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『魔力を秘めていたために物心ついた頃から王子と婚約することになっていたのですが、彼は実は……。』
生まれてすぐ国内一の魔力を秘めていると判断された私は、物心ついた頃にはこの国の王子であるアイトブラハムと婚約することを決められていた。
でも、そんなものと思っていたから、正直なところを言うとそれほど嫌だとは思っていなかった。
そんなものなのだと思っていた。
そしてそれが運命なのだと。
決められた相手と婚約し結婚する、それが当たり前のことなのだと理解していたから、自身の運命も受け入れていた。
だがある時すべてを壊すような出来事が起こる――それが何かというと、アイトブラハムの浮気事件である。
ある新聞社から出された『アイトブラハム王子が女連れ!?』という記事によって、私は、黒い真実を知ることとなった。
それによってアイトブラハムの悪事、主にある女性との深い仲についてが明るみに出て――私もさすがに黙ってはいられず、彼に直接話しを聞こうとしたところ。
「うるさい女だな。……もういい、君との婚約は破棄だ」
そんな風に言われ、切り捨てられてしまった。
どうして? 私が悪いの? いや、そんなはずはない。問題を起こしたのは私ではなく彼の方なのだから。……けれども彼は私が悪いかのように高圧的な言葉をかけてくる。一方的に切り捨てる、他人の人生を捻じ曲げるようなことをする、それもさもそれが当たり前であるかのように。私は悪くないのに……どうして? おかしいではないか、明らかに。なぜ私が悪者みたいにされなくめはならないの? あるいは、婚約者は何をされても黙っていなくてはならないということ? 全部受け入れろと?
無理だ、もう。
我慢なんてできない。
もはや限界だ。
だから私は復讐することにした――この魔力を使えば、何だってできる。
◆
あれから数年、私はこの国の女王となった。
無能で、迷惑で、身勝手。
そんな王家を、王族を、この国から消し去ったのは私だ。
それゆえ私は『国救いの魔女』と呼ばれている。
だが魔女と言われてはいるけれど皆に嫌われているわけではない。
むしろ多くの人たちに愛されている。
公の場に出た時などは、大抵、国民は私を歓迎してくれるのだ。
ああ、そうだ、そういえば、だが。
かつて婚約者であった王子アイトブラハムも私がこの手で処刑した。
……浮気相手の女もろとも、ね。
◆終わり◆
『幼馴染みと先日婚約者同士となったのですが。』
私リィナと幼馴染みの彼タイーチは先日婚約者同士となった。
少し前まではそんな風になるとは予想していなかった。けれども唐突に話が湧いてきて。気づけば私たちの関係はそういう方向へと進展していっていた。
「これからもよろしくな! リィナ」
「こちらこそ」
でも、彼とならきっと仲良しでいられると、そう信じていた。
「リィナとなら絶対楽しく暮らせるわ」
「そうね」
「俺ら昔から仲良しだもんな!」
「そうそう。お互いのことよく知っているし。兄弟みたいな域だものね」
良い家庭を築ける。
そう思っていた。
◆
婚約してから数ヶ月が経った頃、知人から「タイーチくん、会社の女性と浮気してるみたいよ」と話が舞い込んできて――それについて調べることを始めてみたところ、タイーチが本当に会社の部下と過剰に関わっていることが判明した。
「タイーチくんとシリメリアさん? ああ、はい、仲良しですよ。いつも一緒に帰ってられますし」
「シリメリアさん、タイーチくんと結婚したいって言ってましたよ」
「ええーっ? タイーチさんって婚約者いたんですかぁ。じゃあ、シリメリア、騙されてるんですかねぇーっ? こわぁーい」
周辺への聞き込みでもそれらしい証言が複数あった。
それから本格的に調査を開始する。
するとタイーチが部下である女性シリメリアといかがわしい場所へ足を踏み入れているという証拠まで発生して。
