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序 こんな肉体に誰がした
性なる力
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ただのおっさんだった俺が、突然女勇者になった。そこまではまだいい。よくはないが、かわいい顔やデカめのケツも悪くない。女子同士でイチャつくのもドキドキして楽しいかもしれん。
戦うことになるのもまあある程度覚悟していた。どうやるかは別の問題だが。
だが。
「蟹女あああぁ説明しろおおらあああああ!!」
魔王にいきなり子作り迫られてヤられるとか聞いてないぞ!!!!
「ひゃああああああああ!?」
夜に呼べだとか、知ったことではない。
天に向かって力の限り叫んだ。かなりイカれた所業だが、そろそろ俺も怒っていいはずだ。
「あ、あわわわ……どぉも……」
蟹女が正座して顕現する。やっぱり呼べば出てくるのだ。天の上どころか下手したらその辺にいたのかもしれない。
この女、相変わらず半裸だ。正座しておろおろしているのを上から眺めると変な気を起こしそうだ。そんな趣味は無いはずだが。
「おい、どういう事だ」
蟹女の前で仁王立ちをして、俺はとうとう堪忍袋の緒が切れた。
……が、普段怒り慣れていないので怒鳴り続ける体力はない。
「えぇと」
「知ってたな?」
「あのぉ」
「知ってたな? 魔王の目的も、俺がどうなるかも。前の女勇者はどうなった? 俺が同じ目に遭うこともわかってて、俺を、この身体にしたな? そもそも何故俺だ。聞く権利はあるはずだ」
──そうだ。前の勇者は普通の女の子、かはわからんが少なくとも元から女の子だったはずだ。
「えっと……はい。前回の勇者様は……異世界のお嬢さんでした。魔王の毒牙にかかり……」
「クソ……っ」
どうか、お命を大切に──
どの口が言うのか。だからこそなのか?
蟹女は涙目だが、俺も泣きそうだった。
なんだかこの身体になってから涙もろい気がする。ホルモンバランスとやらだろうか。
「魔王が、この世界に悪しき行いをしているのは確かです。アレは、この世界から生命の素と言っていいものを吸い上げています」
「だからってな……」
生命の素。それが何なのか俺にはわからない。だがそれが枯渇すると、人々に限らず全ての生あるものが少しずつ病んで衰弱していくという。
だがここは俺の世界ではない。
「魔王がスライムなのは見ましたね? 」
「……ああ」
黒紫色のドロドロして泡立った何か。ぴーぴー鳴く。あれをスライムだと言うならそうだろう。
「見ての通り元は下級のスライムです。スライム達には本来、個々の生への渇望、原始的な3大欲求と、そして──より強くなり、あるいは強い子孫を残したいという本能しかありません。そしてその本能により、魔王は際限なく生命の素を求め続けました」
たまたまか、突然変異か。あらゆるものを生命の素ごと喰う稀有な個体だったのだという。
そもそもスライム族が化けたり他者の能力を完全に取り込んだり、それを幼体へと受け継ぐことが出来るのも稀な事らしい。
「なるべくして魔王になったとも言えますが、それでもアレはスライムなのです。多少知恵がつき魔族を同族とみなして保護していようと、おのれの本能のままに生きます。いずれこの世界を喰らうところだったでしょう」
蟹女は、そう言って哀しそうに目を伏せた。睫毛が長い。
「……でも、寿命が来た?」
「恐らくは。そして魔王が老衰で死んでしまっては……取り戻せないのです。そして魔王を倒すことが出来るのは──勇者様に授けた力によってのみなのです」
話はまあ、わかる。わかるが──
「じゃあ、どうするつもりだったんだ?」
嫌な予感がする。前よりずっと。
「勇者様に授けた力は、その……性感を高めることでより威力が高まるのです」
「…………うん?」
「ですので、子を成したいという魔王の本能を利用して」
「おい、何て?」
「魔王の本能を」
「もっと前」
「子を」
「おい!!」
……ええと。つまり、勇者の力ってのは魔を祓う力がある魔王を倒すためのもので?
