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序 こんな肉体に誰がした
お嫁に行けないが、お婿にも行けないらしい
しおりを挟む「はい、お疲れ様です♡」
「ぜえ……ぜぇ……何なんだ……」
「すみません、終わってから目覚めていただく筈だったのですが……ちょっとずれちゃいました♡」
ちょっとか?
今更だが、この女神大丈夫か?
とりあえず俺が現在、少女の肉体であるということは嫌という程わかった。何故とは言いたくない。
「……いや、待て。どうしてこの外見なんだ」
「え?」
「勇者なんだろう? 戦う相手が何だかわからんが、ドラゴンだろうと魔王だろうと屈強な男の方がいいんじゃないか? なんでこんな」
「勇者様、それは」
蟹女の顔色が曇る。
嫌な予感がする。
「勇者様が戦う相手は、女好きなのです」
「…………えぇ」
女好き。オンナズキ?
ちょっと思考がついて行かない。
「この世界に存在する……悪と言いますか、まだ私も実態を掴みきれていないのですが、害を成している魔王は大の女好きでして」
「はぁ」
「男性の勇者を送りこんでも逃げ回って一切相手をせず、ひっそり部下をしかけて勇者を暗殺するような卑怯な奴なのです」
「それはそれは……」
ある意味正しい気がする。よく考えたら部下が全滅している状況でも無い限りトップが死んだら全滅なんだからホイホイ勇者と戦う魔王は駄目だ。でもスタート地点の勇者を魔王が直接ぶっ殺しに来た方が早いのではないか? とも思うので一概には言えないだろう。
「ですが前回の女性勇者様は、魔王の美しさに寝返ってしまいまして」
「えぇ……」
そんなパターンもあるのか。イケメン正義だろう、憎い。
というか元勇者が敵にいるってことか? 大丈夫か?
「という事で、中身が男の方でしたら魔王の色香に抵抗出来るのではないかと」
「……いやまあ理屈はわかるが」
色香て。そんな色男なのか。ふとやたらイケメンだった幼なじみを思い出したが、その上を行くのだろう。
いや夢なんだけど。
「……結構長い夢だな」
そろそろ覚めてもいい頃だ。今日は何曜日だ?
「……あまり気に病まないで下らない。勇者様は選ばれたのです」
蟹女は目を伏せて俺の手を取った。指が長い。
改めて見ると、さすがに女神と言うだけあって美しい。ほぼ半裸の肉体も非の打ち所がなく、神々しさすらある。腰のくびれから臀部にかけて見たことがないような曲線を描いている。
「別に気に病んでるとかじゃない。そろそろ起きたいんだ。もういいだろう?」
「お辛い気持ちはわかります。もしわたくしの身体で慰めになるのであればいつでもお使い下さい。勇者様に男性の機能はございませんが、女性もいいものですよ。チェックしたところ女性としては申し分ありません。いくらでもお手伝い致します」
「い、いやいや、そういう事じゃなくて」
突然何を言い出すんだ。お願いします。
いやそうじゃない。
……握り締めたまま微かに震える手がとても力強く、温かい。
手を握り合うというのは独特の行為だ。指や掌はとても敏感な感覚器官で、それをお互い触れ合うのだから他の部分の接触よりある意味ずっと意味がある。
手を繋ぐ、キスをする、といった段階が恋愛における肉体関係のステップなのも理解出来る。
それだけ、掌の感触というのはあらゆる情報が詰まっていた。女神の指が細く長いこと、柔らかいこと、それに似合わず力強いこと。
この女が嘘を言ってるとは思っていないが、夢だとは思っていた。だが夢というのはこんなにもしっかりとした感触があっただろうか。
最終チェックとやらの時は衝撃の方が強かった。が、じわじわと生々しい感触が蘇ってくる。触れられたことの無い場所への刺激。鈍い痛み。確実に自分のものである臓器への感触。
俺は女の肉体なのだ。
「……夢じゃない……のか……?」
目の前が真っ暗になりそうだった。目眩がした。立っているのか座っているのか、感覚が無い。俺は死んだのか、俺は、いつ、どうやって、何故、どうして
「勇者様」
「あ、あああ……」
女神は俺を抱きしめ、頭を撫でた。優しい行為だが俺にとってはこの肉体が少女であることを更に自覚させられる残酷な行為だった。少なくとも外見は成熟した大人の女性である女神の方が背が高いのだ。
俺の髪は豊かで、柔らかくさらさらと女神の指に沿って揺れた。
こんな感触は知らない。
これは俺ではない。
「勇者様。ただ何事もなく突然召される命も数多くございます。ですが勇者様は大いなる方の目に止まり、わたくしの元に届けられ、この世界で新しい生を授かることが出来ました」
「……っ、うああ……」
嗚咽が漏れる。悲しいのか辛いのか苦しいのか分からない。
「使命こそありますが、勇者様には五感も感情もあります。その身体には命があります。この世界にはおいしいものも美しいものもたくさん、あります。わたくしどもの争いに巻き込んでしまい申し訳ありません。どうか、お命を大切に、そして。勝手なお願いですが、どうか」
ーーーーこの世界をお救い下さい。
本当に、勝手なお願いだ。
◇
目が覚めたら、ベッドの上だった。
夢だったのか。俺は安堵と共に、少しだけ残念だった。どうせ女の子になったのならもっと楽しめば良かった。どうせ夢ならあの女神とレズプレイをすれば良かったんだ。夢の中ですらヘタレな己が身が嘆かわしい。
今何時だ、とスマホを探そうとしてーー目眩がした。
ここは俺のベッドではない。
俺の部屋ではない。
そもそもこの……手。小さい。
「あ、勇者様。おはようございます」
「……うおっ」
そこには、今まで見たことのない……巨乳が居た。
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