ただ君だけを

伊能こし餡

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敵か?味方か?

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「フェリックスくん。私の代わりにツァールスコエ・セローの警護、本当にありがとう」
「いえ、ドミトリー大公こそ、我が駐屯部隊の指揮、ありがとうございました」

  ツァールスコエ・セローの警護から戻り、久々に自分の勤務地の門をくぐった。たった二日なのに、やけに久しぶりに思う。あっちのあでやかな宮殿もいいが、やはり私はこの殺伐とした男だけの空間の方が仕事がやりやすい。

  正直言うと早くここに帰って来たかった。皇帝の近くで警備するというのも息苦しいし、ラスプーチンとかいう明らかに私よりも劣っている人間に頭を下げるのも嫌だった。
  しかしなにより、ドミトリー大公と一度しっかり話してみたかった。

  大公は私が帰って来てからも一日だけうちの基地に居てくれるということだった。話すなら今日しかない。

「大公、少しお聞きしてもいいですか」
「ん、いいだろう。私も君に聞きたいことがある」
「あ、大公からどうぞ」
「ではお言葉に甘えて」

  大公は数瞬宙を睨みつけ、私の机の前で左右を確認した。そして、神妙な面持おももちで私に問いかけてきた。

「率直に問う。間近で見て、今の皇室をどう思った?」

  今の皇室・・・・・・。国民の気持ちを分かっていない皇帝に、狂った霊能力を信じる皇后。どう考えてもまともだとは思えない。
  しかしお世辞を言うのは簡単だ。なにより大公自身は皇室の人間。一つ言葉を間違えれば私の首が飛ぶ可能性だってゼロじゃない。

「私は・・・・・・」

  待てよ。だが大公がしがない一貴族である私にそんなことを聞くということは、大公も皇室に疑問を抱いているということなのでは・・・・・・。

「私は・・・・・・・・・・・・」

  いや、冷静になれ私。そんな考えは結局私の希望であって、現実はいつだって非情なものだろう? 普通に考えれば、人はより近しい人間の味方をするものだ。

「私は・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

  しかし、私がツァールスコエ・セローに行く前に垣間見たあの聡明さ。そのような人物が今の皇室に疑問を持たないわけがない。

「わたし、は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

  ダメだ、私には何が正解で何が間違っているのか、まったく分からない。大公は敵か? 味方か? 

  ・・・・・・。

  クソッ! なぜ同じロシア人同士で腹の探り合いをせねばならないのだ! この大地に生き! 同じ国を背負った者同士! なぜ疑わねばならないのだ!

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

  よし、腹は決まった。

「大公、私は生まれながらの貴族。皇帝陛下に忠誠を誓った身であります」
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