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2113年 ハジメの場合
☆ジャイアントエッグA☆
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(デビッドの場合)
ハジメさんは、大丈夫でしょうか? 彼を見ていると、三年前を思い出します。あの頃、オーストラリアにジャイアントエッグが落ちた時、ワタシも訓練生でした。
その時は、初めて見るジャイアントに恐怖し、自分の無力さを痛感しました。
「故郷と愛する人を守りたい!」
その想いは強いはずだったのに、体が動かないデス。
そんな時、桜のペイントが鮮やかな機体が、次々とジャイアントを倒して行きます。それが、当時は中尉だった櫻井鷹子サンが操る鋼殻体、「桜前戦」でした。ワタシは今、彼女の部隊にいます。
もう、あの頃とは違います。今度は、ワタシが櫻井鷹子サンとなり、訓練生を励ます番デス。
ワタシの小隊は、兵隊蟻の頭部に二十㍉の弱装ライフル弾を撃ち込みます。ワタシの小隊、スゴイでしょう!
ワタシ、斬り込み準備のため、鋼殻体の足の爪を持ち上げます。足底にはボールベアリングが装着されていて、三本の爪を持ち上げると、機体は前後左右にスーイスイと滑る事が可能です。華麗に舞うでしょう。
後は、方向転換と推進力があれば、高速移動ができます。
方向転換は、体重移動等の平衡感覚で舵を切ります。人工筋肉で柔らか動作の鋼殻体なら、パイロット次第で自由自在です。
後は、推進力です。これは、発電用のジェトエンジンを流用します。
バーナーを吹かし、突撃します。速いでしょう。体をGが襲います。もう、既に慣れっこデス。
鋼殻体にブレードを構えさせ、目標物に接近し、兵隊蟻の頸を一閃します。
巨大な頭部が地面に落ちます。ただ、ジャイアントの生命力は強いデス。頭が無くても向かって来ます。怖いデス。
兵隊蟻は、体を持ち上げ、後方の二対の脚だけで支えます。Oh! スタンディング! 頭部が付いて居れば、ワタシの鋼殻体と、あまり変わりません。ファンタスティック!
そして、腹部を前に突き出します。何とも言えない丸みを帯びた腹部は、生理的に気持ちが悪いデス。さらに、先端が開き、噴射口のような物が、ウニウニと出て来ます。そこから噴出する物は、恐ろしい液体デス。しかし、出させません。
ワタシは、足の爪で噴射口を踏み潰し、ブレードを頸から刺し通します。さすがの兵隊蟻も、動きが止まります。
一匹を倒しただけでは、ホッとしていられません。駆除すべき害虫はウジャウジャ居ます。
ワタシは、補助アームにライフルを捕らせます。しかし、メインアームで受け取らず、左肩に固定し、そこから、補助アームがオートで射撃してくれます。ワンダホー!
補助アームのオート射撃は、狙いが正確じゃない事と、弾倉交換ができない事が欠点デス。しかし、兵隊蟻の顔面に撃ちまくって牽制する事は可能デス。
ジェト噴射を利用して猛ダッシュし、新たな兵隊蟻に襲いかかります。
右脇に構えたブレードを振り上げ、腰の捻りを使って降り下ろします。電圧で伸縮する人工筋肉は、従来の歯車と違い、鋼殻体に人の動きを再現させます。ワンダホー!
猛ダッシュ+踏み込み+腕力は、ブレードに集約され、蟻の頭部で炸裂します。兵隊蟻の巨大な頭部は真っ二つデス。エクセレント!
