【完結】【R18】溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜

鷹槻れん

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(14)その女性は誰ですか?

コロッケ亭

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***

 信武しのぶに朝食の支度したくをしてもらった日和美ひなみは、その流れで結局昼食用のお弁当を作り損ねてしまった。
 それで、行きがけにどこかでお昼ご飯を調達しなければいけないな……と思っていたのに、ぼんやりしていてそのまま職場にたどり着いてしまった。

(習慣って怖いっ)

 いつも何だかんだ言いながらお昼に食べるものは家でちゃっかり準備して持ってきていたから、行きしなに買うという感覚自体が抜け落ちていて。

 生理痛は鎮痛剤のお陰か大分緩和されているけれど、集中力は落ちているらしい。

 今日は昼休み、どこかでお弁当を買うなり食べに出るなりしなければいけなさそうだった。


***


 比較的緩やかに時間が流れた午前中。
 先輩たちは混んでいる時間帯ランチタイムは避けたいから、と言う理由で昼休憩は遅めが人気だ。

「先に行っておいでよ」

 それで必然的。新入りの日和美がみんなから口々に正午過ぎのお昼休憩を勧められて。
 日和美は十二時五分にお財布を手に外へ出た。

 薄手のスプリングコートを羽織って出てきたのはお腹を冷やさないためだけれど、それでも今日はちょっぴり風が冷たくて肌寒い。

 建物と建物の間を通り抜ける風がひんやり感じられるのは、恐らく太陽が雲間に隠れてしまっているからだろう。

 ふと見上げた空は、厚めの層積雲そうせきうんに覆われていて、太陽が顔を出すチャンスは万に一つもなさそうに思えた。

 そろそろ梅雨が来る。

 それまでの間ぐらいもっと晴れ間を見られればいいのになぁ~なんてぼんやり思いながら、通りを一本入った先の一角にある小さなお弁当屋さんを目指した日和美ひなみだ。
 お弁当屋さんと言っても、そこのお店はお弁当だけじゃなく、おにぎりも種類が豊富。しかもとってもリーズナブル。
 『コロッケ亭』という名の通りコロッケがメインのお弁当が目立つお店だけれど、おにぎりの具材は鮭、昆布、高菜、おかか、梅……と割とオーソドックス。
 日和美は今日、そこで鮭とおかかのおにぎりを買って、職場の休憩室で頬張ろうかなと思っている。
 ついでにばら売りの肉じゃがコロッケを一つ買っても良いかもしれない。

 ちょっぴり甘めの肉じゃがが入ったコロッケは、日和美のお気に入りだ。

(飲み物は自販機で温かいお茶とか買えばいいよね)

 お茶、と思い浮かべた途端、信武しのぶがなるべくカフェインは摂るな、と言っていたのを思い出して……。
 日和美は麦茶のホットあるかな?とぼんやり思った。
 確か麦茶はノンカフェインだったはずだ。
 よもやホットがなかったら愛用のマグカップに移して休憩室の電子レンジでチンをすればいいだろう。

 やはりお昼時とあって、ちょっぴり待たされたけれどお目当ての品々は無事ゲット出来た。

 ルンルン気分でおにぎりとコロッケの入ったビニール袋を振りながら歩いていたら、ふと通りに面したカフェが目に入る。

 店舗外へ出された立て看板に『喫茶まちかど』と書かれたその喫茶店は、落ち着いた雰囲気の昭和レトロな店舗だ。

 日和美ひなみ自身バタバタしていてまだ一度も入ったことはないのだけれど、実は学生時代からいつか行ってみたいなと思い続けている憧れのお店だったりする。
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