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『さらりと婚約破棄されまして。~彼には明るい未来はなかったようです~』
「エリーゼ、君とはもうこれ以上付き合ってはゆけない……よって! 婚約は破棄とする! 君との関係はここまでだ。……なぜ? 聞きたそうな顔だな、なら教えてやろう。君は無能で華もない! だからもう終わりとするのだ!」
私エリーゼは婚約者である彼ミードウーからそんなことを告げられてしまった。
それはあまりにも突然の出来事で。
さすがに即座には言葉を返すことはできなかった。
こうして私は婚約破棄されてしまった、のだけど……。
「エリーゼさま! 実はずっと好きでした、僕と付き合ってください!」
「え……?」
「以前お見かけして惚れてからずっと気になっておりまして、やがてそれは深まり、ついに愛してしまったのです!」
婚約破棄された次の日、私は第二王子ローリングドから愛を告白されて。
そうして私の人生はまた動き始める。
……一方私を捨てたミードウーはというと、あの後間もなく散歩中に転倒して後頭部を打ってしまい数時間後に亡くなったそうだ。
恐らく私を捨てて次へ行こうとしたのだろうが、ミードウーには他の女性と出会ったり幸せを掴んだりといった未来はなかったようだ。
◆終わり◆
『にやけながら言葉を紡いでくるような人は大嫌いです。……あの世へ逝った? そうですか、ざまぁです。』
「エリーミナ、君とはここまでとする」
ある夏の日。
婚約者である彼ウィクはそんなことを言ってきた。
「君はとにかくパッとしない。それが婚約破棄の一番の理由だ。わかるな?」
「……分かりません、いきなり過ぎて」
「はぁ~? 馬鹿だなエリーミナは。ま、つまり、俺はもう君のことを嫌いになったってことだよ」
ウィクはヘラヘラしながらそんなことを言ってくる。
常に真剣に生きろ、なんて言うつもりはないけれど、こんな時にまでにやけながら言葉を紡がれると非常に不快な気分になってくる。
そんなふざけた人に真剣に向き合おうとはどうしても思えない。
「ま、そういうことだからさ。さっさと俺の前から消えてくれよな。な? 分かるか? 言語理解できてるか?」
こんなにも不愉快にしてくる人とは共に生きてなどゆけない。
だから全部おしまいにしてしまおう。
このまま彼といてもこれ以上幸せになんてなれはしない、それは明らかなことだから。
「分かりました。……では、これにて失礼いたします。さようなら」
◆
婚約破棄された一週間後、私はなぜかたまたま旅行に来ていた他国の王子から想いを告げられ、そこから色々あったけれどやがて彼と結ばれた。
これからは王子の妻として生きてゆく。
苦労はあるだろう。
でもきっと幸福もあるはず。
少なくとも……ウィクと一緒にいるよりはましだろう、希望は確かにある。
一方ウィクはというと、婚約破棄宣言してきたあの日の翌日にいつもと同じように散歩していたところ急に意識を喪失して倒れそのままあの世へ逝ってしまった。
◆終わり◆
『婚約者の母親が婚約破棄を告げてきました。面倒臭いので逆らわずに去っておきます。』
ある日のこと、婚約者ルッセルの母親に呼び出された。
「貴女ねぇ、いつまでルッセルの傍にいるつもり?」
彼女の表情は冷ややか。
そこに優しさなんてものは欠片ほども存在しない。
「婚約者だからって堂々といつまでも居座ってるんじゃないわよ」
「ええっ……」
「当たり前でしょ? 貴女はルッセルには相応しくない。このわたしが手塩にかけて育てたルッセルと貴女みたいな平凡な女がつり合っていると本気で思っていて? だとしたら馬鹿の極みじゃないの」
これまであまり気にしてはこなかったけれど、どうやら彼女は私のことを良く思っていないようだ。
「さっさと消えなさいよ、低級女」
どうしてそんな暴言を平然と吐けるのだろう……。
まったくもって意味が分からない……。
「ま、いいわ。とにかく、ルッセルと貴女の婚約は破棄ね。オーケイ? 確かに伝えたわよ」
