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ツヨシくん編
ジョア
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どうも、愛妻家のツヨシです。
夕暮れ時、荘厳な音楽が流れます。
僕は、午後五時の地域放送が、夕焼け小焼けからジュピターに変わった事を、不思議に思っていました。
最初、トモカちゃんと一緒に聞いた時、何の音楽か解りませんでした。
もしかすると、Jアラートかとも思ったりします。ならば、とてもワクワクします。
何故なら、湘南辺りからゴジラが上陸するのを楽しみにしているのです。
さて、僕は、ジュピターがJアラートでもなく、地震警報でもなく、ただ単に時刻を知らせる物だと理解すると、今度はジュピターにした理由が気になります。
とは言え、僕が棲息する場所から推測すれば、自と答えは出ます。
そう、「陸王」です。
市は便乗しまくりなのです。
鉄は熱い内に打て。スープは冷めない内に……。寄らば大樹の蔭。
とにかく、ゼリーフライと古墳群と忍城と古代蓮を越える名物、ドラマのロケ地になった事を強調したいのです。
僕は、市の必死さに涙します。ところが、よく考えると、別の目論みも見えてきます。
もしかすると市は、これを機に名称を「陸王国」にでも変え、日本国からの独立を考えているやも知れません。
これは大変です。ですが、僕も行田市に引っ越してから、三年の長きに渡ってお世話になっています。
「いざ鎌倉!」
「そうだ、京都へ行こう!」
御恩と奉公の世界です。
義勇軍を募るなら、喜んで参加します。
僕は、忍城に立て籠る姿を想像します。
自衛隊による忍城への水攻めの場面を夢想していると、違和感がありました。
違和感の原因は、愛しいトモカちゃんが見あたらない事です。
僕は、辺りを見回します。
すると、何故か、自分が一人で公園の前に居る事に気付きます。
公園は、市立病院の裏手にある、市街地の中にあります。
僕の良く知った場所ですが、見慣れない自動販売機がありました。
「おや、こんな派手な販売機があったかな?」
僕がそう思うのも無理はありません。自動販売機には、隣に特撮ヒーローの像が立っていたのです。
特撮ヒーローは、ウルトラセブンです。空き缶入れを台座にして、格好よくポーズを決めています。
僕は、その姿に見覚えがありました。
あれは、月始めの事です。トモカちゃんの実家がある福島へ行った時の事、安達太良SAで同じ物を見たのです。
なんでも、日本の特撮の第一人者、円谷英二氏は、福島出身らしいのです。
さて、それと同じ物が行田にあるのは驚きです。
まさか、フリーメイソンと関係があるのでしょうか?
僕は陰謀説が好きなので、どうしてもそちら側に持って行ってしまいます。
陰謀説は兎も角、自販機で飲み物を買う事にします。妄想は過度に脳を酷使するため、水分と共に糖分を必要とします。
僕は、この場面では珈琲をチョイスします。お金を入れ、商品を選び、ボタンを押します。
安達太良SAに在った自販機では、ウルトラセブンの
「ジョワッ」の掛け声と共に、ビームの電子音が鳴り、商品が出て来ます。
僕は、同じ展開を期待します。そして、ウルトラセブンの
「ジョワッ」の掛け声と共に出て来たのは、
「ジョワ」でした。
これは、新境地です。
♪ラブミー自販機 ラブミースィーツ♪
僕は、思わず唄ってしまいます。それほど混乱していたのです。
珈琲の代わりに出てきた、ジョアのプレーン味を手に取り、思案します。
安達太良SAでは、こんな現象は起きませんでした。いわゆる事件です。
僕は、今度はオレンジ味のさっちゃんを選びます。
ジョワッ!
出て来たのは、ジョアのオレンジ味でした。
僕は、東北地方の理系大学出身なので、関連性を理解しました。
おそらく、ジョアの味のバリエーションに無い物は、プレーンになるのでしょう。
ジョワッ!
