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2話
しおりを挟む「いえ違いますけど……」
「なら聞こえたはずだろう!」
エリフレッドは攻撃的になっている。
「いえ、ですから、あまりにも急だなと」
「やっぱり! 聞こえてるんじゃねぇか! ふざけんな!」
違う、そうじゃない。そう言いたいけれど。でもきっと無駄なのだろう。感情の波、そのうねりに、彼は既に巻き込まれてしまっている。そのような状態ではきっともう私の声なんて届かないのだろう。ここでこちらが説明したとしても、多分、彼はまたさらに怒るだけ。きっと、まともに聞くことさえしてくれないだろう。
「分かりました。婚約破棄、受け入れます」
「さすがに諦めたか」
「エリフレッドさん、今までありがとうございました。では、これにて。……さようなら」
こうして私は彼の前から去った。
すみれ色のワンピースの裾を風に揺らしながら。
◆
あの後、婚約破棄に関する一連の話を聞いて激怒した伯父によって、エリフレッドは毒殺された。
というのも、元々政治家であった伯父にはそういう仕事を請け負ってくれる知り合いが多くいるのだ――伯父は多分そういった知り合いに頼んでエリフレッドを毒殺させたのだと思う。
あれほどまでに威張り散らしていたエリフレッドだが、その最期は呆気ないものであった。
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