「待ってください、本当にそうすべきなのですか?」
「……はぁ?」
「ルッセルさんもそれを受け入れていらっしゃるのですか? もしそうでないなら、それは、お義母さまの勝手な行動です。そのようなことは決して許されません」
するとルッセルの母親は激怒。
「貴女ねええええぇぇぇぇ!! いい加減になさいよ!? このわたしが言えばそれがすべてなの! 誰も口ごたえなんてできないのよ! だってこの家で一番偉いのはわたしなんだもの! それをなんてこと言い出すのよおおおおぉぉぉぉぉッ!? ルッセルがわたしの意見に反対する? そんなわけないじゃないのおおおぉぉぉぉぉぉ!! 可愛い可愛い賢い息子よ!? あの子がわたしに口ごたえ!? ふざけないでちょうだい! 侮辱しないでちょうだい! そんなことを言うなんて! 貴女、あまりにも無礼、無礼よぉぉぉぉぉぉッ!!」
とんでもない勢いで言葉を紡いでこられてしまった。
意味不明だ……。
もう、とにかく、理解不能過ぎる……。
◆
翌日、ルッセルの母親はルッセルに殴り殺された。
何でもルッセルは彼女が私との婚約を勝手に破棄したことに大層怒ったそうで――その感情のうねりに飲まれるようにそういうところにまで至ってしまったようなのだ。
ルッセルは彼女が思っていたほど彼女に忠実ではなかった様子。
少し安心した部分もある。
いい年して言いなりの息子ではないと分かったから、だろうか。
ただ、ルッセルも、暴行によって逮捕されてしまった。
可哀想に……。
面倒な母親を持っていたせいで……。
だが、まぁ、暴力は罪だ。
そういう意味では不運もまた人生であり仕方のない部分もあるのだろう。
◆
あれから三年半が経った。
私は穏やかな家庭を築き、夫と楽しく暮らしている。
先日生まれたばかりの赤ちゃんもいる。それゆえ苦労も多い。たびたび起きなくてはならないところなんて特に大変だ。
ただ、私の場合は夫が育児に協力してくれるので、そういう意味ではかなり恵まれているほうだと思う。
おかげである程度睡眠もとれている。
◆終わり◆
「エリーゼ、君とはもうこれ以上付き合ってはゆけない……よって! 婚約は破棄とする! 君との関係はここまでだ。……なぜ? 聞きたそうな顔だな、なら教えてやろう。君は無能で華もない! だからもう終わりとするのだ!」
私エリーゼは婚約者である彼ミードウーからそんなことを告げられてしまった。
それはあまりにも突然の出来事で。
さすがに即座には言葉を返すことはできなかった。
こうして私は婚約破棄されてしまった、のだけど……。
「エリーゼさま! 実はずっと好きでした、僕と付き合ってください!」
「え……?」
「以前お見かけして惚れてからずっと気になっておりまして、やがてそれは深まり、ついに愛してしまったのです!」
婚約破棄された次の日、私は第二王子ローリングドから愛を告白されて。
そうして私の人生はまた動き始める。
……一方私を捨てたミードウーはというと、あの後間もなく散歩中に転倒して後頭部を打ってしまい数時間後に亡くなったそうだ。
恐らく私を捨てて次へ行こうとしたのだろうが、ミードウーには他の女性と出会ったり幸せを掴んだりといった未来はなかったようだ。
◆終わり◆
『にやけながら言葉を紡いでくるような人は大嫌いです。……あの世へ逝った? そうですか、ざまぁです。』
「エリーミナ、君とはここまでとする」
ある夏の日。
婚約者である彼ウィクはそんなことを言ってきた。
「君はとにかくパッとしない。それが婚約破棄の一番の理由だ。わかるな?」
「……分かりません、いきなり過ぎて」
「はぁ~? 馬鹿だなエリーミナは。ま、つまり、俺はもう君のことを嫌いになったってことだよ」
ウィクはヘラヘラしながらそんなことを言ってくる。
常に真剣に生きろ、なんて言うつもりはないけれど、こんな時にまでにやけながら言葉を紡がれると非常に不快な気分になってくる。
そんなふざけた人に真剣に向き合おうとはどうしても思えない。
「ま、そういうことだからさ。さっさと俺の前から消えてくれよな。な? 分かるか? 言語理解できてるか?」
