11 / 33
ツヨシくん編
珈琲はいかが?
しおりを挟む
みんなぁ、オイラに元気を分けておくれよ。どうも、愛妻家のツヨシです。
さて、僕とトモカちゃんは、仲睦まじく暮らしています。
そして、訪問客も多いのです。
何故なら、珈琲マシンを用意して、準備万端整え、てぐすね引いて待っているからです。クリスチャン夫婦として、来訪者はウエルダン、いえ、ウェルカムです。
また、僕は珈琲が好きなので、密かにバリスタツヨシと呼ばれることを望んでいます。
これは、密かな野望なのですが、トモカちゃんは何でもお見通しらしく、珈琲と対峙する僕を、ウフフと笑います。
所で、どうです、バリスタツヨシ。語呂が、マツモトキヨシに似ている気がしますが、間違えられる恐れはないでしょう。
とは言え、実際にバリスタツヨシと呼ばれたら、きっと違和感を覚えると思います。
そう、バリスタでは語句に伸びしろがありません。躍動感が欠如しています。
何だか、夕陽に向かって走る爽やかさが足りません。
澱んだ水には魚も住み着かないので、ここはバリスターと伸ばすべきでしょう。バリスターツヨシです。
意味は不明になりますが、名称は数段向上しました。伸ばすだけなら
“珈琲アンバサダー”でも良いだろう。との意見もありますが、やはり一言目からの破裂音はインパクトがあります。
ピコ太郎先生の活躍が良い例です。
最終的には、豹柄のスーツとパンチパーマで、踊りながら珈琲を淹れる男を目指します。
さて、僕が自称についてあれこれ考えていたら、愛しいトモカちゃんの姿が見えない事に気が付きました。これは大変です。いったい、何秒前から見失っていたのでしょう。
僕には、残念ながら時間を巻き戻す能力がありません。そう、現実でチート能力が使えるのは、埼玉県でも一人くらいな物でしょう。
ですから、トモカちゃんの居そうな所へ移動します。
トモカちゃんはキッチンにいました。彼女の目の前には食材が広がります。
僕は、愛しい妻が何を調理するつもりか推理します。
そして、名探偵のように宣言します。
「それは、チョコレートケーキを作る材料だね。後は僕に任せなさい」
トモカちゃんは、僕の申し出を受け、ウフフと笑います。
彼女は、夫を笑顔一つで操るのがスタンド能力並に強力なので、僕がケーキ作りを引き受ける事は、折り込み済みでしょう。
いいんです。僕は操り人形で!
実は、僕はトモカちゃんがチョコレートケーキを作るより、回覧板で回ってきたテレビドラマ「陸〇」のエキストラ募集の方が気になっている事を知っていました。
地上波キー局が総力を上げて造るドラマが、行田に来るなんて、信じられない奇蹟です。
トモカちゃんの血が騒ぐのも無理はありません。
さて、僕は、トモカちゃんの代わりにチョコレートケーキ当番を引き受けてみたものの、作り方を知りません。取り敢えず、材料を見渡します。
薄力粉、ココアパウダー(無糖)、ベーキングパウダー、無塩バター、砂糖、卵、板チョコ(ブラック)1枚、牛乳、チョコチップなどです。
これから僕は、コイツらを立派なチョコレートケーキにしなければいけません。
僕は、東北地方の理系大学を卒業した以上、完璧を目指します。それには、分量を正確無比に量る必要があります。もう、公式として黒板三枚に書きなぐる程、夢中で取り組む覚悟でした。
計量カップを取りだし、薄力粉を量ります。
「人を裁くな、裁かれないためである。相手を計るその秤で、自らも計られるだろう」
そんな言葉を思い浮かべます。
でもまぁ、薄力粉が相手なので安心です。
さて、計量カップを擦り切りで量るのに、限りない水平を目指す必要があります。
表面を滑らかに平らに擦り切るには、指では物足りないでしょう。
スプーンの柄、包丁で試しますが、綺麗な平らになりません。
ここで僕は、パンにバターやマーガリンを塗るヘラを使う事を閃きます。
試してみると、綺麗に擦り切れます。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
作業に夢中になり過ぎて、ボールが山盛りになりました。
擦り切る度に変化を見せる粉の表面は、枯山水を連想させ、小宇宙を発見した気分にさせるのです。
これは大変です。夢中になりそうです。男の浪漫です。
その後の事は、トモカちゃんに聞きました。
トモカちゃんは、陸王のエキストラ募集に応募できず、気分がブルーになったそうです。
更に、キッチンでは薄力粉を量るだけで力尽きた僕を発見したそうです。
トモカちゃんは僕を片付けると、チョコレートケーキ作りを始めたそうです。
まぁ、それも仕方がないでしょう。早くしないと、お客様がきてしまいます。
因みに、僕の額には、回覧板で回ってきた赤い羽根が貼り付けてありました。ちょっぴりお茶目なトモカちゃんでした。
