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『私を裏切った幼馴染み兼元婚約者はもう生きていません。』
幼馴染みで婚約者でもあった彼サルクーから婚約破棄宣言をされて、雨の中、公園のベンチに座って一人泣いていた。
ずっと一緒にいられると思っていたのに。
どこで何を間違ってしまったのだろう。
考えれば考えるほどによく分からなくなって、脳内がこんがらがって、それで余計に涙が溢れてきてしまう。
先月母に買ってもらった赤いワンピース。お気に入りだったのに。だからサルクーと会う時にわざわざ着ていったのに。それなのにこんなことになってしまって、そのせいでびしょ濡れになってしまった。せっかくの赤いワンピースなのに雨に濡れきって台無しだ。
「どうして泣いてるの?」
「え……」
誰かに声をかけられて、面を持ち上げると。
「何かあった?」
そこには一人の見知らぬ青年。
「……いえ、べつに、何でも」
「そうは見えないけど」
「放っておいてください」
「それは、無理かな」
彼はなぜかやたらと踏み込んでくる。
放っておいてほしいのに。
関わってきてほしくなんてないのに。
「話、聞くよ」
……それから私はなんとなくの流れで彼に話を聞いてもらった。
◆
あの悲しみの日から二年、私は、あの時に出会った彼と生きている。
夫婦となったのだ。
そんな予定はなかったのに。
でも、今の暮らしは悪くない。
そこそこ楽しい。
だから満足している。
ちなみにサルクーはというと、既にこの世を去っている。
ある雨の日にがけ崩れに巻き込まれ即死したのだそうだ。
◆終わり◆
『高級喫茶店へ行こうと誘ってくれた婚約者でしたが、実は裏で……?』
「ニーナ、今度さ、アルフレッド行かない?」
婚約者である彼ミッシェルがそんな提案をしてきてくれたのはある春の日だった。
ちなみにアルフレッドというのは、国内でも有数の高級喫茶店である。
「いいの!?」
「うん、もちろん。前行ってみたいって言ってたよね」
「そうなの!」
私は紅茶好き。だからアルフレッドのことは知っていた。その店は紅茶もとてもハイクオリティで美味しいのだと聞いている。でもこれまでなかなか行ってみられる機会はなくて。確かにミッシェルにそういう話をしたことはあったけれど、まさか誘ってもらえるなんて思わなかった。
「紅茶が美味しいんですって」
「いいね」
「でも……本当に、いいの?」
「もちろん。支払いも僕がするし。たまにはぱーっと楽しもうよ!」
降って湧いた嬉しい出来事に心が躍る。
「ありがとう! とても嬉しいわ、幸せよ」
それからの私はとても幸せな気分だった――ミッシェルの真実を知るまでは。
◆
その日、私は、たまたま街の本屋に立ち寄った。
そしてそこで見知らぬ女性を連れたミッシェルを目撃する。
「アルフレッドに行けるなんてぇ、さいこぉ」
「楽しみだね」
「婚約者さんいるのにぃ、いいのぉ? こんな女連れていっててぇ」
「いいんだ、ばれないよ」
二人がそんな会話をしているのを聞いてしまい。
「ミッシェル! 一体どういうこと!? その人は誰なの!?」
思わず飛び出していってしまう。
「ニーナ……!?」
「その人ともアルフレッドに行くの!?」
「……あ、いや、その……ただの練習だよ、お試し。ニーナと行くための練習」
ミッシェルは子どものような言い訳をするけれど。
「そんな! 酷いわ!」
「どうして」
「他の女とも行くなんて信じられない!」
こちらとしてはそんなくだらない言い訳で納得できるわけもなくて。
「……うるさいよ、ニーナ」
「傷つくわ……!」
「あ、そ。じゃ、もういいや」
「え」
私たちの関係は崩れてゆく。
「ニーナとの婚約は破棄とするよ」
ついに彼はそこまで言った。
「面倒臭い女は嫌いなんだ」