彼は明らかに浮気している。
残念ながら、それは確かな真実であるようであった。
そうしてやがて話し合いの時がやってくる。
「タイーチ、浮気していたなんてね」
「……ごめん」
「どうしてそんなことしたの!」
「ごめん」
「説明してちょうだい」
「……だから、ごめんって」
彼は謝るばかりで説明はしてくれない。
「ごめんだけじゃ分からないわ」
「……ちっ」
「え」
「ごちゃごちゃうるせぇな」
「え……?」
しかも。
「何だよリィナ、面白みのねぇやつ」
彼は段々怒ってきて。
「あんなの遊びだろが! 自由だろ! 結婚する前なんだからまだセーフだろが! 好きにさせろ!」
しまいに。
「お前がこんなくだらねぇ女とは思わなかった! ごみだな! 婚約した途端執着してきやがって、うぜぇ! きめぇ!」
まるで私が悪いかのように言われてしまった。
「幼馴染みのお前ならぎゃーぎゃー言ってこねぇだろうと思ってたのによ! 幻滅した! こんなくっだらねぇやつだったとは!」
……もういいか。
理不尽に責められていると段々そんな風に思えてきて。
「分かった。じゃあ婚約は破棄ね」
私がこう言うのは自然ななりゆきだった。
「それでいい?」
「ああいいぜ。そう言えばびびると思ってんのか? 馬鹿だろ」
「いいえ。ただ言っただけ」
「あっそ、そーかよ、なら好きにしろや」
「決まりね。それでいいわ。……ま、慰謝料はしっかり支払ってもらうけれどね」
それから私は彼を徹底的に追いかけ回し、慰謝料を支払ってもらうところにまで持ち込んだ。
◆
あの後タイーチはシリメリアに騙されて違法行為による事業に参加してしまい、それによって逮捕されたそうだ。
タイーチは犯罪者となってしまった。
それも思わぬ形で。
でも、分かっていなかったからといって許されるわけでもないので、タイーチはしっかり牢屋送りとなったようである。
彼は死にはしなかったが社会的には終わったのだった。
ちなみにシリメリアはというと、タイーチの逮捕後少しして夜に何者かに襲われ処分されてしまったそう。
――私に嫌な思いをさせた二人は形は違えど共に終わりを迎えた。
一方私はというと、今は次の婚約に向けての活動が始まっていて、そろそろ話がまとまりそうになっている。
今のところ順調。
だからこれからも努力を重ねていく。
◆終わり◆
生まれてすぐ国内一の魔力を秘めていると判断された私は、物心ついた頃にはこの国の王子であるアイトブラハムと婚約することを決められていた。
でも、そんなものと思っていたから、正直なところを言うとそれほど嫌だとは思っていなかった。
そんなものなのだと思っていた。
そしてそれが運命なのだと。
決められた相手と婚約し結婚する、それが当たり前のことなのだと理解していたから、自身の運命も受け入れていた。
だがある時すべてを壊すような出来事が起こる――それが何かというと、アイトブラハムの浮気事件である。
ある新聞社から出された『アイトブラハム王子が女連れ!?』という記事によって、私は、黒い真実を知ることとなった。
それによってアイトブラハムの悪事、主にある女性との深い仲についてが明るみに出て――私もさすがに黙ってはいられず、彼に直接話しを聞こうとしたところ。
「うるさい女だな。……もういい、君との婚約は破棄だ」
そんな風に言われ、切り捨てられてしまった。
どうして? 私が悪いの? いや、そんなはずはない。問題を起こしたのは私ではなく彼の方なのだから。……けれども彼は私が悪いかのように高圧的な言葉をかけてくる。一方的に切り捨てる、他人の人生を捻じ曲げるようなことをする、それもさもそれが当たり前であるかのように。私は悪くないのに……どうして? おかしいではないか、明らかに。なぜ私が悪者みたいにされなくめはならないの? あるいは、婚約者は何をされても黙っていなくてはならないということ? 全部受け入れろと?