そのためには?
「アレとまたセッッッックスしろと!?」
「あっえっ、必ずしも性交である必要は」
「性なる力で魔王を倒せってか???アホか!!!!」
今まで意味のわからん事が起きたが、さすがにこれはもう俺の夢では無いと悟った。
こんな願望や発想が俺にあってたまるか。
「……勇者様、あの」
蟹女がおずおずと見上げている。相変わらず半裸で涙目で、何か言いたげだ。
「何だよ」
「もし魔王を倒したら、生命の素を不足分を補助するために使っているわたくしの本来の力を使い、男性でも女性でも、元のお姿でも、お望み通りの肉体を創る事ができます」
「……なるほど?」
それが俺のメリットか。うーん。
正直に言ってしまえば、選択肢が無い予感はしている。ここでごねても、はい次の勇者様──と呼んだ場合俺がどうなるかわからん。最悪、OSのクリーンインストールだ。
蟹女はこれまで大枠では嘘を言っていない。少なくとも大きな矛盾は無い、気がする。わからん。意味のわからん事が起きすぎた。
だが。
「前の、勇者の子は。色香に迷ったって?」
これだけは確認しておきたい。何故嘘をつく必要が……
「えっ? ですから前の勇者様は以前にもお話したとおり、魔王に一目惚れしてしまって」
「うん?」
「勇者の印を返上し、寝返りまして……それで毒牙に……」
「まってそんな事出来るの!?」
返上できるんかい!!
俺は思わず蟹女に詰め寄った。早く言えオブザイヤーだ。
「当時はそういう仕組みだったのです。なので今回は違うかたちに」
「どこ!どこにあんの!!!」
自分の身体をまさぐる。どれだ? これか?
「あっいえ、以前は護身用のアクセサリーを兼ねていたのですが、今は目に見えるものではなく……」
「くっそぉぉぉぉおお」
いずれにせよ、選択肢などないのだ。
戦うことになるのもまあある程度覚悟していた。どうやるかは別の問題だが。
だが。
「蟹女あああぁ説明しろおおらあああああ!!」
魔王にいきなり子作り迫られてヤられるとか聞いてないぞ!!!!
「ひゃああああああああ!?」
夜に呼べだとか、知ったことではない。
天に向かって力の限り叫んだ。かなりイカれた所業だが、そろそろ俺も怒っていいはずだ。
「あ、あわわわ……どぉも……」
蟹女が正座して顕現する。やっぱり呼べば出てくるのだ。天の上どころか下手したらその辺にいたのかもしれない。
この女、相変わらず半裸だ。正座しておろおろしているのを上から眺めると変な気を起こしそうだ。そんな趣味は無いはずだが。
「おい、どういう事だ」
蟹女の前で仁王立ちをして、俺はとうとう堪忍袋の緒が切れた。
……が、普段怒り慣れていないので怒鳴り続ける体力はない。
「えぇと」
「知ってたな?」
「あのぉ」
「知ってたな? 魔王の目的も、俺がどうなるかも。前の女勇者はどうなった? 俺が同じ目に遭うこともわかってて、俺を、この身体にしたな? そもそも何故俺だ。聞く権利はあるはずだ」
──そうだ。前の勇者は普通の女の子、かはわからんが少なくとも元から女の子だったはずだ。
「えっと……はい。前回の勇者様は……異世界のお嬢さんでした。魔王の毒牙にかかり……」
「クソ……っ」
どうか、お命を大切に──
どの口が言うのか。だからこそなのか?
