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あいつって誰?

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「あー、それ私も初めて向井さんのお顔見た瞬間から思ってました。何もしてないのに素地がいいの、ズルイなぁって」

 まるで援護射撃のように緒方さんがそう言って。

 私はめちゃくちゃ戸惑ってしまう。

「あ、あのっ。でも私、今まで彼氏とかできたことないですし……男性とお話したことすら……」

 話すことがあるとすれば事務的な会話のみ。
 あとは子供の頃によく男子から意地悪をされた記憶しかない。

 私だって一応女の子の端くれ。
 素敵な男性がいたらお付き合いしてみたいとも思うけれどご縁がないんだもの。
 初恋の人、のぶちゃんは私のことなんて妹ぐらいにしか思ってないだろうし。

 最近事務的なこと以外で話した異性といったら……もっぱらあの男!
 鳥飼とりかい奏芽かなめ!!
 彼にからかわれて迷惑しているぐらいしか思い浮かばないのよ、本当……。


「いやいやいや。それはないって向井さん! 貴女ほどの美人さんはそうそう居ないし……一緒にいたら大抵の男の子は貴女のこと意識しちゃうはずよ?」

 とか。絶対からかわれてる。

 あ。女子同士って結構あれ。
 褒め合いとかするものだから、きっとそれね。

 そもそも――。

「いつも一緒にシフトに入ってる谷本くんとか……絶対何とも思ってないと思いますし……私からしたらお2人の方がよっぽど女子力高くて一緒にいてドキドキします」

 初めましてをしてから2人に対して抱いたイメージを伝えたら、はぁーって2人して盛大な溜め息をつくの。

「自覚のない美人って罪よ?」
 向井さん、女友達も男友達も殆どできたことないでしょ?って河野こうのさんにビシッと指差されて、私は言葉につまった。

 だってその通りだったから。

「自分より綺麗で勝ち目ない女子には同性としてあまり近づきたくないもの。今は向井さん無自覚だから飾りっ気なくてその程度で済んでるけど……貴女に本気とか出されたら一緒にいる子、みんな引き立て役にされそうで嫌だなって思うもん。女ってそういうの、本能的に察知するものよ? で、男の子たちのほうはあれね。恐れ多くて声かけられないのよ、きっと。なんか向井さんって近付き難いオーラ出ちゃってるし。ねー? 緒方さん」
「はい、そう思います!」

 2人に「絶対そう!」って決めつけられて、私はタジタジだ。

「そんな貴女に臆することなく話しかけられる男がいたとしたら、私、逆に尊敬しちゃう!」
 河野こうのさんが言って、緒方さんが「分かるっ!」ってうなずいて。

 え、何それ何それ、ちょっと待って。
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