ただ君だけを

伊能こし餡

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焼け焦げた匂い

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  部下がいない日の仕事ははかどる。別にあいつが邪魔とかじゃないし、居たら居たで仕事は楽だ。あいつは仕事も早いしな。
  だが早すぎてついついお喋りしてしまうのが難点だ。私も、ついそれに受け答えしてしまう。そして私はそこまで仕事が早い方じゃないから、私個人の仕事はどんどん遅れてしまうのだ。

  今日は普段からの遅れを取り戻し、後ろめたいことを全てなくして両親を迎えよう。そして仕事が終わったら酒場に行って私の生活ぶりや、彼女を見てもらおう。

  グリーヂェの意向通り両親にはまだ紹介しない。だがそれでも、両親は彼女を気に入ってくれるはずだ。

「おはようフェリックス」
「ああ、おはよう」

  眠い目を擦り自分の机に向かう。また、知らない間に一通の封書が届いている。まあ・・・・・・まず間違いなく戦争関連の何かだろうな。

  息を大きく吸いながら封を切る。大方の予想がついてるとは言え、この手の封書を開く時はやはり緊張する。

「・・・・・・まあ、そうだよな」

  封書の内容は、ペルシャ戦線への火薬の補給要請だった。ついこの前まったく同じ内容の封書が届いていたはずだ。まるでデジャヴのように感じ、裏返す。

  ペルシャ戦線。血で血を洗う死の戦線、か。内地でのんびりやってる私にはどんなところか想像もつかないな。噂によるとペルシャ戦線への出動命令は死刑宣告と同等らしい。
  まあ、毎回のように大量の弾薬を送るのに、こんなにすぐに補給要請が届くくらいだ。できればその現状は想像したくない。

「! おい! どうした! 何があった⁉︎」

  ? 何やら部屋の外が騒が・・・・・・し・・・・・・。

「先輩・・・・・・すみません・・・・・・俺のせいで・・・・・・」

  部下が・・・・・・見えている部分だけでも数カ所、ひどい火傷を負っている・・・・・・。

  どういうことだ? いや、そういうことだろう。必死に、パンクしそうな頭を回転させる。

「俺のせいで・・・・・・先輩のご両親を・・・・・・死な・・・・・・せて・・・・・・・・・・・・」
「! おい!」

  嘘だろ・・・・・・嘘だよな・・・・・・?

  誰か、誰でも良い、嘘だと、言って、おくれ・・・・・・。
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