こうして私とミッシェルの関係は終わりを迎えてしまったのだった……。
◆
婚約破棄宣言から一週間、ミッシェルの訃報が耳に入った。
ミッシェルは借金取りからあの女を護ろうとして刃物で刺され落命したそうだ。
……なんて愚かな人なのかしら。
あんな女を護るために。
いや、あんな女、なんて言うと失礼かもしれないけれど。
でも、私だけと共にあったなら、彼は今でもきっと普通に生きていたはずだ。
……私には借金取りなんて襲ってこないし。
だがまぁそれもまた彼の選択。
ならば仕方がない。
たとえその女性のために死ぬこととなろうともすべて自己責任、自業自得でしかない。
ちなみに当の女性はというと、その時に借金取りに誘拐されたきり行方不明となっているらしい。
◆
あれから数年が経った。
私は今、家庭を築き、穏やかに生活できている。
そして何より、夫も私と同じ紅茶好きなので、日常の中で楽しむティータイムが何よりも愛おしい時間だ。
◆終わり◆
『唾をかけてくる婚約者が不快で嫌すぎます……泣きそうです……』
お馬鹿な婚約者ロレテは会うたびに唾をかけてくる――彼にとってはそれが愛情表現なのだそう、彼の親がそう言っていた――まったくもって理解不能だが。
そんなロレテはある日突然。
「お前との婚約は破棄する!」
そんな宣言をしてきた。
「え」
「お前には飽きた!」
さっくりとそんな風に言われて。
「関係はここまで、な。じゃ! そういうことで! バァーイ!」
一方的に関係を解消されてしまったのだった。
でも……良かったのかもしれない。
だって、これでもう、唾をかけられずに済むから……。
不潔な行為から解放されるのはとても嬉しいことだ。
――翌日、ロレテは落命した。
家の前にある石の階段で踊っていたところ足を滑らせて転落。その際舌を強く噛んでしまい、痛みのあまり失神。誰にも気づかれなかったために数時間にわたってそのまま放置され、結果、命を落とすこととなってしまったそうだ。
◆終わり◆
幼馴染みで婚約者でもあった彼サルクーから婚約破棄宣言をされて、雨の中、公園のベンチに座って一人泣いていた。
ずっと一緒にいられると思っていたのに。
どこで何を間違ってしまったのだろう。
考えれば考えるほどによく分からなくなって、脳内がこんがらがって、それで余計に涙が溢れてきてしまう。
先月母に買ってもらった赤いワンピース。お気に入りだったのに。だからサルクーと会う時にわざわざ着ていったのに。それなのにこんなことになってしまって、そのせいでびしょ濡れになってしまった。せっかくの赤いワンピースなのに雨に濡れきって台無しだ。
「どうして泣いてるの?」
「え……」
誰かに声をかけられて、面を持ち上げると。
「何かあった?」
そこには一人の見知らぬ青年。
「……いえ、べつに、何でも」
「そうは見えないけど」
「放っておいてください」
「それは、無理かな」
彼はなぜかやたらと踏み込んでくる。
放っておいてほしいのに。
関わってきてほしくなんてないのに。
「話、聞くよ」
……それから私はなんとなくの流れで彼に話を聞いてもらった。
◆
あの悲しみの日から二年、私は、あの時に出会った彼と生きている。
夫婦となったのだ。
そんな予定はなかったのに。
でも、今の暮らしは悪くない。
そこそこ楽しい。
だから満足している。
ちなみにサルクーはというと、既にこの世を去っている。
ある雨の日にがけ崩れに巻き込まれ即死したのだそうだ。
◆終わり◆
『高級喫茶店へ行こうと誘ってくれた婚約者でしたが、実は裏で……?』
「ニーナ、今度さ、アルフレッド行かない?」
婚約者である彼ミッシェルがそんな提案をしてきてくれたのはある春の日だった。
ちなみにアルフレッドというのは、国内でも有数の高級喫茶店である。
「いいの!?」
「うん、もちろん。前行ってみたいって言ってたよね」
「そうなの!」