さて、僕とトモカちゃんは、仲睦まじく暮らしています。
そして、訪問客も多いのです。
何故なら、珈琲マシンを用意して、準備万端整え、てぐすね引いて待っているからです。クリスチャン夫婦として、来訪者はウエルダン、いえ、ウェルカムです。
また、僕は珈琲が好きなので、密かにバリスタツヨシと呼ばれることを望んでいます。
これは、密かな野望なのですが、トモカちゃんは何でもお見通しらしく、珈琲と対峙する僕を、ウフフと笑います。
所で、どうです、バリスタツヨシ。語呂が、マツモトキヨシに似ている気がしますが、間違えられる恐れはないでしょう。
とは言え、実際にバリスタツヨシと呼ばれたら、きっと違和感を覚えると思います。
そう、バリスタでは語句に伸びしろがありません。躍動感が欠如しています。
何だか、夕陽に向かって走る爽やかさが足りません。
澱んだ水には魚も住み着かないので、ここはバリスターと伸ばすべきでしょう。バリスターツヨシです。
意味は不明になりますが、名称は数段向上しました。伸ばすだけなら
“珈琲アンバサダー”でも良いだろう。との意見もありますが、やはり一言目からの破裂音はインパクトがあります。
ピコ太郎先生の活躍が良い例です。
最終的には、豹柄のスーツとパンチパーマで、踊りながら珈琲を淹れる男を目指します。
さて、僕が自称についてあれこれ考えていたら、愛しいトモカちゃんの姿が見えない事に気が付きました。これは大変です。いったい、何秒前から見失っていたのでしょう。
僕には、残念ながら時間を巻き戻す能力がありません。そう、現実でチート能力が使えるのは、埼玉県でも一人くらいな物でしょう。
ですから、トモカちゃんの居そうな所へ移動します。
トモカちゃんはキッチンにいました。彼女の目の前には食材が広がります。
僕は、愛しい妻が何を調理するつもりか推理します。
そして、名探偵のように宣言します。
「それは、チョコレートケーキを作る材料だね。後は僕に任せなさい」
トモカちゃんは、僕の申し出を受け、ウフフと笑います。
彼女は、夫を笑顔一つで操るのがスタンド能力並に強力なので、僕がケーキ作りを引き受ける事は、折り込み済みでしょう。
いいんです。僕は操り人形で!
実は、僕はトモカちゃんがチョコレートケーキを作るより、回覧板で回ってきたテレビドラマ「陸〇」のエキストラ募集の方が気になっている事を知っていました。
地上波キー局が総力を上げて造るドラマが、行田に来るなんて、信じられない奇蹟です。
トモカちゃんの血が騒ぐのも無理はありません。
さて、僕は、トモカちゃんの代わりにチョコレートケーキ当番を引き受けてみたものの、作り方を知りません。取り敢えず、材料を見渡します。
薄力粉、ココアパウダー(無糖)、ベーキングパウダー、無塩バター、砂糖、卵、板チョコ(ブラック)1枚、牛乳、チョコチップなどです。
これから僕は、コイツらを立派なチョコレートケーキにしなければいけません。
僕は、東北地方の理系大学を卒業した以上、完璧を目指します。それには、分量を正確無比に量る必要があります。もう、公式として黒板三枚に書きなぐる程、夢中で取り組む覚悟でした。
計量カップを取りだし、薄力粉を量ります。
「人を裁くな、裁かれないためである。相手を計るその秤で、自らも計られるだろう」
そんな言葉を思い浮かべます。
でもまぁ、薄力粉が相手なので安心です。
さて、計量カップを擦り切りで量るのに、限りない水平を目指す必要があります。
表面を滑らかに平らに擦り切るには、指では物足りないでしょう。
スプーンの柄、包丁で試しますが、綺麗な平らになりません。
ここで僕は、パンにバターやマーガリンを塗るヘラを使う事を閃きます。
試してみると、綺麗に擦り切れます。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
計量カップで量り、ヘラで擦り切ってボールへ。
作業に夢中になり過ぎて、ボールが山盛りになりました。
擦り切る度に変化を見せる粉の表面は、枯山水を連想させ、小宇宙を発見した気分にさせるのです。
これは大変です。夢中になりそうです。男の浪漫です。
その後の事は、トモカちゃんに聞きました。
トモカちゃんは、陸王のエキストラ募集に応募できず、気分がブルーになったそうです。
更に、キッチンでは薄力粉を量るだけで力尽きた僕を発見したそうです。
トモカちゃんは僕を片付けると、チョコレートケーキ作りを始めたそうです。
まぁ、それも仕方がないでしょう。早くしないと、お客様がきてしまいます。
因みに、僕の額には、回覧板で回ってきた赤い羽根が貼り付けてありました。ちょっぴりお茶目なトモカちゃんでした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる