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■僕惚れ②『温泉へ行こう!』
ハプニング4
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幼い頃からことあるごとに私を守り、慈しんでくれた理人。
下手をすると、血を分けた家族以上に、彼は近い存在だったように思う。
一時、彼の私を想う気持ちが暴走しすぎて怖く思った時期もあったけれど……でも、正木くんに迫られた時に感じたような嫌悪感は、一度たりとも抱いたことがなかった。
「葵咲が魅力的なのは分かりますし、彼女に惹かれる気持ちも理解できます。でも――」
そこまで言うと、理人は正木くんに一歩近づいた。
「でも、何より腹立たしいのはキミが彼女を侮辱するような言葉を浴びせたことだ」
そこで私を腕に抱きしめると、理人は正木くんに高らかに宣言する。
「彼女が誰にでもキスを求めるような女性だと思ったんだとしたら大間違いだ。彼女がこういうことをされても嫌じゃないのは、僕だから、です。自分も許されるだなんて思い上がり、二度と抱かないでもらえますか?」
そこで彼に見切りをつけたように踵を返すと、理人は私の手を引いてそこから立ち去った。
私は、理人が私の気持ちを分かっていてくれたことが心の底から嬉しくて、彼に手を引かれながら泣いてしまいそうだった。
「理人、服……」
しばらく彼に手を引かれて歩いていた私は、気持ちが落ち着いてきたと同時にあることに気が付いてしまう。
理人は、浴衣姿のままだった――。
「目が覚めたらキミがいないんだ。着替えてる暇なんてないに決まってるだろ?」
よく見れば、顔は洗っているみたいだけれど、ほんの少し寝癖も残ったままで……。
いつもビシッとしているイメージの理人だけに、その姿は本当に私のことを心配してくれたんだ、と分かるもので――。
「ごめんなさい……」
ほんの少しの距離だから、一人でも大丈夫だと思ったの……と付け加えたら、理人に怖い顔をされた。
「葵咲、キミは自分が方向音痴なこと、もっと自覚したほうがいい。……それに――」
怒られても、その通りだから何も言えなくて。言い返せなくて俯いていたら、繋いだ手をギュッと握り締められた。
「……それに――、同級生の彼がキミのことを意識していたのは丸分かりだったし、そんな中一人で出歩くとか……どれだけ自分の魅力に無自覚なの」
少し非難めいた口調。
思えば、正木くんに出会ってからずっと、理人はざわついていた。
私は、そんな彼の真意に気付いて、もっと配慮すべきだったのだ。
「ごめんなさい……」
何度謝っても謝り足りない気がした。
しゅんとしてそう呟いたら、そんな私を彼がギュッと抱きしめて、
「でも……本当、間に合ってよかった……」
心底ホッとしたようにそう告げる。
その言葉に、私は胸の奥がじん……と熱くなるのを感じた。
「理人、助けに来てくれて、本当にありがとう……」
あの時、もしも彼が来てくれなかったらと思った途端、足がすくんでしまうぐらい怖くなった。
力ずくで押さえつけられなくても、身動きが取れなくなってしまうことがあるんだと、私は身をもって実感したから。
「もう、大丈夫だから……」
気が付くと小さく震えていた私を気遣って、理人が優しく頭を撫でてくれる。
そうしながら、耳元で、
「だから二度と、僕の傍を離れるなよ?」
――そう、言われた。
下手をすると、血を分けた家族以上に、彼は近い存在だったように思う。
一時、彼の私を想う気持ちが暴走しすぎて怖く思った時期もあったけれど……でも、正木くんに迫られた時に感じたような嫌悪感は、一度たりとも抱いたことがなかった。
「葵咲が魅力的なのは分かりますし、彼女に惹かれる気持ちも理解できます。でも――」
そこまで言うと、理人は正木くんに一歩近づいた。
「でも、何より腹立たしいのはキミが彼女を侮辱するような言葉を浴びせたことだ」
そこで私を腕に抱きしめると、理人は正木くんに高らかに宣言する。
「彼女が誰にでもキスを求めるような女性だと思ったんだとしたら大間違いだ。彼女がこういうことをされても嫌じゃないのは、僕だから、です。自分も許されるだなんて思い上がり、二度と抱かないでもらえますか?」
そこで彼に見切りをつけたように踵を返すと、理人は私の手を引いてそこから立ち去った。
私は、理人が私の気持ちを分かっていてくれたことが心の底から嬉しくて、彼に手を引かれながら泣いてしまいそうだった。
「理人、服……」
しばらく彼に手を引かれて歩いていた私は、気持ちが落ち着いてきたと同時にあることに気が付いてしまう。
理人は、浴衣姿のままだった――。
「目が覚めたらキミがいないんだ。着替えてる暇なんてないに決まってるだろ?」
よく見れば、顔は洗っているみたいだけれど、ほんの少し寝癖も残ったままで……。
いつもビシッとしているイメージの理人だけに、その姿は本当に私のことを心配してくれたんだ、と分かるもので――。
「ごめんなさい……」
ほんの少しの距離だから、一人でも大丈夫だと思ったの……と付け加えたら、理人に怖い顔をされた。
「葵咲、キミは自分が方向音痴なこと、もっと自覚したほうがいい。……それに――」
怒られても、その通りだから何も言えなくて。言い返せなくて俯いていたら、繋いだ手をギュッと握り締められた。
「……それに――、同級生の彼がキミのことを意識していたのは丸分かりだったし、そんな中一人で出歩くとか……どれだけ自分の魅力に無自覚なの」
少し非難めいた口調。
思えば、正木くんに出会ってからずっと、理人はざわついていた。
私は、そんな彼の真意に気付いて、もっと配慮すべきだったのだ。
「ごめんなさい……」
何度謝っても謝り足りない気がした。
しゅんとしてそう呟いたら、そんな私を彼がギュッと抱きしめて、
「でも……本当、間に合ってよかった……」
心底ホッとしたようにそう告げる。
その言葉に、私は胸の奥がじん……と熱くなるのを感じた。
「理人、助けに来てくれて、本当にありがとう……」
あの時、もしも彼が来てくれなかったらと思った途端、足がすくんでしまうぐらい怖くなった。
力ずくで押さえつけられなくても、身動きが取れなくなってしまうことがあるんだと、私は身をもって実感したから。
「もう、大丈夫だから……」
気が付くと小さく震えていた私を気遣って、理人が優しく頭を撫でてくれる。
そうしながら、耳元で、
「だから二度と、僕の傍を離れるなよ?」
――そう、言われた。
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