ただ君だけを

伊能こし餡

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この勇気くれた人

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  私はこの世界をもっと見てみたい。
  どんな景色が広がってるのか、自分の足で確かめてみたい。
  まずはシベリアの嵐、その次は東の島国。それから・・・・・・、今はまだ思いつかないけど、あの人、フェリックスさんと一緒ならきっと沢山の景色が見れるはず。
  世界を見渡し、自分の足で歩いてみたい。
  この狭い世界で生まれ育った私がそう思うようになったのは、あの人に外の世界を教えてもらったから。
  私に勇気をくれたのはあの人、私にトキメキをくれたのもあの人。
  もしかしてこの感情が恋、なの? もしそうだとしたら、これより嬉しい感情なんて私は知らない。今まで苦しいだけだった私の心に、あの人は救いとなる感情を教えてくれた。
  あの人とずっと一緒にいられれば、もっとステキな感情を知ることもできるかもしれない。
  私はあの人と一緒にいたい。ずっとずっと、一緒に生きていきたい。

  でも・・・・・・。

  どれだけ夢を見ても私は農民の娘、その事実は今更どうしようもない。そしてあの人は貴族の出の軍隊勤め。
  決して結ばれてはならない。
  例えあの人が私を受け入れてくれても、あの人の両親はそれを許さない。身分の違いとはそういうもの。残酷以外の何ものでもない。どうせ一緒になるのなら、私はあの人の両親に祝福されたい。
  でもそれは叶わぬ夢。大体、あの人と一緒になるだなんて、あの人の両親はおろか、私は弟たちからも祝福されない。
  だって弟たちは貴族を全員殺そうとしてる。貴族たちさえ居なくなれば、私たちの理想の国が作れると信じている。
  本当にそれで国が作れたとして、その先には何があるの? 私たちは隣の国も、なんなら自分の国の中のことだって、大したことは知りもしないのに。

  でも私は家族を失いたくはない。あの二人が父さんや母さんのように惨めに死なせたくない。

「はぁー、終わった終わった。姉貴、帰ろうぜ」

  一体、どうすればいいの・・・・・・?

「アブリフ、ムージャ、今日は先に帰ってておくれ。私はちょっと寄るところがある」

  私は、私の気持ちも、弟たちの気持ちも、どちらも大事にしたい。

「姉ちゃん、大丈夫? 疲れてるように見えるよ」
「大丈夫、少し税金を払ってくるだけさ、役所の人間も少しづつでいいからって言ってくれてる」
「そっか、あまり無理しないでね」

  弟たちにこんな嘘をついてまで・・・・・・私はどうしたいのだろう。
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