ただ君だけを

伊能こし餡

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ただ君だけを 完

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  もうすぐあれから一年が経つ。相も変わらず、私はここペルシャ戦線で生きている。どうやら私は、思ったよりもしぶといようだ。きっとグリーヂェが必死に生きていたのを間近で見ていたから、いつの間にか生きるのが上手くなっていたのかもしれない。

  この銃弾の雨が降り注ぐペルシャ戦線で、変わったことが一つあった。ドミトリー大公がここに流刑るけいされたのだ。

  あの皇帝の信任が厚く、聡明な大公が何故・・・・・・と戦線では様々な憶測が飛び交った。私は大公と面識があったので時間が経つとポツリ、ポツリと大公の方から話してくれた。

  大公は、ラスプーチンを暗殺したらしい。それも、私と同じ名を持つフェリックス・ユスポフという貴族と共犯で・・・・・・。あの時大公がニヤけた意味がようやく分かった。

  それが皇后の怒りを買い、ここに流刑されたらしい。

  そして、ラスプーチン暗殺こそが火種となって、今まさに民衆の革命運動はピークを迎えようとしている。

  ここペルシャ戦線でも、民衆たちの叫びが聞こえる・・・・・・。

  皇帝を倒せ!  皇帝を倒せ!
  皇帝を!  皇帝を倒せ!
  革命を!
  革命を!
  革命を! 革命を! 革命を!
  革命を!
  革命を! 革命を!
  革命を! 革命を!
  革命を! 革命を! 革命を!
  革命を!
  革命を!
  革命を!革命を!
  革命を!
  革命を! 革命を! 革命を! 革命を!
  革命を! 革命を!
  革命を!
  革命を! 革命を! 革命を! 革命を! 革命を! 革命を! 革命を! 革命を! 革命を! 革命を! 革命を!


◇◇


  グリーヂェ、これが君の見たかった景色なのかい? これが君たちの望んだロシアなのかい?

  分からない。・・・・・・私には分からないよ。

  でもたった一つだけ分かったことがあるんだ。

  あの時、君は私の両親を殺してなどいない、と。
  君が、私に恥じる行いをするはずがない、と。

  そう考えるのはあまりに楽天的かい? それでも、私はそう信じたい。そう信じ続けたい。
  もし私が天国に行って、君ともう一度会えるのなら、どうかあの時君を疑ったことを謝らせておくれ。そして、またあの歌を聞かせておくれ。君の弟のギターに合わせて、あの綺麗な歌声で、君のもう一人の弟がそれに合わせてダンスを踊るんだ。それを私や、私の両親が手拍子をしながら見聞きするんだ。

  天国ではきっと、生まれも育ちも関係なく、誰もが愛し合い、笑い合える。なんとなくそんな気がするんだ。

  そんな場所でもきっと、私はただ君だけを愛すると思うんだ。

  グリーヂェ、その時はまた、私の気持ちに応えてくれるかい?

~完~
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