【完結】【R18】溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜

鷹槻れん

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(17)サイン会ハプニング

責任とってください

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 お互いに気持ちを打ち明けた日――。

 折角相思相愛だと分かったのに、絶賛生理中の日和美ひなみ信武しのぶががっくりと項垂うなだれたのは言うまでもない。

 だが、日和美の方は、すぐすぐ信武と肌を合わせなくてもいいと言う安心感でふんわりと心が緩んだ。

 幸い生理痛ももうないし、経血量だってピークは過ぎた。
 一番の心配事だった愁いも、まだ聞きたいことはいくつか残っているものの、一応晴れた。
 そうなれば慣れたもの。
 日常生活を送るのに支障はないわけで。

 睡眠不足と栄養不足だった身体は、何とか日中は気合で仕事をこなせたものの、帰宅すると同時に一気に色々求めてきて。

 夕飯後、お風呂に入ったら余りに気持ちよくて湯船に何度か沈みそうになってしまった。

 そんなこんなで風呂上り。

 タオルを頭に乗せて二、三度手を前後に動かしただけの髪からポタポタと水滴を落としながらふらふらと眠気と戦っていたら、信武が帰宅してきた。

「おい日和美。寝るならちゃんと髪乾かしてからにしろ。風邪ひいちまうぞ」

 荷物を置いて手洗いを済ませるなり「貴方はお母さんですか」と言うセリフを並べ立てる信武に、日和美はぽやんとした視線を投げかけた。

信武しにょぶしゃんのせぇれ寝不足らんれすよぅ? 責任しぇきにん取ってくらしゃい」

 恨み節も語尾がふわふわと浮ついて、呂律ろれつが回っていないから、全然迫力がない。

「そりゃあ悪かったな。そんなにお前が俺のこと大好きでヘロヘロになるくらい思い悩んでくれてるとは思わなかったんだ。許せ」

 ククッと楽し気に喉を鳴らして笑うと、信武が洗面所からドライヤーを手に戻って来る。

「ほら、責任取ってやるからとりあえず身体起こせ」

 日和美の肩に軽く触れると、リビングに置かれたローテーブルにしなだれかかった日和美ひなみのすぐ背後に陣取って。

 日和美がふらふらしながらもテーブルから身体を起こすと、大きな手で日和美のショートボブを柔らかな手つきでかき回しながらドライヤーを当ててやる。

 ゴーという熱風とともに、日和美の短い髪の毛はすぐに乾いてサラサラになった。

「オイ、乾いたぞ。布団……」

 ドライヤーをしている時から怪しかったけれど、日和美はますます眠気に勝てない様子で、信武しのぶが話しかけても目なんてちっとも開いていない。

 信武はそんな日和美を見て、彼女の背後でふっと口元に小さく笑みをたたえると、眠りかけている日和美の足をローテーブル下から引きずり出して抱き上げた。

 そのままつま先で器用に寝室との境のふすまを開けると、日和美をそっと布団に横たえてやる。

信武しにょぶしゃ、ありあとぉ……」

 恐らく「信武さん、有難う」と言ったのだろうが、最早ちゃんとした言葉にもなっていないのが、信武には可愛く見えて仕方がない。

 そもそも日和美がこんなにヘロヘロになってしまった原因が自分と萌風あの女への嫉妬心からだと思うと、ぐったりしている彼女には悪いが愉快でたまらないのだ。

 二度、三度日和美の頭をふわふわと撫でてから、薄っすらと開いたままの柔らかな唇に軽く触れるだけの口付けを落とすと、信武はグッと自分の欲望を押さえつけて立ち上がった。

 日和美はまだ生理中だ。
 抱くわけにはいかない――。
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