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第31話:偽りの愛、本物の想い
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真実とは、時に、あまりにも残酷だ。
私たちの目の前で映し出された幻影は、ゼノン様が信じてきた過去と、私への想いの、そのすべてが、ロシュフォール宰相によって仕組まれた、偽りであったことを、容赦なく暴き出した。
「……そうか」
ゼノン様が、ぽつりと、呟いた。
その声は、ひどく、乾いていた。
「すべて、奴の、筋書き通りだった、というわけか…」
彼は、自嘲するように、笑った。
そのアイスブルーの瞳から、光が消え、深い、深い、絶望の色が、広がっていく。
「俺の、お前への想いも。お前が、俺の、運命の相手だという、確信も。すべてが、奴に、与えられた、偽りの記憶だったとはな…」
彼は、自分のこめかみを、強く、押さえた。
「滑稽だ。俺は、ずっと、幻を、愛していたに過ぎない」
そして、彼は、私に向かって、深く、深く、頭を下げた。
「…すまなかった、イザベラ」
「ゼノン様…?」
「俺は、偽りの愛を振りかざし、お前を、追い詰めた。お前が、あれほど、苦しんでいたというのに、それにも気づかず、自分の独占欲を、満たしていただけだった。…俺に、お前を、愛する資格など、なかったんだ」
彼の、悲痛な、告白。
それは、彼のプライドを、すべて、かなぐり捨てた、魂の叫びだった。
見ているのが、辛い。
彼の、こんなに、弱々しい姿は、初めて見た。
でも。
違う。
「…顔を、上げてくださいまし、ゼノン様」
私は、彼の前に、跪くと、彼の手に、そっと、自分の手を、重ねた。
「あなたの、想いは、偽物などでは、ありませんでしたわ」
「…何だと?」
「きっかけは、宰相の、計画だったのかもしれません。でも、あなたが、わたくしを、想ってくださった、その十年という時間は、紛れもなく、本物でした」
そうだ。
彼の想いは、決して、偽りなどではない。
「わたくしに、毎日、花を贈ってくださったことも。わたくしが、好きだと言った、劇団のチケットを、取ってくださったことも。わたくしのために、ドレスを、たくさん、用意してくださったことも」
思い出すのは、勘違いから始まった、彼の、不器用な、愛情表現。
あの頃は、恐怖しか、感じなかった。
でも、今は、わかる。
「あれはすべて、あなたが、わたくしを、喜ばせたいと、必死に、考えて、行動してくださったことでしょう? 宰相に、命令されたわけでは、ないはずです」
「……それは…」
「あなたの想いは、あなた自身のものですわ。誰かに、与えられた、偽物なんかじゃ、決して、ありません」
私の言葉に、ゼノン様の瞳が、わずかに、揺れた。
「それに」と、私は続けた。
「むしろ、わたくし、感謝しておりますのよ」
「感謝…だと?」
「ええ。これで、ようやく、はっきりいたしましたわ。私たちの、本当の敵が、誰なのか。その目的が、何なのか」
そうだ。
もう、迷う必要はない。
疑う必要も、ない。
私たちの、進むべき道は、一つだ。
「わたくしたちは、負けません。宰相の、思い通りになんて、絶対に、させてやりませんわ」
私は、彼の瞳を、まっすぐに見つめて、宣言した。
「ですから、ゼノン様。いつまでも、そんなところで、うずくまっていないで、さっさと、立ちなさいな。わたくしたちには、やらなければならないことが、山ほど、ありますのよ?」
悪役令嬢、ここに、復活だ。
いつまでも、悲劇のヒロインぶっている、婚約者を、叱咤激励するのも、私の、役目だろう。
私の、その、いつもと変わらない、高飛車な物言いが、彼の、心に、火をつけたらしい。
ゼノン様の瞳に、再び、強い光が、宿り始めた。
絶望の色が、消え、代わりに、燃えるような、怒りの炎が、灯っていく。
「…ああ。そうだな」
彼は、私の手を、強く、握り返した。
「お前の、言う通りだ。いつまでも、こんなところで、感傷に浸っている場合ではない」
彼は、ゆっくりと、立ち上がった。
その姿は、もう、いつもの、自信に満ちた、氷の貴公子、そのものだった。
「ロシュフォール宰相…あの男だけは、絶対に、許さん。俺の、そして、俺たちの、十年という時間を、弄んだ罪。そのすべてを、償わせてやる」
絶望の底から、這い上がった、二人の魂。
偽りの過去を、乗り越えて、そこには、本物の、そして、より強固な、絆が、生まれていた。
「行くぞ、イザベラ」
「はい、ゼノン様」
私たちは、手を取り合って、再び、歩き出す。
