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1話
しおりを挟むすみれ色のドレスが好きだった。
だから子どもの頃からいつもその色の服を着ていた。
日常で着ているものもすみれ色多め。特別な日のために仕立ててもらうドレスもどこかにすみれ色が使われていることを条件として。アクセサリーだとか、日頃使うアイテムだとか、そういったものも絶対ではないけれどすみれ色のものを多めに所持していた。また、店なんかですみれ色の商品を発見した際には、積極的に購入するようにしていた。
そんなこともあってか、私はいつしか『すみれ令嬢』と呼ばれるようになっていたのだが――まぁそれはおいておくとして。
婚約者エリフレッドはそんな私の好みを嫌っていた。
彼は婚約して間もない頃から「お前のセンスは壊滅的だ」「お前は女として終わっている、ババアか」などとたびたび失礼なことを言ってきていた。
――そして十九の春、ついに。
「お前との婚約だが、破棄とすることにした」
エリフレッドは冷ややかに宣言する。
「え……」
思わず漏れる声。
それがエリフレッドを苛立たせてしまったようで。
「ババ臭い女と思っていたが、まさか、耳まで遠いのか? そこまでババアなのか? いや、お前、もしかして本当に……婆さんなのか?」
凄まじい鬼のような形相で、驚くべきスピードで、そんな問いばかりが並んだ文章を紡がれてしまう。
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