さらに、腹部を踏みつけ、無力化します。そして、すぐに次のお仕事デス。
今度は、ブレードを収納して、ライフルに持ち換え、弾倉交換し、慎重に狙いをつけ、発射します。
弾は、離れた場所に居たジャイアントの腹部に命中し、恐ろしい液体の噴射口を破壊します。
ワタシが狙撃したのは、訓練生が四機がかりで倒した働き蟻デス。Oh ! ピヨピヨ。
頭部を切り落として油断していたため、腹部の動きに気付かなかったらしいデス。危ない所でした。ワタシは、訓練生たちに近づきます。
(ハジメの場合)
それは、佐之助の機体に噛み付いた働き蟻の頸を切り離した直後だった。
僕らは、敵との初戦闘に興奮し、ジャイアントの特徴を忘れていた。それは、ジャイアントは、脳が頭部と胸部に分かれていて、頭部だけでも動けるし、胸部だけでも動ける事だった。そして、胸部は、顎に匹敵する恐ろしい武器、腹部に繋がっている。
銃声と共に、働き蟻の腹部が吹き飛ばされた時、僕は、自分たちが危機一髪だった事を悟る。
そして、命の恩人から通信が来た。
「ワタシハ、ネコト、スシ、オイシク、イタダキ、キノウハハレデス」
僕は、かなり脱力する。「それは、もういいよ!」って言いたかったが、助けて貰っている立場では文句は言えない。それに、戦闘中にこの余裕は凄いと感じてもいた。
近づいて来る鋼殻体には、舌を出したカンガルーのマークがあり、オーストラリアからの助っ人、デビッド中尉の機体で間違いない。ここは、とりあえずお礼を言わなければならない。
「中尉、ありがとうございます。おかげで助かりました」
僕のお礼に、中尉はまともに答える。
「ハジメ軍曹、小隊長としての気配りが足りませんね。あなたは部下の命を預かっているのですよ」
「申し訳ありません中尉。隊長として至りませんでした」
僕は、深く反省する。佐之助の失敗で蟻に反撃された時、部下を責める気持ちで一杯になっていた。本来なら、あらゆる状況を冷静に判断すべきだった。攻撃された部下の負傷の有無や、機体の状態の確認。敵の完全な無力化に、周囲の状況と危険の探知など……。隊長の仕事は、部下を責める以外にも沢山ある。
落ち込む僕に、中尉は優しく促す。
「気持ちを切り替えて。まだ戦いは続いています。あなたの隊は、十時に向かって偵察を。くれぐれも気を付けて」
ジャイアントエッグ内に通じるルートを探すのが、これからの作戦になる。
中尉の指示は、時計の文字盤の十二時を正面にして、十時の方向へ進めとの事。
僕の小隊は、デビッド隊と別れ、進軍を開始した。
ハジメさんは、大丈夫でしょうか? 彼を見ていると、三年前を思い出します。あの頃、オーストラリアにジャイアントエッグが落ちた時、ワタシも訓練生でした。
その時は、初めて見るジャイアントに恐怖し、自分の無力さを痛感しました。
「故郷と愛する人を守りたい!」
その想いは強いはずだったのに、体が動かないデス。
そんな時、桜のペイントが鮮やかな機体が、次々とジャイアントを倒して行きます。それが、当時は中尉だった櫻井鷹子サンが操る鋼殻体、「桜前戦」でした。ワタシは今、彼女の部隊にいます。
もう、あの頃とは違います。今度は、ワタシが櫻井鷹子サンとなり、訓練生を励ます番デス。
ワタシの小隊は、兵隊蟻の頭部に二十㍉の弱装ライフル弾を撃ち込みます。ワタシの小隊、スゴイでしょう!
ワタシ、斬り込み準備のため、鋼殻体の足の爪を持ち上げます。足底にはボールベアリングが装着されていて、三本の爪を持ち上げると、機体は前後左右にスーイスイと滑る事が可能です。華麗に舞うでしょう。
後は、方向転換と推進力があれば、高速移動ができます。
方向転換は、体重移動等の平衡感覚で舵を切ります。人工筋肉で柔らか動作の鋼殻体なら、パイロット次第で自由自在です。
後は、推進力です。これは、発電用のジェトエンジンを流用します。
バーナーを吹かし、突撃します。速いでしょう。体をGが襲います。もう、既に慣れっこデス。
鋼殻体にブレードを構えさせ、目標物に接近し、兵隊蟻の頸を一閃します。
巨大な頭部が地面に落ちます。ただ、ジャイアントの生命力は強いデス。頭が無くても向かって来ます。怖いデス。
兵隊蟻は、体を持ち上げ、後方の二対の脚だけで支えます。Oh! スタンディング! 頭部が付いて居れば、ワタシの鋼殻体と、あまり変わりません。ファンタスティック!
