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■僕惚れ③『家族が増えました』
葵咲、服脱いで?1
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いきなり理人に手首を掴まれて、葵咲は瞳を見開いて驚く。
「理人?」
先刻、逸樹に謝罪の言葉を投げかけられた時、葵咲は始終不機嫌そうだった彼が謝罪してきたことよりも、理人の目の前で謝られてしまったことの方にドキッとした。
その瞬間の理人の表情は、葵咲のほうからは死角になっていて窺い知ることはできなかったけれど、ほんの少し理人の肩がピクッと動いたのは見えた。そのことに一応に不安は覚えたのだ。
でもさすがにこんなにストレートにくるとは思わなくて。
葵咲の方へ近づいてきた時の第一声が、「セレの名前の由来、分かったよ」だったとき、正直杞憂だったかな?とホッとした。
でも、理人は多分葵咲のその反応を見逃さなかったのだ。
「葵咲、服脱いで?」
有無を言わせぬ調子で理人がじっと見つめてくるのを、葵咲はヘビに睨まれたカエルになったような気持ちで見返した。
リビングの箱の中に子猫がいると思うと、ここで服を脱いでしまうのはどうしても躊躇われて――。
それに子猫のためのグッズだってまだ揃えていない。
今、ここで理人の言う通りにしてしまえば、きっとそう言うことに発展してしまうのは容易に想像がついたし、そうなればホームセンターの営業時間に間に合わなくなってしまう。
理人からふと視線をそらして壁にかかった掛け時計を見ると、時刻は19時半を過ぎたところだった。
葵咲が送信した意味深なメールのおかげで、いつもより理人の帰宅が気持ち早かったとはいえ、近場のホームセンターは確か二十一時には閉店してしまう。
「あ、あのっ」
理人をじっと見つめながら、葵咲は一生懸命考える。
(どうすれば、現状を打開できるかな?)
「理人?」
先刻、逸樹に謝罪の言葉を投げかけられた時、葵咲は始終不機嫌そうだった彼が謝罪してきたことよりも、理人の目の前で謝られてしまったことの方にドキッとした。
その瞬間の理人の表情は、葵咲のほうからは死角になっていて窺い知ることはできなかったけれど、ほんの少し理人の肩がピクッと動いたのは見えた。そのことに一応に不安は覚えたのだ。
でもさすがにこんなにストレートにくるとは思わなくて。
葵咲の方へ近づいてきた時の第一声が、「セレの名前の由来、分かったよ」だったとき、正直杞憂だったかな?とホッとした。
でも、理人は多分葵咲のその反応を見逃さなかったのだ。
「葵咲、服脱いで?」
有無を言わせぬ調子で理人がじっと見つめてくるのを、葵咲はヘビに睨まれたカエルになったような気持ちで見返した。
リビングの箱の中に子猫がいると思うと、ここで服を脱いでしまうのはどうしても躊躇われて――。
それに子猫のためのグッズだってまだ揃えていない。
今、ここで理人の言う通りにしてしまえば、きっとそう言うことに発展してしまうのは容易に想像がついたし、そうなればホームセンターの営業時間に間に合わなくなってしまう。
理人からふと視線をそらして壁にかかった掛け時計を見ると、時刻は19時半を過ぎたところだった。
葵咲が送信した意味深なメールのおかげで、いつもより理人の帰宅が気持ち早かったとはいえ、近場のホームセンターは確か二十一時には閉店してしまう。
「あ、あのっ」
理人をじっと見つめながら、葵咲は一生懸命考える。
(どうすれば、現状を打開できるかな?)
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