蟹女は涙目だが、俺も泣きそうだった。
なんだかこの身体になってから涙もろい気がする。ホルモンバランスとやらだろうか。
「魔王が、この世界に悪しき行いをしているのは確かです。アレは、この世界から生命の素と言っていいものを吸い上げています」
「だからってな……」
生命の素。それが何なのか俺にはわからない。だがそれが枯渇すると、人々に限らず全ての生あるものが少しずつ病んで衰弱していくという。
だがここは俺の世界ではない。
「魔王がスライムなのは見ましたね? 」
「……ああ」
黒紫色のドロドロして泡立った何か。ぴーぴー鳴く。あれをスライムだと言うならそうだろう。
「見ての通り元は下級のスライムです。スライム達には本来、個々の生への渇望、原始的な3大欲求と、そして──より強くなり、あるいは強い子孫を残したいという本能しかありません。そしてその本能により、魔王は際限なく生命の素を求め続けました」
たまたまか、突然変異か。あらゆるものを生命の素ごと喰う稀有な個体だったのだという。
そもそもスライム族が化けたり他者の能力を完全に取り込んだり、それを幼体へと受け継ぐことが出来るのも稀な事らしい。
「なるべくして魔王になったとも言えますが、それでもアレはスライムなのです。多少知恵がつき魔族を同族とみなして保護していようと、おのれの本能のままに生きます。いずれこの世界を喰らうところだったでしょう」
蟹女は、そう言って哀しそうに目を伏せた。睫毛が長い。
「……でも、寿命が来た?」
「恐らくは。そして魔王が老衰で死んでしまっては……取り戻せないのです。そして魔王を倒すことが出来るのは──勇者様に授けた力によってのみなのです」
話はまあ、わかる。わかるが──
「じゃあ、どうするつもりだったんだ?」
嫌な予感がする。前よりずっと。
「勇者様に授けた力は、その……性感を高めることでより威力が高まるのです」
「…………うん?」
「ですので、子を成したいという魔王の本能を利用して」
「おい、何て?」
「魔王の本能を」
「もっと前」
「子を」
「おい!!」
……ええと。つまり、勇者の力ってのは魔を祓う力がある魔王を倒すためのもので?
そのためには?
「アレとまたセッッッックスしろと!?」
「あっえっ、必ずしも性交である必要は」
「性なる力で魔王を倒せってか???アホか!!!!」
今まで意味のわからん事が起きたが、さすがにこれはもう俺の夢では無いと悟った。
こんな願望や発想が俺にあってたまるか。
「……勇者様、あの」
蟹女がおずおずと見上げている。相変わらず半裸で涙目で、何か言いたげだ。
「何だよ」
「もし魔王を倒したら、生命の素を不足分を補助するために使っているわたくしの本来の力を使い、男性でも女性でも、元のお姿でも、お望み通りの肉体を創る事ができます」
「……なるほど?」
それが俺のメリットか。うーん。
正直に言ってしまえば、選択肢が無い予感はしている。ここでごねても、はい次の勇者様──と呼んだ場合俺がどうなるかわからん。最悪、OSのクリーンインストールだ。
蟹女はこれまで大枠では嘘を言っていない。少なくとも大きな矛盾は無い、気がする。わからん。意味のわからん事が起きすぎた。
だが。
「前の、勇者の子は。色香に迷ったって?」
これだけは確認しておきたい。何故嘘をつく必要が……
「えっ? ですから前の勇者様は以前にもお話したとおり、魔王に一目惚れしてしまって」
「うん?」
「勇者の印を返上し、寝返りまして……それで毒牙に……」
「まってそんな事出来るの!?」
返上できるんかい!!
俺は思わず蟹女に詰め寄った。早く言えオブザイヤーだ。
「当時はそういう仕組みだったのです。なので今回は違うかたちに」
「どこ!どこにあんの!!!」
自分の身体をまさぐる。どれだ? これか?
「あっいえ、以前は護身用のアクセサリーを兼ねていたのですが、今は目に見えるものではなく……」
「くっそぉぉぉぉおお」
いずれにせよ、選択肢などないのだ。
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