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『 「お前、魔法使いなんだってな」冷ややかに言われ、婚約破棄されました。 』

「お前、魔法使いなんだってな」

 その日、婚約者である彼リフィシオは、冷ややかな目を向けてきた。

「そんな女と結婚するとか無理だわ。てことで、婚約は破棄な」

 しかもそんなことまで言われてしまって。

「魔法使い――いや、魔女、だろ? そんな女と生きていくとか周りから何言われるか分かんねぇ。やだよそんなの。こそこそ生きてくの」

 リフィシオはそう言って、ばっさり私を切り落とした。

 私にも心はある。急に婚約破棄なんてされたら悲しいし傷つく。それも魔法使いだからなんて理由ならなおさら。

 けれども彼はそんなことは少しも考えていないようだった。

 そもそも彼は私を人と思っていない。
 魔法使いという名の怪物か何かかと勘違いしているのではないか。


 ◆


 数年後。
 私は隣国の王子に見初められ、王子の妻となった。
 今は城で皆から愛され穏やかに暮らしている。
 生まれ育った国から出るのはある意味賭けだった、けれど、私はその賭けに勝った。

 ちなみにリフィシオはというと、あの後国が戦火に包まれたために急遽徴兵され戦場で使い捨ての駒にされてあっさり散ることとなったようだ。


◆終わり◆


『私を虐めていた婚約者とその母親は破滅しました! ざまぁとしか思いません。』

 婚約を機に婚約者アドレッド及びその母親と同居することになってしまった私は、二人に虐げられ、奴隷のように扱われるようになってしまった。

「アンタ、ホント無能ね。アドレッドに相応しくないわよ、分かってる? アドレッドはね、あたしが一生懸命育ててきた有能で完璧な男なの。アンタみたいな無能にあげるために育てたわけじゃないわ」

 アドレッドの母親はことあるごとにそんなことを言う。
 彼女はもう本当に、常に、私を貶めたいようであった。彼女の生きがいはもしかしたらそれしかないのかもしれない、なんて思ってしまうほどに。

「母さんの言うこと聞いておけよ。抵抗すんなよ。反抗も、な。そんなことしてみろ、母さんにボコボコにされるからな」

 また、アドレッドも、たびたび「母に抵抗するな」というようなことを言ってきた。

 私には人権はないのか――考えれば考えるほどに虚しくなってゆく、そんな日々だった。


 ◆


 だがそんなある日のこと。
 倉庫に閉じ込められた夜、泣いていたら、謎の光が私の前に現れた。

『あいつらに罰を下したいかい?』

 光はそんな問いを放ってくる。

「……はい」

 涙ながらにそう答えると、光は消えた。


 ◆


 数日後、アドレッドが蛇に噛まれた。それも毒蛇に。アドレッドはすぐに病院に運び込まれる。

 アドレッドの母親は泣いていたけれど、可哀想とは思わなかった。

 そうして治療を受けるも、残念ながら彼は亡き人となってしまった。

 それからというもの、アドレッドの母親は酷く落ち込み、何も食べなくなった。彼女は自室にこもりがちになり、独りで何やらぶつぶつ言っている時間が一日のほとんどを占めるようになっていった。

「神様息子を返してくださいお金ならあります払いますお金ならあります払います払います払いますから神様どうか息子を息子を返してくださいお願いしますこの身を捧げます死ぬまで奉仕しまふから死んで奉仕でもしますからどうか息子を返してくださいお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします神様返して神様神様神様神様返して神様神様息子を返してくださいお願いします神様お金ならあります払いますから払いますし払えますいくらでもですからどうかあの偉大な息子を返してほしいのです」

 日に日に痩せていく彼女を見ながら。

「お願いします神様どうか息子を返してください何でもします何でもしますから神様神様神様神様ここへ来てくださいここへお願いしますお願いしますどうか息子を返してください息子を返してください息子を愛していましたですからどうか返してください何でもしますから何でもしますのでどうか許してくださいすべての罪を赦しあの偉大な息子を返してください救ってください時を巻き戻してくださいくださいくださいくださいください救ってください彼を可愛い息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子をお願いします神様神様息子を返してくださいお金ならあります払いますいくらでも払います払いますから早く息子を返してどうか返してください奉仕しますから奉仕しますからあの子に会わせてください会いたい会いたい会いたい会いたい会いたいのです神様どうか返してください息子を息子を息子を息子を息子を息子を息子を」

 内心ざまぁと思う。

「神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様」

 やがて彼女は栄養失調となり落命した。


◆終わり◆
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