こんなにも不愉快にしてくる人とは共に生きてなどゆけない。
だから全部おしまいにしてしまおう。
このまま彼といてもこれ以上幸せになんてなれはしない、それは明らかなことだから。
「分かりました。……では、これにて失礼いたします。さようなら」
◆
婚約破棄された一週間後、私はなぜかたまたま旅行に来ていた他国の王子から想いを告げられ、そこから色々あったけれどやがて彼と結ばれた。
これからは王子の妻として生きてゆく。
苦労はあるだろう。
でもきっと幸福もあるはず。
少なくとも……ウィクと一緒にいるよりはましだろう、希望は確かにある。
一方ウィクはというと、婚約破棄宣言してきたあの日の翌日にいつもと同じように散歩していたところ急に意識を喪失して倒れそのままあの世へ逝ってしまった。
◆終わり◆
『婚約者の母親が婚約破棄を告げてきました。面倒臭いので逆らわずに去っておきます。』
ある日のこと、婚約者ルッセルの母親に呼び出された。
「貴女ねぇ、いつまでルッセルの傍にいるつもり?」
彼女の表情は冷ややか。
そこに優しさなんてものは欠片ほども存在しない。
「婚約者だからって堂々といつまでも居座ってるんじゃないわよ」
「ええっ……」
「当たり前でしょ? 貴女はルッセルには相応しくない。このわたしが手塩にかけて育てたルッセルと貴女みたいな平凡な女がつり合っていると本気で思っていて? だとしたら馬鹿の極みじゃないの」
これまであまり気にしてはこなかったけれど、どうやら彼女は私のことを良く思っていないようだ。
「さっさと消えなさいよ、低級女」
どうしてそんな暴言を平然と吐けるのだろう……。
まったくもって意味が分からない……。
「ま、いいわ。とにかく、ルッセルと貴女の婚約は破棄ね。オーケイ? 確かに伝えたわよ」
「待ってください、本当にそうすべきなのですか?」
「……はぁ?」
「ルッセルさんもそれを受け入れていらっしゃるのですか? もしそうでないなら、それは、お義母さまの勝手な行動です。そのようなことは決して許されません」
するとルッセルの母親は激怒。
「貴女ねええええぇぇぇぇ!! いい加減になさいよ!? このわたしが言えばそれがすべてなの! 誰も口ごたえなんてできないのよ! だってこの家で一番偉いのはわたしなんだもの! それをなんてこと言い出すのよおおおおぉぉぉぉぉッ!? ルッセルがわたしの意見に反対する? そんなわけないじゃないのおおおぉぉぉぉぉぉ!! 可愛い可愛い賢い息子よ!? あの子がわたしに口ごたえ!? ふざけないでちょうだい! 侮辱しないでちょうだい! そんなことを言うなんて! 貴女、あまりにも無礼、無礼よぉぉぉぉぉぉッ!!」
とんでもない勢いで言葉を紡いでこられてしまった。
意味不明だ……。
もう、とにかく、理解不能過ぎる……。
◆
翌日、ルッセルの母親はルッセルに殴り殺された。
何でもルッセルは彼女が私との婚約を勝手に破棄したことに大層怒ったそうで――その感情のうねりに飲まれるようにそういうところにまで至ってしまったようなのだ。
ルッセルは彼女が思っていたほど彼女に忠実ではなかった様子。
少し安心した部分もある。
いい年して言いなりの息子ではないと分かったから、だろうか。
ただ、ルッセルも、暴行によって逮捕されてしまった。
可哀想に……。
面倒な母親を持っていたせいで……。
だが、まぁ、暴力は罪だ。
そういう意味では不運もまた人生であり仕方のない部分もあるのだろう。
◆
あれから三年半が経った。
私は穏やかな家庭を築き、夫と楽しく暮らしている。
先日生まれたばかりの赤ちゃんもいる。それゆえ苦労も多い。たびたび起きなくてはならないところなんて特に大変だ。
ただ、私の場合は夫が育児に協力してくれるので、そういう意味ではかなり恵まれているほうだと思う。
おかげである程度睡眠もとれている。
◆終わり◆
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