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第171話 魔人計画

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ミゲルの地下施設で人体実験が行われていた。
研究室に入ると、魔族の研究者ミューズが現れる
賢者の表情を見ると、過去に因縁があると伺えた……


「ミューズ!
 魔人計画は破綻していた筈だが、
 まだ続けていたのか!」


「ロゼ……
 何年前の話をしている?
 我々はついに見つけたのだよ……
 コスモニウムの輝石を……」


「な、何だと……」


賢者の驚く様から途轍もない陰謀を、
魔族が計画していると察知する。
俺達は、その内容を理解できないでいた…… 


「あの輝石を見つけた……だと……」


「魔族の魔王、人族の精霊との契約、
 それを全て得た者こそが絶対的存在に至る!
 そして神を超える存在を我々が作りだすのだ」


ミューズが放った言葉が、研究室に響く。
まさにその計画は人類だけでなく、
世界を脅かすものだった……


「残念なのは魔人の器が見つからなくてな……
 光の勇者は、素材として上々だがな」


ミューズが嫌らしい笑みを浮かべて、
母上を見るが、俺はその間に立ち塞がり守る。


「だが、長年の研究で答えに辿り着いた……
 器が見つからなくても、作れば良い……
 何人もの命を合成して最強の戦士を」



獲物を狙う獣のような瞳で見つめながら、ミューズは言葉を発する。



「まさか!ミゲルの人達を!」


「ふふふ……
 実験体として役に立ってくれたよ」


「き、貴様!!」


母上はミューズを殲滅しようと、
光の剣を呼び出して構える。
しかし、その行動に全く動じず、
ミューズは言葉を返した。


「良いのかな?
 私を攻撃してしまって……」


「どういうことだ!」


「大事な仲間が、
 更に地獄を見ることになるぞ……」


「貴様!!」


ミューズが声を発した途端に、
複数のカプセルから被験者が現れた。
その身体は真っ黒に焦げたように全身が黒く、とても魔人化に成功したとは思えない容姿をしている。


「実験体の餌にしてやろう……
 お前達の仲間は、一番奥のカプセルだ!
 助けたければ、コイツらを倒して来い」


「ミューズ!」


言葉を残してミューズは、部屋の奥に去っていく。
そしてカプセルから被験者達が次々に集まり、襲いかかってきた。


「コイツらは……
 魔人化の被害者だ……」


「……っく!
 コイツら、異常に力が強いぞ!」


「人間と魔族の間には、子供が生まれない……
 魔人化は、魔法で無理矢理遺伝子を繋げる。
 この姿は、実験が失敗した成れの果てだ……」


自我も無く、まるで襲いかかる魔物のようだ……
しかし、よく見ると人間の面影がある。


「くそ!この人達はミゲルの住民か!」


倒したくても本気で殺すことを躊躇ってしまう。
罪もなく攫われた人々を斬り殺してしまうのを、
俺は心苦しく思っていた……


「後程、精霊化スキルを使う!
 今は気絶させろ!」


オリジンが発した言葉を信じて、
俺達は従うことにする。
襲いかかる被験者達を無力化させて、
俺達はミューズの後を追いかけた……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




襲いかかる被験者を気絶させて、奥へ進んでいく。
異常に力が強くなっていたが、
動きは単調で対処するのは難しくなかった……



そしてついに、ミューズの隣にいる人物が視界に入る。
その人物は、探し続けた同居人、サリーだ。


「サリー!」


「……」


サリーは、先ほどの被験者達とは違い、
今までの容姿と変わらない。
しかし母上と同様に操られているのか、
瞳から正気が失われていた……


しかし、その姿を見た賢者が、
サリーの異常に気付く。


「まさか!サリーに施したのか!
 魔人化の処置を!」


「流石はロゼだ……」


不気味な笑みを浮かべながら、
俺達に打ち明けてくる……
魔人化を施され、今も痛みに苦しんでいた。


涙を流しながら苦しむ姿を見て、
俺は、我慢が出来なくなってしまう……
もう既にサリーは、俺達にとって、
唯の同居人でなく大切な家族の一員だからだ……


「や、止めろ!」


母上は光の剣をミューズに放つが、
サリーの魔法障壁が防いでしまう。


賢者は、サリーの様子を見て、
驚きに目を見開いていた……
過去の実験で成功した事例がないからだ。


「ふふふ、ロゼよ……
 残念だが、コイツも失敗作だ……」


「き、貴様!」


光の剣で母上が攻撃しようとすると、
ミューズは、怪しく笑みを浮かべて、
サリーの首に注射器を向ける。


「馬鹿め!私を攻撃すると、
 こうなると言っただろう」


「止めろ!」


テレサのスキルを使うかもしれず、
子供の姿のまま戦っていた。
しかし、これ以上サリーに手を出されるのを我慢できない。


俺は姿を変えて覇王を発動する。
そしてこの手に聖剣を握りしめた。


「このまま黙って見ているなんて出来ない……」


「この波動……
 まさか!覇王だと!」


身体中に身体強化を施し、
全速力で駆け抜ける……


そしてミューズに向けて、
聖剣の一撃を繰り出した。
急所は外したが強力な一撃で弾き飛ばす。
更に追撃しようと走るが、
目の前に魔力障壁が現れた……


「サリー!!」


人体実験が繰り返されて、
サリーは操られてしまっている。
何をすれば良いのか分からず途方に暮れていると、ある人物が口を開く。
その言葉が未来を切り開く希望の光となった……
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