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まさかの再会

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「先が長い……!」
「これは予想外でしたね……」
「……」
「楽しみだね」
「富士山よりは絶対に高いよな」

 目の前には富士山より高い山がそびえ立っている。もしかしたら、五千メートルを超える山かもしれない。
 この山を越えるか、迂回するか。どっちにしろ時間はかかる。
 この山は高い以外にも、吹雪いているようだから、近づきたくない。寒いのは苦手なんだよね。
 使える魔法に火属性入れといてよかった……。火属性で暖房代わりにファイアボールを浮かばせておけばいいんだからね。
 他にも土属性で風を防ぐっていうのもあるね。

「どうする?登っても周りを進んでも距離はそんなに変わらないと思うんだけど……」
「迂回するべきですよ」

 佐川がはっきりと言った。

「だって、この山って雪山でしょう?いくら身体能力が上がっていても、遭難しちゃいますよ」
「佐川の言うとおりだな」

 正しい判断だと思うよ。自分たちがステータスが高くてもただの人間だってことを忘れていないようだね。
 そろそろ己の力を過信しはじめてもおかしくないと思ったんですけどね。

 このパーティーが大丈夫でも他のところはまだ安心できないか……。すべてのパーティーに佐川みたいな人間かいるわけじゃないし、いずれ佐川だって過信し始めるかもだし。

「結城はどう思う?」
「オレ?」
「書庫にこもってたから、詳しいのかなーって」

 書庫こもってたのは、別件についてだったんだけど、それくらいの知識はある。
 
 雪山に限らず、遭難するかもしれないという可能性は十分にある。しかし、それはまだ気にすることではない。
 山を見つけて、どうするか判断の材料になるのは、その山に生息する魔物の強さだ。
 魔物が強ければ、遭難するかもしれないという可能性が上がる。
 自分たちがその魔物より圧倒的に強ければ山を超えてもいいが、自分たちが生息する魔物と同等の強さなら迂回するほうがいいだろう。
 
「少しなら……。山に生息する魔物のレベルがわからないから、迂回した方がいいと思う」 
「そっか、佐川と結城がそう言うなら迂回しよう」

 佐川とオレが言うならって、自分たちでもしっかりと判断してくださいよ……。
 山は迂回して進むことになったけど、一人でだったら挑戦してみたいな。ドラゴンとかがいたらいいな。ドラゴンの鱗はいい材料なんだよね。

 迂回して進んでいると、魔物に襲われている馬車がいた。商人の馬車かな。そんなに高価そうじゃないし。
 
「助けよう?」
「そ、そうですね……!」
「いくぞ!」

 馬車を襲っているのは……まさかのドラゴン。まだ、幼竜みたいだから……はぐれドラゴン?
 しかも、それが二体。成竜がいないから意思も通じないだろうしな……。
 上位の魔物になると意志の疎通ができるほど知能が高いものもいるから、どうかなと思ったんだけど、幼竜じゃねぇ……。

「ファイアボール」
「てやっ!」

 ドラゴンの丸焼きができましたー!なんて冗談はおいといて……。
 ファイアボールと平井の斬撃が幼竜を襲う。幼竜は苦しそうな声を上げている。
  
「あなた達は……?」
「ありがとうございます……!」

 馬車に乗っていたのは男と女だったが商人ではなかった。人でもなかった。
 馬車に乗っていたのは、魔族。しかも……

「まさかの……」
「あら……」

 オレが気づいたようにあっちも気づいてしまった。さぁ、困ったな。
 この女性は……。

「可愛いお姿になられて……うふふ」

 出会えたことは嬉しいんだけど……嬉しすぎてたまらないんだけど……。

「……怪我はない?」

 その喜びを表に出すことはこいつらの手前できない。

「ええ、もちろん」

 花のようなほほ笑みでそう言われたらこの世のすべての男が惚れてしまうんじゃないか?

 それはおいといて、全くなんでここにいるんだか……。まず、なんで人間の領地に……。次になんで魔族の中でかなり偉いのに、こんなとこに護衛もつけずにいるんだよ。
 いくら強いからって……。

「あぁ……」
「うげ……」

 こっちにも気づかれちゃったよ。ほんとにさ、おかしくない?オレが逆らうことができないような力を持つたった二人のうち二人がここにいるんだけど……。
 もう、嫌だ……。

「結城くん、幼竜追い払いましたよー!」
「あ、あぁ……。うん……」
「可愛いお嬢さんで……」

 後ろからなんかものすごい何かが……ひしひしと伝わってくる。

「あ、そんな……。いえ……」

 佐川が赤面してしまったよ。ものすごい美人様だもんな。

「あ、私は佐川アミといいます」
「サガワ=アミ?サガワなんて不思議な名前ね」
「アミが名前なんですよ」

 佐川が間違いを笑って訂正する。
 この世界は地球のヨーロッパとかみたいに姓名が日本と逆なんだよね。だから名乗るときは名前を先に言わないとなんだよ。

「アミさんね。私は、そうね……フィーとでも呼んでくれる?」
「フィーさんですか」
「我はガイと呼んでくれ」

 フィーにガイって……。本名隠せよ……。
 フィーはフィーリア。ガイはガイオス。フィーリアはアストールの妻で、ガイオスはアストールの前の魔王だよ。
 
「そちらの方は……?」

 フィーリアはわかっててやってるし。ガイオスも止めようとしないし。

「マオ、だよ」
「偽名……?」
「今の本名だよ……」
「可愛い名前ね」
「マオだな。忘れないようにしないとな……」

 ガイオスは間違えてアストールって呼ぶのかもしれないっていうことかな?
 
「それより、なんでこんなところに?」
「孫探しよ」
「孫って……お若いですよね?」

 フィーリアの見た目は二十代。ハリのある肌に、艶のあるオレンジ色の髪。
 三千五百歳以上には見えないよな。年齢詐称はいけないと思いますよ。
 いつまでも若いと言うのはオレとしてはとても嬉しいことなんだけどね。

「孫みたいな子を探しているのさ。行方不明になっていてね」

 リルのことだ。孫みたいなって……。ガイオスがリルのことを可愛がってるのはガイオスの性格上当たり前のことだけど。

「行方不明に?可哀想に……」
「クラディアったらあの子を悲しませるようなことをして……」
「……」

 クラディアがリルを悲しませている……?ミーティアは死んでしまった。クラディアとリルは二人だけの……。
 リルが気づかぬうちにレステリアにいたのと関係があるのかな。

「前途多難だなぁ……」


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