私は紅茶好き。だからアルフレッドのことは知っていた。その店は紅茶もとてもハイクオリティで美味しいのだと聞いている。でもこれまでなかなか行ってみられる機会はなくて。確かにミッシェルにそういう話をしたことはあったけれど、まさか誘ってもらえるなんて思わなかった。
「紅茶が美味しいんですって」
「いいね」
「でも……本当に、いいの?」
「もちろん。支払いも僕がするし。たまにはぱーっと楽しもうよ!」
降って湧いた嬉しい出来事に心が躍る。
「ありがとう! とても嬉しいわ、幸せよ」
それからの私はとても幸せな気分だった――ミッシェルの真実を知るまでは。
◆
その日、私は、たまたま街の本屋に立ち寄った。
そしてそこで見知らぬ女性を連れたミッシェルを目撃する。
「アルフレッドに行けるなんてぇ、さいこぉ」
「楽しみだね」
「婚約者さんいるのにぃ、いいのぉ? こんな女連れていっててぇ」
「いいんだ、ばれないよ」
二人がそんな会話をしているのを聞いてしまい。
「ミッシェル! 一体どういうこと!? その人は誰なの!?」
思わず飛び出していってしまう。
「ニーナ……!?」
「その人ともアルフレッドに行くの!?」
「……あ、いや、その……ただの練習だよ、お試し。ニーナと行くための練習」
ミッシェルは子どものような言い訳をするけれど。
「そんな! 酷いわ!」
「どうして」
「他の女とも行くなんて信じられない!」
こちらとしてはそんなくだらない言い訳で納得できるわけもなくて。
「……うるさいよ、ニーナ」
「傷つくわ……!」
「あ、そ。じゃ、もういいや」
「え」
私たちの関係は崩れてゆく。
「ニーナとの婚約は破棄とするよ」
ついに彼はそこまで言った。
「面倒臭い女は嫌いなんだ」
こうして私とミッシェルの関係は終わりを迎えてしまったのだった……。
◆
婚約破棄宣言から一週間、ミッシェルの訃報が耳に入った。
ミッシェルは借金取りからあの女を護ろうとして刃物で刺され落命したそうだ。
……なんて愚かな人なのかしら。
あんな女を護るために。
いや、あんな女、なんて言うと失礼かもしれないけれど。
でも、私だけと共にあったなら、彼は今でもきっと普通に生きていたはずだ。
……私には借金取りなんて襲ってこないし。
だがまぁそれもまた彼の選択。
ならば仕方がない。
たとえその女性のために死ぬこととなろうともすべて自己責任、自業自得でしかない。
ちなみに当の女性はというと、その時に借金取りに誘拐されたきり行方不明となっているらしい。
◆
あれから数年が経った。
私は今、家庭を築き、穏やかに生活できている。
そして何より、夫も私と同じ紅茶好きなので、日常の中で楽しむティータイムが何よりも愛おしい時間だ。
◆終わり◆
『唾をかけてくる婚約者が不快で嫌すぎます……泣きそうです……』
お馬鹿な婚約者ロレテは会うたびに唾をかけてくる――彼にとってはそれが愛情表現なのだそう、彼の親がそう言っていた――まったくもって理解不能だが。
そんなロレテはある日突然。
「お前との婚約は破棄する!」
そんな宣言をしてきた。
「え」
「お前には飽きた!」
さっくりとそんな風に言われて。
「関係はここまで、な。じゃ! そういうことで! バァーイ!」
一方的に関係を解消されてしまったのだった。
でも……良かったのかもしれない。
だって、これでもう、唾をかけられずに済むから……。
不潔な行為から解放されるのはとても嬉しいことだ。
――翌日、ロレテは落命した。
家の前にある石の階段で踊っていたところ足を滑らせて転落。その際舌を強く噛んでしまい、痛みのあまり失神。誰にも気づかれなかったために数時間にわたってそのまま放置され、結果、命を落とすこととなってしまったそうだ。
◆終わり◆
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