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■僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』

今すぐ君のもとへ2

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***

 翌朝、僕はいつもより少し早めに大学図書館しょくばへ出向いた。
 昨夜は前半グダグダな精神状態で飲んだわりに、今朝、二日酔いなどになることなく快調だったのは、葵咲きさきちゃんに会えるという気持ちのお陰かもしれない。

 職場に着くとすぐ、僕は数日間館長である自分が不在になっても困らないよう諸々の手配を終えた。不在の間の学生バイトたちにも、図書館業務が滞ることがないよう、各々個別に連絡して指示を出しておいた。

 そうしておいて、ずっと使っていなかった有給休暇を取得して、僕は颯爽と葵咲ちゃんのもとへ旅立ったんだ。
 少しでも早く葵咲ちゃんに会いたかったから、新幹線よりも圧倒的に時短が可能な飛行機を使うことにして。

 夜のうちに、予めネットでカーナビ付きのレンタカーも予約しておいたので、あちらに着いたら自力で葵咲ちゃんを迎えに行けそうだ。
 レンタカー自体は空港そばですぐに借りられるみたいで申し分なかった。ホント何でもネットで手配できてしまう。便利な世の中だ。

 連休中と言うわけではなかったので、宿も難なくスムーズに取れた。
 葵咲ちゃんの滞在先がどの辺りなのかは分からないけれど、まぁ車があればなんとでもなるだろう。

 僕は飛行機の中での一時間半余り、葵咲ちゃんに会える嬉しさでずっとソワソワしっぱなしだった。

 本当は昼前に出発する便に乗りたかったんだけど、図書館でのあれこれを考えると厳しそうだったので、手配したのは17時半の便で。

 あちらへ着くのは19時過ぎになる。

『空港に19時過ぎに着きます。レンタカーを手配したので大体の場所を教えてもらえたら迎えに行けるよ?』

 搭乗前にそう連絡メッセをした僕に、葵咲きさきちゃんから『じゃあ夕飯は一緒に食べられるね。そう伝えておくね』って返信があって。
 この返信からすると、夕飯お預けで僕のことを待っていてくれるってことだよね。
(葵咲ちゃん、お腹すかないかな)
 彼女と食事が摂れるのは大歓迎なんだけど……何だかんだしていたら食べられるのは20時とか過ぎそうな気がする。僕は正直、彼女がひもじい思いをするのは耐えられないんだよね。

 それに――。
 みんなって誰だろう?
 お世話になっているお宅の皆さんって意味だろうか。
 まぁ確かに本来ならあちらに滞在中はずっと友人宅――ご実家だと聞いている――にお世話になるはずだったんだから、それは大事だよね。
 と思いつつ……何となく引っかかるものを感じるのは僕の勘ぐりすぎだろうか。

 葵咲ちゃん、実はメールになると結構情報を端折る癖があるんだ。
 というより、もしかしたら僕の性格を知っていて……敢えて何パターンかに取れる書き方をしているのかもしれない。

 大概僕の杞憂が多くて……深読みしすぎて空回りって場合がほとんどなんだけど、たまに油断した頃に爆弾を投下されると言うか。

 さて、この“みんなにも”はどっちかな?

 飛行機のシートに深く身体を沈めて、目を閉じると、僕は一人悶々と考えた。

 ま、行けば分かるか。
 そう思いはするのだけれど――。
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