無理だ、もう。
我慢なんてできない。
もはや限界だ。
だから私は復讐することにした――この魔力を使えば、何だってできる。
◆
あれから数年、私はこの国の女王となった。
無能で、迷惑で、身勝手。
そんな王家を、王族を、この国から消し去ったのは私だ。
それゆえ私は『国救いの魔女』と呼ばれている。
だが魔女と言われてはいるけれど皆に嫌われているわけではない。
むしろ多くの人たちに愛されている。
公の場に出た時などは、大抵、国民は私を歓迎してくれるのだ。
ああ、そうだ、そういえば、だが。
かつて婚約者であった王子アイトブラハムも私がこの手で処刑した。
……浮気相手の女もろとも、ね。
◆終わり◆
『幼馴染みと先日婚約者同士となったのですが。』
私リィナと幼馴染みの彼タイーチは先日婚約者同士となった。
少し前まではそんな風になるとは予想していなかった。けれども唐突に話が湧いてきて。気づけば私たちの関係はそういう方向へと進展していっていた。
「これからもよろしくな! リィナ」
「こちらこそ」
でも、彼とならきっと仲良しでいられると、そう信じていた。
「リィナとなら絶対楽しく暮らせるわ」
「そうね」
「俺ら昔から仲良しだもんな!」
「そうそう。お互いのことよく知っているし。兄弟みたいな域だものね」
良い家庭を築ける。
そう思っていた。
◆
婚約してから数ヶ月が経った頃、知人から「タイーチくん、会社の女性と浮気してるみたいよ」と話が舞い込んできて――それについて調べることを始めてみたところ、タイーチが本当に会社の部下と過剰に関わっていることが判明した。
「タイーチくんとシリメリアさん? ああ、はい、仲良しですよ。いつも一緒に帰ってられますし」
「シリメリアさん、タイーチくんと結婚したいって言ってましたよ」
「ええーっ? タイーチさんって婚約者いたんですかぁ。じゃあ、シリメリア、騙されてるんですかねぇーっ? こわぁーい」
周辺への聞き込みでもそれらしい証言が複数あった。
それから本格的に調査を開始する。
するとタイーチが部下である女性シリメリアといかがわしい場所へ足を踏み入れているという証拠まで発生して。
彼は明らかに浮気している。
残念ながら、それは確かな真実であるようであった。
そうしてやがて話し合いの時がやってくる。
「タイーチ、浮気していたなんてね」
「……ごめん」
「どうしてそんなことしたの!」
「ごめん」
「説明してちょうだい」
「……だから、ごめんって」
彼は謝るばかりで説明はしてくれない。
「ごめんだけじゃ分からないわ」
「……ちっ」
「え」
「ごちゃごちゃうるせぇな」
「え……?」
しかも。
「何だよリィナ、面白みのねぇやつ」
彼は段々怒ってきて。
「あんなの遊びだろが! 自由だろ! 結婚する前なんだからまだセーフだろが! 好きにさせろ!」
しまいに。
「お前がこんなくだらねぇ女とは思わなかった! ごみだな! 婚約した途端執着してきやがって、うぜぇ! きめぇ!」
まるで私が悪いかのように言われてしまった。
「幼馴染みのお前ならぎゃーぎゃー言ってこねぇだろうと思ってたのによ! 幻滅した! こんなくっだらねぇやつだったとは!」
……もういいか。
理不尽に責められていると段々そんな風に思えてきて。
「分かった。じゃあ婚約は破棄ね」
私がこう言うのは自然ななりゆきだった。
「それでいい?」
「ああいいぜ。そう言えばびびると思ってんのか? 馬鹿だろ」
「いいえ。ただ言っただけ」
「あっそ、そーかよ、なら好きにしろや」
「決まりね。それでいいわ。……ま、慰謝料はしっかり支払ってもらうけれどね」
それから私は彼を徹底的に追いかけ回し、慰謝料を支払ってもらうところにまで持ち込んだ。
◆
あの後タイーチはシリメリアに騙されて違法行為による事業に参加してしまい、それによって逮捕されたそうだ。
タイーチは犯罪者となってしまった。
それも思わぬ形で。
でも、分かっていなかったからといって許されるわけでもないので、タイーチはしっかり牢屋送りとなったようである。
彼は死にはしなかったが社会的には終わったのだった。
ちなみにシリメリアはというと、タイーチの逮捕後少しして夜に何者かに襲われ処分されてしまったそう。
――私に嫌な思いをさせた二人は形は違えど共に終わりを迎えた。
一方私はというと、今は次の婚約に向けての活動が始まっていて、そろそろ話がまとまりそうになっている。
今のところ順調。
だからこれからも努力を重ねていく。
◆終わり◆
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