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■僕惚れ②『温泉へ行こう!』

約束1

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 朝食は部屋食にしてもらっていた。

 昨夜のようにお店に移動して食べることも出来たけれど、朝は二人でゆっくりしたいねと話して、予め部屋で取れるようにお願いしていたのだ。

 今朝のこともあったし、正直部屋にもれるのは有難かった。

 食事は七時半にお願いしてあったので、一旦部屋に戻って理人りひとの着替えなどを済ませることにする――。

 結局何だかんだで売店には行けずじまいだったけれど、お土産は新幹線に乗るまでに最寄りの道の駅に行こうということになった。

 理人が身支度みじたくを整えている間、私はスマホであることを検索して、そういう方法もあったのか、と目からうろこだった。
(チェックアウトまでに、ここに書いてあること、やってみなきゃ)

 そんなことを思いながら、窓の外をぼんやりと眺める。

 実際はお風呂からの景色が一番綺麗なのかもしれないけれど、座卓ざたくそばの窓からの景色も割と綺麗で。

 見るとはなしにぼんやりしていたら、支度したくを終えた理人がこちらに来る。


葵咲きさき、何を見てるの?」

 そう聞かれたけれど、窓外に向けた視線は、これと言って何を見ていたというわけではないので、ゆるゆると首を横に振る。
「ぼんやりしてただけだよ……」
 そう答えると、
「まだ、さっきの、ショックだったり……?」

 理人が背後から気遣うように私の頬に触れてきて。

 確かに思い出すと今でもゾクゾクとした悪寒おかんよみがえってくるけれど、理人が傍に居てくれることで、大分落ち着いたと思う。

「大丈夫」
 彼を安心させようと理人の方を向いてニコッと微笑むと、
「無理しなくていいよ」
 言われて優しく抱きしめられた。

「僕が……」
 ややしてぽつんと理人がつぶやく。
「――ん?」
「僕が、葵咲にこんな印をつけたから……彼を刺激してしまったんだよね。本当、ごめん」

 言って、私の首筋のあざに触れた。

「んっ」
 途端、ゾクゾクとした快感が身体を突き抜けて、思わず声が漏れる。

 確か、このあとは昨日夕食後にエレベーターで付けられたものだ。
 あの時、私が正木まさきくんの挑発を上手くかわすことが出来なかったから――。だから理人を不安にさせた。

「理人の……せいじゃないよ?」

 さっきのことを彼はとても気にしていて……ともすると私より気に病んでいて――。その原因になったのが自分の行動のせいだと反省している節がある。

 私はそんな理人が、正木くんが言うように自己顕示欲だけで私にこんなことをしたなんて思わない。

 何より、理人が、正木くんの言動を気にしてしょんぼりしてしまうくらい私を想ってくれているということが、嬉しくて堪らなかった。

 だから……。
 私はどんなに恥ずかしい思いをさせられても何とも思わないし、むしろ甘んじて受け入れたいとすら思ってしまう。

 そう、理人だから――。
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