隼人がこの様な犬畜生にも劣る下衆下郎の如き真似をするものか。貴様は薩摩藩士を騙る不逞浪人であろう。薩摩藩に成り代わって討ち取ってくれるわ!」
「お、己れ!」
腐っても薬丸示現流の目録伝皆。斬り下ろすその太刀風は空をも斬り裂いていたが、それは文字通り空を斬った。
必殺の一の太刀が躱された事に驚愕する村井作兵衛の首が、驚きの顔をしたまま地に落ちた。
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お静が部屋の中から短筒を片手に感嘆の声をあげた。
お静は伝三郎と金城周信との一騎討ちを村井作兵衛が邪魔だてした時は短筒で撃ち殺そうとしていたのだが出番は無かった。
「旦那。これからが大変だねぇ。薩摩と戦さになるかもしれないねぇ」
外様大名とは言え、関ヶ原の戦さで権現様をして「手出し無用」とまで言わしめた程で、八代目となった将軍家でさえ扱いには手を焼いているのだ。そんな薩摩藩の者を斬ったとあれば無事ではいられないかもしれない。
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