上 下
207 / 211

第206話 ロッシュウ様の記憶!

しおりを挟む
危うく全身激痛で転がり回るところだった『シュウ』です。ここに来て怒涛のご都合展開に少々ウンザリしてきたとこだったのでもしかしたら全身激痛はオイシイ展開になってウハウハだったかも…… ドMバンザイ!



「シュウ君、これで闇魔法二大奥義の件は終わりだけど、もう一つ用件があるのよ」

「何ですか? お母上様」

「今からあなたの中に眠るロッシュウ・ルーン・アルパトス様の記憶を覚醒させるわ」

「記憶を覚醒?……」

「そうよ」

「あのもしロッシュウ・ルーン・アルパトス様の記憶が覚醒したらどうなるんですか? 僕が僕じゃなくなるような事にはならないのですか?」

「そんなのならないわよ。ただ、ほんの少しだけ記憶が戻るだけで、人格や思考が変わることがないから安心してちょうだい」

「本当ですかぁ?」

「すぐに終わるから、さあ、早くこっちに来なさい!」

「ハァ」

「はい、そこに座って」

部屋の中央で胡座をかいた。

「シュウ君、目を瞑って深呼吸よ」

『スーハー スーハー』

お母上様はまた呪文をブツブツと唱え始めた。


――!? 頭の中にエリスに似ている女の子の映像が浮かんだ。エリス似のポッチャリした女の子? 学校の制服みたいのを着ているから女子生徒か…… 豪華なウェディングドレスを着たエリス似の女性…… 子供達に囲まれて楽しく笑っているエリス似の母親…… 誰かを泣きながら最後のお見送りするような仕草をしているエリス似のばあちゃん…… 

まさか!? この人がエリス・フォンテーヌ様!! 

じゃあ、最後の見送りされているのは…… ロッシュウ・ルーン・アルパトス様!

これがロッシュウ・ルーン・アルパトス様の記憶なのか!?


「終わったわよ。シュウ君」

「エリスは? エリスは?」

「どうしたの急に? エリスなら執務室で待っててるわよ」

「早くエリスのところに行かなきゃ!」

僕は急いでエリスの元に向かった!

「シュウ君! 待ちなさい! どうしたっていうの!?」


『ドン』


僕は勢いよく執務室のドアを開けた。

「エリスー! エリスだ! エリスにやっと逢えた!」

僕はエリスを抱き締めた……

「ただいまエリス…… 随分と待たせてしまったね。ごめんよ……」

「あなた…… お帰りなさい……」


周りにいたみんなは急な展開に呆然と僕たちを見ていた……


「ハァ ハァ 一体どうしたって…… アラ!」

お母上様も急いで僕を追いかけて来たらしい。


「いい加減、離れんかぁ!」

お父上様のぶちギレで無理矢理エリスと離れされてしまった。

僕は興奮気味に

「戻ったんだよ! 記憶が! ロッシュウ・ルーン・アルパトス様の記憶が戻ったんだよ! エリス!」

「そうみたいね、あなた。随分と待たされたけど…… 私、あなたに逢えて嬉しいわ」


「ちょっとは落ち着きなさい。あなた達!」

「「すみません……」」

お母上様の一喝で、シュンとなった僕とエリス。

「シュウ君、一体どうしたっていうの?」

「どうしたこうしたもありませんよ。遥か昔の…… エリスに逢った頃の記憶が戻ったんですよ! ずっとエリスと一緒だった記憶、ハルタン様が居なくなって途方に暮れるエリス。そして、大魔導士と呼ばれていた自分…… なんでこんな大事な事を忘れていたんだろう……」


エリスは僕の手を握り、

「大丈夫、大丈夫よ。私はここにいる」

「ああ、そうだね。これからもずっと一緒に過ごして行こう……」

「ええ、あなた…… あなたが私を見失っても私が必ずあなたを探しだしてみせるから……」


――数年後


あれから色々な事があった。フロンシニアス王国とアルラサンド王国は大きく発展した。特にフロンシニアス王国は目を見張る発展のぶりだった。エリスの知識で農産物の生産量上がり、数年前まで飢餓や疫病で苦しんでいた国とは思えないほどだ。

その発展の1番の要因は悪徳貴族が一掃されたからなんだけど、領地没収、財産没収の上、無職になることもなくブラック企業に就職! 勿論、ブラック企業社長はレイニーが就任し、重役出勤、早退、欠勤などやりたい放題だが、なぜかブラック企業戦士となった元貴族からは大好評で人気者になっているらしい。そして、アポー正教会の連中も喜んでレイニーを救いの神として崇拝し、元貴族と共にブラック企業戦士として喜んで働いているとのことだった。


一方、兄上達はハルタンに赴き、外交官と言いながら魔導の特訓と相撲の稽古に励み、パーフェクトな超人になってしまった…… 

元貴族達から没収した領地は王家直轄の領地
となり、兄上達が管理者として各現地に赴き多忙な毎日を送っている。領民からはイケメンで人格も素晴らしい、頭もキレるとなれば人気が出るのもおかしくない話しだ。領民から兄上達が皇族にも関わらず、是非、娘をもらって欲しい、娘婿になって欲しいなどと婚姻話しを持ってくるらしい。兄上達もそんな領民とのやり取りが楽しく嬉しいみたいで、僕にニコニコしながら楽しそうに話してくれる。

兄上達の目標と言うか野望があるらしく、以前の自分達のようにならない為にもフロンシニアス王国全土に相撲を普及させ、若者達に『心』、『技』、『体』の教育を進めたいと思っているとのことだった。


なぜ、兄上達がフロンシニアスにいるのか? 

追放から1ヶ月後には国外追放を解除したからだ。当然、貴族らから身内には甘いのではないか、さすがに1ヶ月は早すぎるのではないかと不満が出たが、その度に母上が貴族の屋敷に乗り込み、鉄拳制裁を加え黙らせた。

『セリーナ王妃最恐災凶再狂英雄伝説』がまた見れる! と言うことで、貴族達はさらに熱狂的な不満をもらすようになった。

そして、母上が屋敷に乗り込んだ時には『ようこそ! セリーナ王妃最恐災凶再狂英雄伝説』と書かれた横断幕が飾られ、お茶とお菓子が準備され、鉄拳制裁を受ける準備までしているそうだ。

鉄拳制裁が終ると治癒魔法を掛け、お茶会をしてから王宮へ帰るを繰り返している。
それにのこのこと貴族の元へ赴く母上も満更じゃない様子だった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,898pt お気に入り:3,109

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14,494pt お気に入り:3,343

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14,093pt お気に入り:1,962

婚約破棄されましたが、幼馴染の彼は諦めませんでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,086pt お気に入り:281

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,330pt お気に入り:3,762

処理中です...