この、出口のない牢獄から、脱出し、そして、すべての元凶に、鉄槌を下すために。
私たちの、本当の戦いは、ここから、始まるのだ。
私たちの目の前で映し出された幻影は、ゼノン様が信じてきた過去と、私への想いの、そのすべてが、ロシュフォール宰相によって仕組まれた、偽りであったことを、容赦なく暴き出した。
「……そうか」
ゼノン様が、ぽつりと、呟いた。
その声は、ひどく、乾いていた。
「すべて、奴の、筋書き通りだった、というわけか…」
彼は、自嘲するように、笑った。
そのアイスブルーの瞳から、光が消え、深い、深い、絶望の色が、広がっていく。
「俺の、お前への想いも。お前が、俺の、運命の相手だという、確信も。すべてが、奴に、与えられた、偽りの記憶だったとはな…」
彼は、自分のこめかみを、強く、押さえた。
「滑稽だ。俺は、ずっと、幻を、愛していたに過ぎない」
そして、彼は、私に向かって、深く、深く、頭を下げた。
「…すまなかった、イザベラ」
「ゼノン様…?」
「俺は、偽りの愛を振りかざし、お前を、追い詰めた。お前が、あれほど、苦しんでいたというのに、それにも気づかず、自分の独占欲を、満たしていただけだった。…俺に、お前を、愛する資格など、なかったんだ」
彼の、悲痛な、告白。
それは、彼のプライドを、すべて、かなぐり捨てた、魂の叫びだった。
見ているのが、辛い。
彼の、こんなに、弱々しい姿は、初めて見た。
でも。
違う。
「…顔を、上げてくださいまし、ゼノン様」
私は、彼の前に、跪くと、彼の手に、そっと、自分の手を、重ねた。
「あなたの、想いは、偽物などでは、ありませんでしたわ」
「…何だと?」
「きっかけは、宰相の、計画だったのかもしれません。でも、あなたが、わたくしを、想ってくださった、その十年という時間は、紛れもなく、本物でした」
そうだ。
彼の想いは、決して、偽りなどではない。
「わたくしに、毎日、花を贈ってくださったことも。わたくしが、好きだと言った、劇団のチケットを、取ってくださったことも。わたくしのために、ドレスを、たくさん、用意してくださったことも」
思い出すのは、勘違いから始まった、彼の、不器用な、愛情表現。
あの頃は、恐怖しか、感じなかった。
でも、今は、わかる。
「あれはすべて、あなたが、わたくしを、喜ばせたいと、必死に、考えて、行動してくださったことでしょう? 宰相に、命令されたわけでは、ないはずです」
「……それは…」
「あなたの想いは、あなた自身のものですわ。誰かに、与えられた、偽物なんかじゃ、決して、ありません」
私の言葉に、ゼノン様の瞳が、わずかに、揺れた。
「それに」と、私は続けた。
「むしろ、わたくし、感謝しておりますのよ」
「感謝…だと?」
「ええ。これで、ようやく、はっきりいたしましたわ。私たちの、本当の敵が、誰なのか。その目的が、何なのか」
そうだ。
もう、迷う必要はない。
疑う必要も、ない。
私たちの、進むべき道は、一つだ。
「わたくしたちは、負けません。宰相の、思い通りになんて、絶対に、させてやりませんわ」
私は、彼の瞳を、まっすぐに見つめて、宣言した。
「ですから、ゼノン様。いつまでも、そんなところで、うずくまっていないで、さっさと、立ちなさいな。わたくしたちには、やらなければならないことが、山ほど、ありますのよ?」
悪役令嬢、ここに、復活だ。
いつまでも、悲劇のヒロインぶっている、婚約者を、叱咤激励するのも、私の、役目だろう。
私の、その、いつもと変わらない、高飛車な物言いが、彼の、心に、火をつけたらしい。
ゼノン様の瞳に、再び、強い光が、宿り始めた。
絶望の色が、消え、代わりに、燃えるような、怒りの炎が、灯っていく。
「…ああ。そうだな」
彼は、私の手を、強く、握り返した。
「お前の、言う通りだ。いつまでも、こんなところで、感傷に浸っている場合ではない」
彼は、ゆっくりと、立ち上がった。
その姿は、もう、いつもの、自信に満ちた、氷の貴公子、そのものだった。
「ロシュフォール宰相…あの男だけは、絶対に、許さん。俺の、そして、俺たちの、十年という時間を、弄んだ罪。そのすべてを、償わせてやる」
絶望の底から、這い上がった、二人の魂。
偽りの過去を、乗り越えて、そこには、本物の、そして、より強固な、絆が、生まれていた。
「行くぞ、イザベラ」
「はい、ゼノン様」
私たちは、手を取り合って、再び、歩き出す。
この、出口のない牢獄から、脱出し、そして、すべての元凶に、鉄槌を下すために。
私たちの、本当の戦いは、ここから、始まるのだ。
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