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第10章 そこのけそこのけ男の娘が通る

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「全く、最初からこうして欲しいものです」

 俺はヨハンと書類を仕分けていた。
 机では先程までだらけていたパパの姿などなく、真剣な目をして書類に目を通し、サインをするパパの姿があった。
 やっぱりできる男は格好良いのよな……とまぁ……それはそれ、これはこれってことで近くにいたヨハンをじっと無言の抗議をするために見つめてみた──が反応しなかった。
 くそぉ、できる執事モードに入ったヨハンは苦手だ……。
 空気を察しなくていいと思ったら絶対に声かけるまでなにもしてくれない。

「ねぇ? 僕、勝手の良い道具になってない? とりあえず確認なんだけど、僕に人権ってものはあるの?」
「ルル様。申し訳ありませんがこの国はすでにルル様──いえ、ルカ様を中心に動いてますからそれを理解すると共に色んな物を諦めてください」

 またまたぁ、ヨハンったら演技も冗談も上手なんだから~……。


   ◆


「パパ~、この子はね? 西の森で手に入れた果実の木だよ~」
「そうなんだね。いやぁ、ルルは本当に可愛いなぁ~……」

 パパはあれからすごい早さで仕事を終え、昼御飯までの空き時間は俺と中庭で散歩となった。
 ヨハンがパパのストレス発散と俺を可愛がりたいメーターを満タンにさせないと明日には同じことになりそうだと昼食までお休みにされた。
 なので俺はパパと中庭にやって来ている。
 運動不足ぎみなため、少しでも歩きたいのでパパの腕──嘘です。ほぼ手首に抱きついて歩いている。
 近くには国王を守るためのSP的な護衛の騎士が複数名居ますがこの国王、誰よりも強いので俺のための配置と思われる。

「この子はゼツさんにね? 頼んだやつだよ。僕が欲しかった品種のオリーブなの」
「そうなんだね」
「この品種はね、実を搾ると油がよくとれて質も良いんだよ? あとこっちの子は大きめの実がなるタイプで、実がなったら酢漬けのピクルスにしたりする予定なの」

 キャッキャウフフとはしゃぎながらもパパにあれこれ説明をしながら歩いてるとかなり時間がたち、騎士の報告でお昼の時間と知らされた。

「もうお昼の時間なんだ……。温室も案内したかったのに……」
「それは今度のお楽しみにとっておこうかな? さぁ、ルル? ご飯を食べに行こうね」

 いつものようにお子様抱っこをされるとパパは出入り口へと歩き出した。
 騎士さん達にバイバイと手を振って別れると近くにいたヨハンとローラにパパの着ていたコートと俺の着ていたお子様らしいケープコートを渡していた。
 目がふとかち合ったローラにグッジョブと褒めるようににこやかに頷かれ、少し嬉しくなったのは内緒だ。
 パパに抱っこされたまま食堂にやって来ると実は俺たちが最後だったみたいでパパに椅子に下ろされたのだが、兄と姉がガタガタっと音を立てて立ち上がった。




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