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■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』

出立の日1

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「ねぇ葵咲きさき……やっぱり僕も……」

 朝から何度目になるだろうという理人りひとのセリフに、私は内心大きく溜め息を落とす。
 理人のこういうところ。
 すごく可愛くて愛しいと思う反面、少し面倒だなとも思うわけで。

「理人には仕事もあるでしょう? 三泊四日なんてあっという間よ?」

 空港ロビーで搭乗待ちをしながら、ソワソワと落ち着かない理人をなだめてはみるものの、私自身、たった三泊四日だし、と思えなくなりつつあった。
 こんな状態の理人を四日間も一人で置いておくとか……大丈夫かしら。
 そもそもこんな子犬みたいな目をされたら私も辛くなってしまう。

 私のすぐ横に座って、ギュッと手を握る理人が切なくなるぐらい愛しくて。
 ついにはどうして一緒に行こうって言ってあげなかったの、私……とか思い始めてしまう始末。
 理人は私を溺愛してくれているという自覚はあったけれど、何のことはない。私も大概彼に甘いのよね。

「ごめんね、理人。ちゃんとまめに連絡するし。なるべく早く帰るようにする! だから――」
 そこまで言って、私は何を言おうとしているんだろうと言葉を止めた。
「僕は離れてる間もずっと葵咲のことしか考えられないから……そんな不安そうな顔しないで?」
 言いかけて飲み込んだ言葉を見透かされたみたいでドキッとした。

 私、言いそうになったの。

 ――だから私のことだけ考えて待ってて、って。


 自分がどれだけ理人のことを大好きで、彼を独占したいって思っているのか思い知らされた気がして、私は自分が怖くなる。

 一緒にいるときは理人からの愛情が大きすぎて見過ごしがちだった気持ち。

 私、こんなに理人のことが好きで好きで堪らないんだ。

 繋いだ手を思わずギュッと強く握ってしまって、それに気づいた理人がそっと肩を抱いて自分の方へ引き寄せてくれた。

 きっと傍目に見たら、あのカップル、こんな公衆の面前でイチャイチャして、とか思われちゃうんだろうな。
 こんなこと、本当は人前ですることじゃないと頭では分かっているんだけれど……。出会いと別れが付き物の駅の構内や空港のロビーでなら……そういうのも大目に見てもらえるんじゃないかな、とかそんなことを思ってしまって。

「理人……お願い。ギュッと抱きしめて……」

 小さくつぶやくようにそうおねだりをして、私は窺うように隣に座る理人を見遣った。
 理人は一瞬驚いたように瞳を見開いてから、肩に回した手をグッと引き寄せて私を腕の中に包み込んでくれる。

 大好きな理人の匂いを胸一杯吸い込みながら、三泊四日、頑張ろうって思った。
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