ツヨシくんは、出てきたジョアを見て青ざめます。
プッカレモンを選んだのに、出て来たのは苺味でした。
これは、どうした事でしょう? ジョアには檸檬味がある筈なのに、苺です。
自分の理論が崩壊し、絶望に打ちのめされました。
その時、厳かなジュピターの音色が響き渡ります。それと同時に、カラータイマーも鳴ります。
僕は、ジョアの謎を忘れ、夕日に向かって飛び去るのです。
「あなた、起きて、ご飯ですよ」
僕は、優しい声で目覚めます。
どうやら、眠り呆けていたようです。もう、畳に涎の湖ができています。
忍城が水攻めになる前に、井草が水浸しになったようです。
「トモカちゅわーん! 変な夢を見た」
半泣きの僕を、笑顔で見守るトモカちゃんは、観世音菩薩と見まごう程の神々しさです。
もう、僕の夢想や妄想には慣れているのでしょう。達観した感があります。
もう、ウルトラの母と呼べるでしょう。
夕暮れ時、荘厳な音楽が流れます。
僕は、午後五時の地域放送が、夕焼け小焼けからジュピターに変わった事を、不思議に思っていました。
最初、トモカちゃんと一緒に聞いた時、何の音楽か解りませんでした。
もしかすると、Jアラートかとも思ったりします。ならば、とてもワクワクします。
何故なら、湘南辺りからゴジラが上陸するのを楽しみにしているのです。
さて、僕は、ジュピターがJアラートでもなく、地震警報でもなく、ただ単に時刻を知らせる物だと理解すると、今度はジュピターにした理由が気になります。
とは言え、僕が棲息する場所から推測すれば、自と答えは出ます。
そう、「陸王」です。
市は便乗しまくりなのです。
鉄は熱い内に打て。スープは冷めない内に……。寄らば大樹の蔭。
とにかく、ゼリーフライと古墳群と忍城と古代蓮を越える名物、ドラマのロケ地になった事を強調したいのです。
僕は、市の必死さに涙します。ところが、よく考えると、別の目論みも見えてきます。
もしかすると市は、これを機に名称を「陸王国」にでも変え、日本国からの独立を考えているやも知れません。
これは大変です。ですが、僕も行田市に引っ越してから、三年の長きに渡ってお世話になっています。
「いざ鎌倉!」
「そうだ、京都へ行こう!」
御恩と奉公の世界です。
義勇軍を募るなら、喜んで参加します。
僕は、忍城に立て籠る姿を想像します。
自衛隊による忍城への水攻めの場面を夢想していると、違和感がありました。
違和感の原因は、愛しいトモカちゃんが見あたらない事です。
僕は、辺りを見回します。
すると、何故か、自分が一人で公園の前に居る事に気付きます。
公園は、市立病院の裏手にある、市街地の中にあります。
僕の良く知った場所ですが、見慣れない自動販売機がありました。
「おや、こんな派手な販売機があったかな?」
僕がそう思うのも無理はありません。自動販売機には、隣に特撮ヒーローの像が立っていたのです。
特撮ヒーローは、ウルトラセブンです。空き缶入れを台座にして、格好よくポーズを決めています。
僕は、その姿に見覚えがありました。
あれは、月始めの事です。トモカちゃんの実家がある福島へ行った時の事、安達太良SAで同じ物を見たのです。
なんでも、日本の特撮の第一人者、円谷英二氏は、福島出身らしいのです。
さて、それと同じ物が行田にあるのは驚きです。
まさか、フリーメイソンと関係があるのでしょうか?
僕は陰謀説が好きなので、どうしてもそちら側に持って行ってしまいます。
陰謀説は兎も角、自販機で飲み物を買う事にします。妄想は過度に脳を酷使するため、水分と共に糖分を必要とします。
僕は、この場面では珈琲をチョイスします。お金を入れ、商品を選び、ボタンを押します。
安達太良SAに在った自販機では、ウルトラセブンの
「ジョワッ」の掛け声と共に、ビームの電子音が鳴り、商品が出て来ます。
僕は、同じ展開を期待します。そして、ウルトラセブンの
「ジョワッ」の掛け声と共に出て来たのは、
「ジョワ」でした。
これは、新境地です。
♪ラブミー自販機 ラブミースィーツ♪
僕は、思わず唄ってしまいます。それほど混乱していたのです。
珈琲の代わりに出てきた、ジョアのプレーン味を手に取り、思案します。
安達太良SAでは、こんな現象は起きませんでした。いわゆる事件です。
僕は、今度はオレンジ味のさっちゃんを選びます。
ジョワッ!
出て来たのは、ジョアのオレンジ味でした。
僕は、東北地方の理系大学出身なので、関連性を理解しました。
おそらく、ジョアの味のバリエーションに無い物は、プレーンになるのでしょう。
ジョワッ!
ツヨシくんは、出てきたジョアを見て青ざめます。
プッカレモンを選んだのに、出て来たのは苺味でした。
これは、どうした事でしょう? ジョアには檸檬味がある筈なのに、苺です。
自分の理論が崩壊し、絶望に打ちのめされました。
その時、厳かなジュピターの音色が響き渡ります。それと同時に、カラータイマーも鳴ります。
僕は、ジョアの謎を忘れ、夕日に向かって飛び去るのです。
「あなた、起きて、ご飯ですよ」
僕は、優しい声で目覚めます。
どうやら、眠り呆けていたようです。もう、畳に涎の湖ができています。
忍城が水攻めになる前に、井草が水浸しになったようです。
「トモカちゅわーん! 変な夢を見た」
半泣きの僕を、笑顔で見守るトモカちゃんは、観世音菩薩と見まごう程の神々しさです。
もう、僕の夢想や妄想には慣れているのでしょう。達観した感があります。
もう、ウルトラの母と呼べるでしょう。
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