そして、腹部を前に突き出します。何とも言えない丸みを帯びた腹部は、生理的に気持ちが悪いデス。さらに、先端が開き、噴射口のような物が、ウニウニと出て来ます。そこから噴出する物は、恐ろしい液体デス。しかし、出させません。
ワタシは、足の爪で噴射口を踏み潰し、ブレードを頸から刺し通します。さすがの兵隊蟻も、動きが止まります。
一匹を倒しただけでは、ホッとしていられません。駆除すべき害虫はウジャウジャ居ます。
ワタシは、補助アームにライフルを捕らせます。しかし、メインアームで受け取らず、左肩に固定し、そこから、補助アームがオートで射撃してくれます。ワンダホー!
補助アームのオート射撃は、狙いが正確じゃない事と、弾倉交換ができない事が欠点デス。しかし、兵隊蟻の顔面に撃ちまくって牽制する事は可能デス。
ジェト噴射を利用して猛ダッシュし、新たな兵隊蟻に襲いかかります。
右脇に構えたブレードを振り上げ、腰の捻りを使って降り下ろします。電圧で伸縮する人工筋肉は、従来の歯車と違い、鋼殻体に人の動きを再現させます。ワンダホー!
猛ダッシュ+踏み込み+腕力は、ブレードに集約され、蟻の頭部で炸裂します。兵隊蟻の巨大な頭部は真っ二つデス。エクセレント!
さらに、腹部を踏みつけ、無力化します。そして、すぐに次のお仕事デス。
今度は、ブレードを収納して、ライフルに持ち換え、弾倉交換し、慎重に狙いをつけ、発射します。
弾は、離れた場所に居たジャイアントの腹部に命中し、恐ろしい液体の噴射口を破壊します。
ワタシが狙撃したのは、訓練生が四機がかりで倒した働き蟻デス。Oh ! ピヨピヨ。
頭部を切り落として油断していたため、腹部の動きに気付かなかったらしいデス。危ない所でした。ワタシは、訓練生たちに近づきます。
(ハジメの場合)
それは、佐之助の機体に噛み付いた働き蟻の頸を切り離した直後だった。
僕らは、敵との初戦闘に興奮し、ジャイアントの特徴を忘れていた。それは、ジャイアントは、脳が頭部と胸部に分かれていて、頭部だけでも動けるし、胸部だけでも動ける事だった。そして、胸部は、顎に匹敵する恐ろしい武器、腹部に繋がっている。
銃声と共に、働き蟻の腹部が吹き飛ばされた時、僕は、自分たちが危機一髪だった事を悟る。
そして、命の恩人から通信が来た。
「ワタシハ、ネコト、スシ、オイシク、イタダキ、キノウハハレデス」
僕は、かなり脱力する。「それは、もういいよ!」って言いたかったが、助けて貰っている立場では文句は言えない。それに、戦闘中にこの余裕は凄いと感じてもいた。
近づいて来る鋼殻体には、舌を出したカンガルーのマークがあり、オーストラリアからの助っ人、デビッド中尉の機体で間違いない。ここは、とりあえずお礼を言わなければならない。
「中尉、ありがとうございます。おかげで助かりました」
僕のお礼に、中尉はまともに答える。
「ハジメ軍曹、小隊長としての気配りが足りませんね。あなたは部下の命を預かっているのですよ」
「申し訳ありません中尉。隊長として至りませんでした」
僕は、深く反省する。佐之助の失敗で蟻に反撃された時、部下を責める気持ちで一杯になっていた。本来なら、あらゆる状況を冷静に判断すべきだった。攻撃された部下の負傷の有無や、機体の状態の確認。敵の完全な無力化に、周囲の状況と危険の探知など……。隊長の仕事は、部下を責める以外にも沢山ある。
落ち込む僕に、中尉は優しく促す。
「気持ちを切り替えて。まだ戦いは続いています。あなたの隊は、十時に向かって偵察を。くれぐれも気を付けて」
ジャイアントエッグ内に通じるルートを探すのが、これからの作戦になる。
中尉の指示は、時計の文字盤の十二時を正面にして、十時の方向へ進めとの事。
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