9 / 23
敵か?味方か?
しおりを挟む
「フェリックスくん。私の代わりにツァールスコエ・セローの警護、本当にありがとう」
「いえ、ドミトリー大公こそ、我が駐屯部隊の指揮、ありがとうございました」
ツァールスコエ・セローの警護から戻り、久々に自分の勤務地の門をくぐった。たった二日なのに、やけに久しぶりに思う。あっちの艶やかな宮殿もいいが、やはり私はこの殺伐とした男だけの空間の方が仕事がやりやすい。
正直言うと早くここに帰って来たかった。皇帝の近くで警備するというのも息苦しいし、ラスプーチンとかいう明らかに私よりも劣っている人間に頭を下げるのも嫌だった。
しかしなにより、ドミトリー大公と一度しっかり話してみたかった。
大公は私が帰って来てからも一日だけうちの基地に居てくれるということだった。話すなら今日しかない。
「大公、少しお聞きしてもいいですか」
「ん、いいだろう。私も君に聞きたいことがある」
「あ、大公からどうぞ」
「ではお言葉に甘えて」
大公は数瞬宙を睨みつけ、私の机の前で左右を確認した。そして、神妙な面持ちで私に問いかけてきた。
「率直に問う。間近で見て、今の皇室をどう思った?」
今の皇室・・・・・・。国民の気持ちを分かっていない皇帝に、狂った霊能力を信じる皇后。どう考えてもまともだとは思えない。
しかしお世辞を言うのは簡単だ。なにより大公自身は皇室の人間。一つ言葉を間違えれば私の首が飛ぶ可能性だってゼロじゃない。
「私は・・・・・・」
待てよ。だが大公がしがない一貴族である私にそんなことを聞くということは、大公も皇室に疑問を抱いているということなのでは・・・・・・。
「私は・・・・・・・・・・・・」
いや、冷静になれ私。そんな考えは結局私の希望であって、現実はいつだって非情なものだろう? 普通に考えれば、人はより近しい人間の味方をするものだ。
「私は・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しかし、私がツァールスコエ・セローに行く前に垣間見たあの聡明さ。そのような人物が今の皇室に疑問を持たないわけがない。
「わたし、は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ダメだ、私には何が正解で何が間違っているのか、まったく分からない。大公は敵か? 味方か?
・・・・・・。
クソッ! なぜ同じロシア人同士で腹の探り合いをせねばならないのだ! この大地に生き! 同じ国を背負った者同士! なぜ疑わねばならないのだ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
よし、腹は決まった。
「大公、私は生まれながらの貴族。皇帝陛下に忠誠を誓った身であります」
「いえ、ドミトリー大公こそ、我が駐屯部隊の指揮、ありがとうございました」
ツァールスコエ・セローの警護から戻り、久々に自分の勤務地の門をくぐった。たった二日なのに、やけに久しぶりに思う。あっちの艶やかな宮殿もいいが、やはり私はこの殺伐とした男だけの空間の方が仕事がやりやすい。
正直言うと早くここに帰って来たかった。皇帝の近くで警備するというのも息苦しいし、ラスプーチンとかいう明らかに私よりも劣っている人間に頭を下げるのも嫌だった。
しかしなにより、ドミトリー大公と一度しっかり話してみたかった。
大公は私が帰って来てからも一日だけうちの基地に居てくれるということだった。話すなら今日しかない。
「大公、少しお聞きしてもいいですか」
「ん、いいだろう。私も君に聞きたいことがある」
「あ、大公からどうぞ」
「ではお言葉に甘えて」
大公は数瞬宙を睨みつけ、私の机の前で左右を確認した。そして、神妙な面持ちで私に問いかけてきた。
「率直に問う。間近で見て、今の皇室をどう思った?」
今の皇室・・・・・・。国民の気持ちを分かっていない皇帝に、狂った霊能力を信じる皇后。どう考えてもまともだとは思えない。
しかしお世辞を言うのは簡単だ。なにより大公自身は皇室の人間。一つ言葉を間違えれば私の首が飛ぶ可能性だってゼロじゃない。
「私は・・・・・・」
待てよ。だが大公がしがない一貴族である私にそんなことを聞くということは、大公も皇室に疑問を抱いているということなのでは・・・・・・。
「私は・・・・・・・・・・・・」
いや、冷静になれ私。そんな考えは結局私の希望であって、現実はいつだって非情なものだろう? 普通に考えれば、人はより近しい人間の味方をするものだ。
「私は・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しかし、私がツァールスコエ・セローに行く前に垣間見たあの聡明さ。そのような人物が今の皇室に疑問を持たないわけがない。
「わたし、は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ダメだ、私には何が正解で何が間違っているのか、まったく分からない。大公は敵か? 味方か?
・・・・・・。
クソッ! なぜ同じロシア人同士で腹の探り合いをせねばならないのだ! この大地に生き! 同じ国を背負った者同士! なぜ疑わねばならないのだ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
よし、腹は決まった。
「大公、私は生まれながらの貴族。皇帝陛下に忠誠を誓った身であります」
0
あなたにおすすめの小説
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる
春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。
夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。
形のない愛は信じない。
でも、出来立ての肉は信じてしまう。
肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。
これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる